教師 宮沢賢治のしごと (小学館文庫 は 16-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094063974

作品紹介・あらすじ

教師・宮沢賢治の感動の授業を再現!

月の夜、そば畑の花があまりに美しいので、一人でそこで泳いでしまう先生でした。
いつも服やズボンのポケットの中を、何かしらない宝物でいっぱいにしている先生でした。
私が、この今の人生を全部投げ出してでも、生徒になって習いたかった先生でした。(略)
その先生の名は花巻農学校教諭宮沢賢治。この世で一番美しい、あの物語「銀河鉄道の夜」を書いた作者です。(本文より)

大正10年から15年まで、宮沢賢治は故郷・花巻の農学校で教鞭をとった。
公式だけでは絶対に解けない代数の問題。
生徒たちを二班に分けて競わせた英語のスペリング競争。
土壌学の授業では、地球の成り立ちをまるで詩のようにうたいあげ、肥料学では、一枚の細胞絵図から生命の記憶を説き起こす。
そして、まだ生まれたばかりの『風の又三郎』や『春と修羅』の作品群を生徒たちに朗読して聞かせたという国語の授業――。

教え子たちの心に忘れがたく刻まれた幻の授業がよみがえります!

感想・レビュー・書評

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  • 現地現物で、知識でなく叡智を獲得してもらえる授業

  • 教え子たちの話は面白かった。あとは作者の思いを賢治の言葉から引用して補強している感じ。なんとなく古臭さを感じたら35年も前の本だった。

  • 札幌新陽高校 校長日誌 5月16日(火)
    【教師 宮沢賢治のしごと】畠山博著、小学館、1992年

    「教員としての宮沢賢治って、すっごいですよ。高校卒業して50年後に元生徒がどんな授業を受けたか再現できるんです。どんなふうにすごい授業をしたかは、ぜひ、この本を読んでみてね。」

    今読んでいる本があまりにも素晴らしかったので、今朝の管理職会議で参加している15名ほどの先生たちに紹介した。

    宮沢賢治は大学卒業後、稗貫郡立稗貫農学校(その後、岩手県立花巻農学校)で5年間教師をしている。生徒数は40〜50名。教員は校長と賢治含めて4名の高校。
    担当は英語、代数、化学、気象、土壌、肥料だが、ときには国語も教えている。そして教え子たちはその殆どの授業を50年後に取材に来た著者に喜々として語っているのだ。

    「守るべき3つのルール」を一番最初の授業で話したこと
    ・先生の話を一生懸命聞いてくれ
    ・教科書はひらかなくていい
    ・頭で覚えるのではなく、身体全体で覚えること。そのかわり大事なことは身体に染み込むまで何回でも教えるから。

    数学は応用中心。まず応用、それから公式。「速く簡単に覚えられるということでは、宮沢先生の教え方は抜群でした。」

    英語のスペリングゲーム。

    フィールドワークをしながら土壌学。まるで詩を聴いているような地球の成り立ちの説明と、そこから、この学問の本質を「だって、土壌の性質によって、そこにやる肥料をかえてやらなければならないからさ」と「農家の倅だから学問なんていらない」と言われてきた生徒たちに学ぶことが生きることにつながっていることを説く。

    あぁ、こんな先生がいたら、一緒に働きたいなぁ。
    まさに、一人探究コースだなぁ、とおもって感動しながら読み進める。

    すると、ふとデジャブ(既視感)を感じた。

    これは、まるで祖父のようではないのか。。。

    破天荒な商業高校の教員で学校づくりに邁進していた祖父。
    でも、昨年、出会った80代の元生徒たちは同じような話を喜々として延々としていた。

    祖父もまた、生徒たちと公園に行って寝転んで授業をしたり、山に登ったり、自宅を下宿にしてそこから生徒を学校に連れて行ったり、すすきので出会うと怒らずにお小遣いを渡したりと、なんだかそういう逸話ばかりだったのだ。

    著者は後記で以下のように綴る。
    ーー
    学校の教師という仕事は、それと本当に誠実に取り組んだら、音楽や絵を描くことよりも、もっと素晴らしい芸術行為なのだと、私は信じている。

    ある意味でそれは、神のごとくにして、相手の魂の琴線を調律し、かき鳴らすことができるのだから。

    がしかし、そういう教師はめったにいない。いづらくさせる諸要素が、現代には多すぎるのだ。

    教育の理念も、方法も、システムも、今や極限近いまでに管理され、巷にはただ無気力、無感動、無個性な教師が溢れている。

    これでいいわけがないではないかという熱い思いは胸の奥にくすぶらせながら、みんな息を詰めている。

    私が語りかけたいのは、そんな人びとなのだ。
    ーー

    宮沢賢治は、少し前歯が出ているので生徒から「アルパカ」と呼ばれていたそうだ。

    「荒井先生のことは、俺達はみんなカバって呼んでたんだよ」と元級長が言っていたことを思い出した。

    僕はこの人たちの孫なのだ。

    #優読書

  • 教育学者のウィリアム・ウォードいわく「最高の教師は子どもの心に火をつける」。ならば賢治はまさしく最高の教師であろう。教え子が再現する授業の様子が羨ましい。自分をその世界に置いてもう一度学び直したい衝動にかられる。望郷の念にも似た思いを抱けるから不思議だ。

  • ずっとなぜか宮沢賢治の文章のかけらに救われてきた。
    芸術と農業を教わることができたなら、 なんて魅力的な日々があったんじゃないかと、ワクワクする。無理だけど。

  • 宮沢賢治の教師時代の話というので、興味深く手に取ったのだけど、ちょっと物足りなかったかな。
    ただ今でもその教えというか、感性が生き続けているというのが感動的。

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