- Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094071528
作品紹介・あらすじ
小さな病院は命がけでコロナに立ち向った。 『神様のカルテ』著者、最新作!感染症指定医療機関でコロナ禍の最前線に立ち続ける現役医師が自らの経験を克明に綴った記録小説!「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」――本文より 【編集担当からのおすすめ情報】 80以上のメディアで絶賛された夏川草介氏の最新作、文庫化!一番の敵はウィルスではなく人の心の中にある。--谷原章介氏(俳優)人間が、利己的遺伝子の乗り物ではなく、利他的共存の中でしか生きられない生物であることを改めて知らしめてくれた、優れて現代的な物語。--福岡伸一氏(生物学者)最前線でコロナと戦う医療従事者たちの真実の姿にふれ、己の無知と無関心を恥じた。私たちはこの記憶を、忘れてはならない。--宇垣美里氏(フリーアナウンサー)
感想・レビュー・書評
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本書は、小説の形式を取っていますが、現役の内科医である著者が実際に目にし、経験した事実に基づいたノンフィクションの側面を持っています。
コロナ国内初感染から3年目に入り、今でこそワクチンや治療等のシステムが構築されてきていますが、本書には、感染拡大第3波(2021.1〜)の1ヶ月の濃密な記録があります。
新型コロナウイルスに翻弄される医師・看護師たちの、焦燥・不安・奮闘と疲弊…、臨床現場が如何に過酷だったのかが伝わってきます。正解は分からないけれども、最善の対応策を講じようとする医療従事者の皆さんには、敬意と感謝しかありません。
その裏で、人間の愚かな一面にも改めて考えさせられます。ウイルスによる病気そのものである「生物学的感染症」はやむを得ないにせよ、不安や恐怖を引き起こす「心理的感染症」、差別・偏見による誹謗中傷が引き起こす「社会的感染症」も副次的に恐ろしいと心底思い知らされます。
それでも、悲惨と絶望から得た教訓や改善策が、次の困難への希望につながるのだなと教えられた気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文庫本で再読。
『レッドゾーン』が続編であるが、こちらが1年ほどあとの話になる。
その時々の感染症の波の中で起こる医療機関の問題や、人の考え。現場と外の緊張感の温度差。
あとがきからも、作者の葛藤などがうかがうことができるが、いつも前向きな気持ちにさせてくれる作者で、好きです。 -
筆者は長野県の現役医師。日本でも最初期からコロナ診療に関わっているひとりであろう。その戦いはダイヤモンド・プリンセス号の感染者受け入れから始まっている。という事は、正体不明であったコロナに徒手空拳で戦いに挑んでいった一人でもある。
そんなコロナとの戦いの最前線にいた現役医師による医療小説。
描かれているのは2021年1月3日からの約1か月間。舞台の信濃山病院決して大きくはないが、長野県の地方医療を支える医療機関である。そして当時としては珍しくコロナ患者を受け入れていた。
2021年1月というのはコロナによる全国での1日の死者数が初めて100人を超えた頃。欧米と比べ、何となくやり過ごしてきた感があった日本を第3波が直撃していた。ダイヤモンド・プリンセス号のパンデミックからは約1年。ワクチンはまだ完成していない。
文中には悲惨な描写が延々と並ぶ。しかし、悲壮感は(ないと言ったら嘘になるけど)あまり強くない。
筆者の医師としての矜持と静かな決意に、『自分ももう少し(出来ることを)頑張ろう』と思わせてくれる背中を押してくれる一冊です。将来を考え始める中学生に読ませたいな。 -
現役の医師である著者が、コロナ渦で経験した感染症指定医療機関の実態をまとめた記録小説。
コロナは、それまでの我々の常識や生活スタイルまで変えてしまった。
著者は作中人物に、「コロナは、肺を壊すだけではなくて、心も壊すのでしょう」と言わせるが、著者の実体験から発せられた言葉だろう。
さらに、「コロナ診療における最大の敵は、もはやウイルスではないのかもしれません。敢えて厳しい言い方をすれば、行政や周辺医療機関の、無知と無関心でしょう」とも。
あれほど猛威を振るったコロナも5類相当となり、日常生活を取り戻したかのような作今。しかし、すでに9波に入ったとの専門家の意見もあり、まだまだ気を許せない状況であることに変わりはない。
書中の人物が強い語調で語る「手洗い、消毒、マスクだ。わかりきったことだが、絶対に気を緩めるな。世の中の緩んだ空気と長期戦の疲弊感を思えば、いつ何が起きてもおかしくない」という言葉を、胸に留めておかねばならないだろう。 -
夏川草介さんの作品は、神様のカルテ、始まりの木と大好きですが。
この作品は、作者が現役の臨床医としてコロナに翻弄されつつも周囲のスタッフと立ち向かっていく、日々の悩み、苦しみ、悲しみ、虚しさ、向こうに見える小さな灯りを信じて歩む姿が生々しく書かれていました。
矛盾を抱えつつ、必死で目の前の患者に向き合うコロナ禍の臨床現場の実態を感じました。 -
現役の医師が書く小説なので、真実味がある。
コロナパンデミックを医者という目線から見ることができて、大変面白い。
それにためになる。
物語も面白い。
続編も出て欲しい、と思ったらもうすぐ出るらしい。読む。 -
壮絶。その一言に尽きる。
2022年も6月になり、コロナは今だ危険な病であるが、2020年から2021年にかけての頃の様な徒手空拳で戦わなければならない病ではなくなってきている。かてて加えて、ワクチン接種の効果は大きいだろう。これにより、感染者の発生そのものが大きく抑えられ(とはいえ、感染力の大きいオミクロン株の感染が拡大したが)、重症者の発生割合も下がり、かつての様に世の中は騒がなくなってきている。
まだ感染者が少なくないが、世の中が2020年の様な殺伐とした雰囲気でなくなってきたのは、ひとえに、コロナと闘った医師・看護師、ワクチン開発に挑んだ科学者、それらの人々の努力と献身のたまものである。感謝に尽きない。
本書は、治療薬候補は出てきたが、ワクチンがまだ広がる前の頃の1地方病院のコロナとの壮絶な闘いを描いた作品である。小説なのでもちろんフィクションではあるが、実際には著者の経験に基づいて描かれている。
本書を読んでいて、最後の方になり、なぜだか不意に泣けてきた。そんな静かに心に訴えかける書である。 -
神様のカルテと重なる印象が多いが、ノンフィクションのように訴えてくるものがあった。まだコロナは完全に終わってはいないが、医療現場では正解ではないかもしれないが最善の道がとられていたのであろう。現場で働く人への感謝を改めて感じた。
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「自分だけが辛いと思えば、人を攻撃するようになる。自分だけが辛いのではないと思えば、踏みとどまる力が生まれる」
この言葉はコロナに限らず生きていく上で大切なことだなと思いました。
怒り任せに人を責めたくなる時もあるけど、そんな時はこの言葉を思い出そうと思います。
そして、今も(もちろん昔も)尽力していただいてる医療関係者の方に感謝します。 -
2019年の年末から始まった少しずつ感染拡大してきたコロナウイルス、これまでの出来事がこの本を読んでる中で思い出した。
最前線で戦ってる医療関係者に心より感謝したい。