新編日本古典文学全集 (28) 夜の寝覚

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (621ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784096580288

作品紹介・あらすじ

夫や肉親との軋轢に思い悩む女主人公の姿を描く、平安朝文学の傑作。

「夜の寝覚」の伝本は、現在、完全な形では存在せず、すべて中間と末尾に大きな欠落部分を持っている。そのため我々はこの作品の半分以下しか読むことができず、それが多くの読者を得ずに、作品の知名度を低くしている。しかし実際には、作者(菅原孝標の娘説が有力)の、主人公における女の業の追及と克明な心理描写によって、平安後期の物語の傑作とされ、専門家の評価は高い。 姉の婚約者・中納言と宿命的な関係となり、懐妊する女主人公・中の君は、姉と反目し合い苦悩するが、その後結婚した老関白とは死別し、遺児を守る未亡人となり、現実に目覚めて強い女に成長する。しかし中の君に執拗に言い寄る中納言、また帝の積極的な横恋慕、さらに周囲の女性たちの嫉妬も加わり、日夜煩悶する。そして、中の君の生霊が中納言の妻を苦しめる事件も起り、苦悩の末に出家を志すが、それも子ゆえに果たされない。恋愛の苦しみ、女性の苦しみ、母の苦しみ、そして男女を超えた人間の苦しみと、書名のとおり、寝覚めては苦悩に陥る中の君の様子が綿々と描かれる。欠落部分の内容も様々に推測されて、興味をかきたてる異色の作品である。 本作品研究の第一人者による克明で平易な注釈と、こなれた現代語訳が備わっていて、古典文を親しみやすいものにしている。

感想・レビュー・書評

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    https://japanknowledge-com.ezproxy.kyoritsu-wu.ac.jp:2443/lib/display/?lid=80110V00280011

  • 中間と末尾が欠損している、この物語。ただひたすらに女性主人公の心理を追及していく、平安時代の心理小説。途中、なんでもっと気楽な生き方をしないのか?もっとうまく立ち回れないのか…と思ったが。女性はただ流されていくことしか出来なかったあの時代に、自分の生き方を貫こうとした「寝覚の君」。それを主人公にした、ということ自体がすごいことなんだ。
    巻末解説の「無名草子」(鎌倉時代の評論)の「寝覚」に対する総評が見事である。それにしても、欠損部分が読みたかったなあ。どうしようもないことだけど…

    なお、この古典文学全集は、上段に解説、中段に本文、下段に現代語訳、と三段に分かれた仕立てになっている。

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著者プロフィール

大正11年、東京都生まれ。昭和21年東京文理科大学卒。国文学者。とくに平安時代物語文学・日記文学が専門。元十文字学園女子大学長。NHKラジオ「古典講読」で、「源氏物語」「和泉式部日記」などを担当。著書に、『全講和泉式部日記』(昭40 至文堂)、『堤中納言物語序説』(昭55 桜楓社)、『新編日本古典文学全集 夜の寝覚』(平8 小学館)、『新潮日本古典集成 狭衣物語』上下(昭60、61 新潮社)など。平成14年逝去。

「2012年 『久保田淳座談集 暁の明星 歌の流れ、歌のひろがり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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