- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101172019
感想・レビュー・書評
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1950年代を舞台に、朝鮮人としてのアイデンティティに目覚める在日朝鮮人の主人公と、それを理解できない日本人の少女の、報われなかった恋愛を描いた。
30年ぶりに再読した。当時の帰国運動を、30年前は「明」ととらえていたが、現在の北朝鮮の状況を鑑みると、「暗」として感じてしまう。歴史の評価というのは、相対的なものなんだとつくづく感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
林相俊(イム・サンジュニ)という在日コリアンの青年の悲恋をえがいた作品です。
北海道家を出て東京の大学に入学した相俊は、クナボジの家で伽耶子という少女と再会します。学生運動や演劇の世界に身を投じ、みずからのアイデンティティについて問いなおす一方で、相俊は伽耶子に恋心をいだきます。しかし彼女の両親は二人の恋に反対し、思いあまった伽耶子が東京の相俊のもとにやってくることになりますが、相俊は彼女が自分自身のうちに流れる血に苦しんでいたことを理解できず、やがて二人の仲は破局にいたります。
金石範とともに在日コリアン作家の第一世代ともいうべき著者が、民族的なアイデンティティをめぐる文学的主題をあつかった作品で、このテーマがある意味では定型的なかたちでえがかれているといえるように思います。李良枝以降、本作のような定型的な「政治と文学」という大きな枠組みのもとでこうしたテーマがあつかわれることはすくなくなり、より微細な問題にそくしたしかたでこうしたテーマがえがかれるとともに、梁石日やグ・スーヨンのようにこうした問題をエンターテインメント作品として昇華するスタイルも存在しますが、本作のような第一世代の作品はそれらの文学的伝統のいしずえとなったことで、「現代」・「日本」文学の多様性に寄与しているのかもしれません。 -
在日朝鮮人2世の恋を描く。映画化されているようです。