千歳くんはラムネ瓶のなか (3) (ガガガ文庫 ひ 5-3)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094518412

作品紹介・あらすじ

「君」にさよならを。

6月の進路相談会で顔を合わせて以来、俺と明日姉は学校でも会うようになった。

まるでデートのように出かけることも増え、俺は嬉しい反面……どこか切なさにも似た感情を抱えていた。
それがひどく身勝手なものだということも理解しながら。


明日姉は、東京にいく。物語を「編む」人になるために。
俺は、笑顔でこの人を送り出せるだろうか――。

大人気“リア充側”青春ラブコメ、第3幕。
遠い夏の日。君とまた会えますように。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公の朔が憧れている明日姉が深掘りされる巻でした。どこのシーンか忘れましたが「幻想の押し付けと身勝手な幻滅」みたいな表現があって、誰しもが感じたことのあるものを的確に描写してあって、改めて心情表現が分かりやすくていい小説だと思いました。

  • とても良かったです。若い世代に人気な理由がわかりました。作者の出身地である、作品の舞台「福井県」の描写はディテールまで細やかに描かれており、現地をつい訪ねてみたくなる(名物を食べてみたくなる)良さがあります。
    特に良かったシーンは、先生との交流のところ、三者面談のところ、東京に向かうところ、編集者のところ。自分が学生だった頃を思い出すということもありますが、「地方から上京する」ということが彼らにとってどんな意味があるのか、上京経験のない首都圏出身者の私でもとても身につまされる気持ちになりました。
    編集者のシーンなどは作者の方のご経験も踏まえられてのことか、とてもリアルに描写されている気がして、読み応えがありました。
    1巻からはじまって謎だった伏線のいくつかが回収されて、なんとなくこの3巻で一区切りという気がしました。まだ描かれていないヒロインたちや、主人公のストーリーもありそうなので続刊未読なので、楽しみにしたいと思います。

  • 【電子書籍】名作。朔と明日風、二人による二人のための、別離とリスタートの物語でした。こんなにも近くに居るのに『時間』という決定的な距離がある二人。彼らが東京で夢みた未来の姿はきっと叶わない。あのシーンの切なさには、本当に心が震えました。夢や妥協と現実の間に身を置いて、ただひたすらに憧れという『月』に手を伸ばし続けることの何と素敵なことか。巻を重ねる毎に深みが増してくる作品ですね。次巻も楽しみです。

  • 西野明日風
    特別短編 王様とバースデー

  • それを私たちは、ヒーローと呼ぶ。

    とてもかっこいいセリフ!朔もリア充と言われながらもかなり苦労した過去があるというのも好感が持てる

  • 夢をどう叶えるのか? どうやれば夢を叶えていくのか?
    そもそも、夢って叶えなければいけないのか?
    叶えたいと思う夢に出会えることはステキなことだと思います。
    その道に進み始めようとすることは、
    今まで進んでいる道とは分かれることに、他なりません。
    夢を目指す生き方。夢に縛られた生き方。
    OBのいる大学に入って、OBのいるサークルに入って、
    鉄板と言われる方法を選んだとしても、
    自分が選ばれるのかはわからない、自分は選ぶのではなく選ばれる側なのだから。
    その仕事がいつまでもあるとは限らない。
    企業の寿命は今それほど長くないし、
    書籍や雑誌の寿命も企業よりも長くない。
    誰もが自由に書いて表現できる時代になるときの編集者の役割って?
    それが見えているからこそ、公務員を進める親なんでしょうね。
    でも安心できる道が、幸せなのかはわかりません。
    夢を叶えることが楽しいことなのかもわかりません。
    でも挑みたいと思うことが、進んでいこうと行動することはステキです。
    いいひとでありたいと、自分が望み相手が望む自分に近づいていく。
    自分だけでは何もできないこともありますが、
    自分の力では足りないものを、挑みたいと思わせてくれる力をくれる人。
    人はそんな大切な人に出会えていたんですね。

    来年の自分は、今の自分と同じ人なのでしょうが、
    全く別な自分になっているとも言えるのかも知れません。
    今の友達と後輩達と繋がり続けていけるのでしょうか?
    時々思い出したように、思い出に浸ったりすることもあるのかも知れませんが。
    新しい生活はやってきます。
    来年はわからなくても、10年後は?
    もう一度同じような時間がやってきてくれるのでしょうか。
    きっとないことはわかっているのだけど、
    あの旅のことは、
    いくつになっても忘れない。
    あの時の冒険を今でも覚えているように。

