夢に迷ってタクシーを呼んだ (新潮文庫 も 45-3)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 359
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101003535

感想・レビュー・書評

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  • 今年読んだエッセイの中でダントツにエモかったです。燃え殻さんの感性は自分に近い感じがするので惹き込まれたのだと思います。昔虐められた相手から気軽な感じでメールが来る話とか、虐める側は簡単に忘れるし、罰も当たらずに要領良くやってるのとか悔しさとか虚しさとか込み上げるけれど、燃え殻さんのような目線で文章を書いてくれる方がいるだけでも救われる人がいると思う。

  • 『すべて忘れてしまうから』が良かったので文庫化楽しみにしていた。
    全部阿部寛で読んでしまう。
    阿部寛が見え隠れする。
    燃え殻作家のことも調べてしまったけど、やはり阿部寛だ。
    コロナ禍に翻弄される世間とか、孤独について考えてたり、あー面白かったとはならない作品が心地よく読めた。
    常々エッセイはセンスだと思っていて、燃え殻作家はそれがバランスが良いんだと思う。
    しかし『すべて忘れてしまうから』ほどドラマティックしまゃなかったのはコロナのせいかもしれない。

  • 『ブルー ハワイ』を初めて読み、ほかも読んでみたいと思っていたところ。文庫化されて目についたのは「次これ読んで!」メッセージだろうから読んでみよう

    #夢に迷ってタクシーを呼んだ (文庫)
    #燃え殻
    24/1/29出版

    #読書好きな人と繋がりたい
    #読書
    #本好き
    #読みたい本

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  • ■総評
    本書に収められた45編の話に通底するのは、日常の些事の中に交錯する『かつての記憶』。それを可笑しみと寂しさという調べに落とし込む。エッセイのようでいて、ショートショートのようでもあり、はたしてこの話はどんな結末を迎えるのか…読んでる途中からザワザワし、すっかり著者の術中にはまっているワタシ。

    そして用意された結末は、いかにも伏線回収といったケレンさはなく、反省や悔恨めいたものは混じるも教訓や学びは記されず、『すべて忘れてしまうから』と…恬淡さがただよう。

    今やこの芸当は『燃え殻スタイル』と呼んでもいいぐらい独自の形に昇華しているが、その内実を坦懐する一文が本書に収録の『昨日のことを10年前のことのように書く』と題されたエッセイにある。

    ■短評
    著者の単行本を読んだディレクターが『何気ない日常が書かれていて面白かったです!』の感想を受け〈何気ない日常。何気なく見えるよう記憶を改ざんし、妄想を膨らませ、昨日のことを10年前のことのように書いて、10年前のことを昨日のように語る自分…〉 と嘆息をはらんだ独白には著者の苦悩・苦闘ぶりがにじむ。

    日常繋がりで言えば、ハライチ岩井くんの著書『僕の人生には事件が起きない』には、何も起こらないごくごく普通の日常を逆手に取り、自身の日常を独特の視点での切り取り、その表現もまたユニークで『共感』を覚えククク笑いをしてしまう。

    思うに…エッセイに見る『何気ない日常』は、すべてそう装っているのである。描かれているのは日常のありのままではない。ナチュラル系の女優はナチュラルに見せるべく、鴨の足掻きよろしく奮闘努力している。著者はビジネスホテルに籠り、隣室から聞こえる喘ぎ声をBGMに頭を掻きむしり、浮かんだ記憶の断片を拡大したり、切り取ったり、別の記憶と絡み合わせたしながら、ようやく一編が紡がれている訳で…。

    記憶って出会い頭、そう『衝突』から生まれる。例えば、匂いとか香り。瞬時にして〈眠れる過去〉を呼び覚ます。かつて、付き合った人がつけていたコロンとか、真合宿時の蒸れた草の匂いとか…まざまざと輪郭クッキリに思い出す。

    プルーストは『マドレーヌが焼けた匂いとともに昔の記憶が甦る』と書いた。たまに出くわす記憶との戯れは楽しい。でも、著者のように作品のテーマに『かつての記憶』を置いてしまうと、五感の疲弊と日常に潜むネタ探しにヘロヘロではないか…と思うのは思い過ぎか。

    45編のエッセイにはダークな思い出もあるが、主にノスタルジーやセンチメンタルさといったほろ苦さを描くも、『昨日のことを10年前のことのように書く』のエッセイだけサクマドロップ缶のハッカキャンディみたいな異質さを感じた…。

  • デビュー作の小説はあまりハマらなかったけど、このエッセイはとても面白かったです。
    読んでるうちに自然とセンチメンタルにさせられて過去に思いを馳せてしまう。舞台となる様々な東京の景色や空気感がなんともリアルに感じられるのもまた良くて、今過ぎてく瞬間瞬間が謎にエモく感じ始める。
    燃え殻さんが書いてる通り、過去の思い出はこんな感じでやたら美化されたり都合の良いよう解釈して自分の中に記憶し残していると思う。

    生きてるって当たり前じゃないのに、日々をどんどん通り過ぎさせてしまっていることに気づいて愕然とするけど、自分にはどうしようもない。
    辛い青春時代や壮絶な社会人生活ではなくて、普通に普通に生きてこられてる事がなんと幸せなことか。
    残りどれだけの人生かはわかんないけど、先に亡くなってしまった大切な人たちに恥ずかしくないよう、少しでも胸張ってやりきってやりたいものだと思う。

    これは定期的に読むやーつにします。

  • 同じ時代を生きてきたからだろうか、どこか懐かしくてフラッシュバックするエッセイ集。共感しかない。燃え殻さんの言葉が好きだ。「僕たちの人生は、なぜか忘れられなかった小さな思い出の集合体でできている。」

  • 共感出来るエピソードが多く、最後のヒグチアイさんの解説までしっかり楽しめました。

  • 友達から借りた、1周まわってこれにした、気楽に読めるよという言葉が添えられて。
    サラサラと、すんなりと、くすっと、読めた。燃え殻さんは私たちと近い(と勝手に思ってる)。だからこそ気楽に本を開くことができる気がする。返す時このテーマが好きだった、から始まる会話が楽しみだ。私たちの日常にすんなりと繋がる話題を作ってくれる。

  • 燃え殻さんならではのエッセイで最高でした。世の中には無数の出来事と無数の感情がある。

  • 日常の誰にもありそうでない出来事を淡々と綴りながらもどこか沁みる、そんなエッセイ集。小説よりもエッセイの方が個人的には好みだ。過去のそして現在の負の要素をこれだけ客観的に描きつつ、ネガティブな印象を与えないのは表現のうまさとバランス感覚が秀でているからだろう。

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著者プロフィール

1973年生まれ。小説家、エッセイスト。
2017年、小説家デビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』がベストセラーとなり、2021年秋、Netflixで映画化、全世界に配信、劇場公開された。
小説の著書に『これはただの夏』、エッセイ集に『すべて忘れてしまうから』『夢に迷って、タクシーを呼んだ』『相談の森』『断片的回顧録』がある。最新作は『それでも日々はつづくから』(新潮社)。

「2022年 『ココロギミック 異人と同人3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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