- Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098606757
作品紹介・あらすじ
絶望の果てで回るラブ・ロマンス、出航!!
「どいつもこいつも世界が終わりだって知らないの?」
恋に、仕事に、SNSに追い詰められ故郷のある湖・幻舟湖まできた脚本家・湖尻洋子。
全てから逃げる先である実家はもう目と鼻の先。
だが、その時彼女は思いもしなかった。
まさか自分が、まるでループするようにこの遊覧船に乗り続けることになるとは…!!?
【編集担当からのおすすめ情報】
構想およそ20年!!!
様々なジャンルの才能からリスペクトされる異才・すぎむらしんいちがおよそ2年ぶりに放つ渾身の新境地は、前人未到のループ・ラブ(?)・ロマンス!!
恋に、仕事に、SNSに追い詰められ、疲れ果てた1人の女が、
逃げてきたはずの地の果て乗り込んだ遊覧船、そこで待っている様々な人々と事件。
世界の果てで回り続ける女の運命はどこにたどり着くのか…
是非、ご期待ください!!!
感想・レビュー・書評
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すぎむらしんいちは、私のお気に入りマンガ家の一人。
『ホテルカルフォリニア』(「~カリフォルニア」ではない)はマンガ史に残る傑作だし、『老人賭博』(原作・松尾スズキ)は小説のコミカライズ史上の金字塔であった。
ただ、すぎむらは「天才肌の作家特有のムラッ気」のようなものが強いらしく、作品の出来不出来の振幅がわりと大きい。
前作『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ』は、私にはノレなかった。
だが、この『最後の遊覧船』はじつによい。すぎむらのよいところが全部出ている感じ。
架空の湖・幻舟湖(おそらく「摩周湖」と「花柳幻舟」をかけたネーミング。あるいはカルト映画『幻の湖』へのオマージュか)を巡る遊覧船を舞台にした、「前人未到のループ・ラブ(?)・ロマンス」――。
「ループ・ラブ・ロマンス」とは編集サイドがつけた本作のキャッチコピーだが、作品を読んでいないと何のことやらわからないだろう。
《絶望の果てで回るラブ・ロマンス、出航!!
「どいつもこいつも世界が終わりだって知らないの?」
恋に、仕事に、SNSに追い詰められ故郷のある湖・幻舟湖まできた脚本家・湖尻洋子。
全てから逃げる先である実家はもう目と鼻の先。
だが、その時彼女は思いもしなかった。
まさか自分が、まるでループするようにこの遊覧船に乗り続けることになるとは…!!?》
……というのが本作の惹句。最初は「ループもの」のSFなのかと思った。
だが、そうではなかった。
崖っぷち状況にある脚本家のヒロインは、執筆している演劇の脚本の舞台を、この遊覧船にしようと決める。
脚本の取材を兼ね、同じ遊覧船に毎日乗り続ける。そうするうち、遊覧船の船長との間にロマンスも生まれそうになり……という話。強引きわまる設定がすぎむらしんいちらしい。
私がいちばん好きなすぎむら作品『ホテルカルフォリニア』は、北海道の山奥に建つリゾートホテルが道路の寸断で孤立し、大半がホテル内だけで進行する物語だった。
その点で、ストーリーの大半が遊覧船内で進行する本作と似ている。癖のある登場キャラたちがからみあい、毒気の強い笑いが炸裂する展開も共通している。
すぎむらしんいちのマンガは、しばしば「映画的」と評される。脚本家をヒロインに据えているだけに、本作は常にも増して「映画的」だ。
すぎむらはコーエン兄弟のファンらしいが(前にインタビューでそう言っていた)、本作は脚本家を主人公にしたコーエン兄弟作品『バートン・フィンク』を意識しているのかもしれない。
『バートン・フィンク』も本作も、主人公が呻吟しながら脚本を書くプロセスがストーリーの核になるのだ。
『スペリオール』での連載は早くも最終回だそうなので(残念!)、コミックスは次の2巻で完結だろう。
本年度マイベスト1マンガの最有力候補だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すぎむらしんいち氏の作品『最後の遊覧船』の1巻を読了。