  • 青春ラブコメラノベは、ヒロインがかわいいことよりも、主人公がカッコいいことが面白さの秘訣、を地でいく作品。また、今回は「進路」というテーマもあって、登場人物に一人も嫌な人間がいなかったのも読んでいて清々しかった。若さゆえの青さ、いや、「熱意」が人、そして未来を動かすんだな、と気持ちの良い読後感になった。

  • これまでチーム朔に絡むことは少ないながらに、それでいて朔が強い憧れを持つ謎の女性として君臨してきた西野明日風。彼女がメインとなると共に西野明日風という人間、そして千歳朔の根源に迫る内容となっているね
    正直、明日風の内面について触れるのはもっと終盤の大一番となるエピソードになるだろうと勝手に予測していただけにこの段階で彼女に関するエピソードをやりきるのは意外な構成だったかな


    朔は深く沈んでいた頃に心を救って貰った経験から他の女性陣への対応とは大きく違うくらいの触れ合い方を明日風に求めてきた。それはどこか彼女を幻想の枠に押し込めるようなものでも有ったわけだけど、この巻においては明日風に訪れた問題を解決する為に敢えて彼女を身近な女の子と同じように接する必要に迫られているね
    それは朔に西野明日風がどういう人間か改めて捉え直す機会になると共に明日風が普通の女の子として朔と接する機会となるわけだね

    そうした視点で捉えるとこの巻において逃避行か駆け落ちの如く福井から東京に出た二人の様子はかなり違って見えるのかも知れない
    表面的には夢の先取りもしくは東京がどういう場所か確かめるための小旅行。けれど、内面的には遠くに有る憧れに近づく工程でも有る。
    福井では判らなかった東京の有り様、そして編集者として生きていくとはどういうことか。それを東京という場所は明日風と朔にこれでもかと教え込む
    また、この憧れに近付くというのは朔と明日風の距離感についても言えること。東京ではポンコツになってしまう明日風とか、じゃがいもの食べ方を気にしてしまう明日風とか
    一方で朔が明日風に近付く展開だけでなく、明日風が朔に近付く展開が有るのも良いね
    これらはきっと河原で話し合っていた頃には見えなかったもの

    この東京への逃避行はけれど、明日風の夢を決定づける旅程とはならないのは印象的
    本当の意味で二人が近くまで行かなければ確かめられなかったものは東京ではなく、童心を過ごした町にこそあったというのは面白い
    東京より近いが何度も行く場所ではなく。けれど、あの町に行かなければ決定的に近付くことはなかった朔と明日風の距離
    ある意味スタート地点の確認であり、それを確かめられたからこそ、明日風は明日に向かって踏み出せるようになる
    同時にそれが朔との離別を意味してしまうのはどうにも寂しいけれど…

    幼い憧れから始まった二人の関係が、改めて月を見上げるかのように憧れの関係として終着する展開は本作独特の青春らしさに溢れているね

  • 泣いたー! 泣かされたー!
    もうね、すごいよ。

    シリーズ3冊目は明日姉回。
    千歳が唯一弱音を吐ける憧れの先輩。
    その先輩との初デートとか東京行きとか、なんとも甘酸っぱくて胸キュンで愉しかった。
    同時にそれらが二度とはない事だと思い知らされるたびにどうしようもなく切なくなってきた。

    好きな女の子が困っているなら助けるだけだ! という王道を、しかもいつもの千歳らしく自分が助けるのではなくその人自身に勇気をあげる形で実現してしまうのはマジかっこいい。
    二人の子供の時のエピソードとか反則だろう!

    互いが互いにあこがれて、その人の隣で恥じないようになりたい。
    それはとても素敵で尊い想い。
    互いが互いを照らす月なのだ。

    明日姉はいいね。
    一巻で最初に登場した時から、ああこの人好きだなあと思っていたけどほんとステキだ。
    そしてラストの明日姉の涙にこっちも号泣です。

    しかしねえ、これを読んでしまうと千歳がこれから他の誰かを好きになる未来が予想できないんだけど。
    みんな大変だあ^^ 

    それにしてもほんとに良いシリーズだ。

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著者プロフィール

裕夢(ひろむ)
福井県出身の作家。『ラムネの瓶に沈んだビー玉の月』で第13回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞。受賞作を改題したデビュー作、『千歳くんはラムネ瓶のなか』を2019年6月18日に刊行。

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