西郷隆盛はどう語られてきたか (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101210964

作品紹介・あらすじ

「維新の三傑」でありながら、西南戦争を引き起こした賊軍の首魁。にもかかわらず、国民の間では圧倒的な人気を誇る。武士にして思想家、軍略家にして温情の人、農本主義者にして詩人でもあった。西郷隆盛ほど捉えにくい人物はいない。だからこそ、さまざまな西郷論が語られ続けてきた。その変遷はまた、時代を映す鏡でもある。同時代人の証言から、小説における描かれ方までを総ざらいする。

感想・レビュー・書評

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  •  西郷ブームということで、これは鹿児島県立図書館長の手になる西郷研究集大成ともいえる一冊。最初から最後まで古今数多ある人物譚・西郷論の引用と解題が集められている。これだけ多くの人が色々な角度から論評していながら、具体的で明確なイメージがちっとも浮かび上がらず曖昧模糊としているのが不思議なところ。本書の構成の性質上客観的ではあるが主観が抑えられているので、よけいに隔靴掻痒観が否めない。まあ、人それぞれの西郷観がありそれが人気のある所以でもあるのだろう。

  • ★3つは、読み物としての面白さでの評価。
    様々な切り口での西郷隆盛の評価を一冊にまとめた本という意味でなら、★は5つでもいいと思う。

    西郷隆盛という人は、結局わからない。というより、普通の人では絶対わからないんだと思う。
    低い山の山頂から高い山を見上げても、高いということはわかっても、その山頂は窺い知れない。そういうことなんだろう。
    そもそも、普通の人であっても、人というのはなかなかわからないものだ。
    ましてや、あんな時代をまとめあげた西郷隆盛だもん。平和で豊かな暮らしに浸りきった今の日本人に、その腹の内を理解しろという方が無理だ。

    何を思ったのか、今頃、西郷隆盛関連の本が読みたくなったのは、佐藤賢一の『ラ・ミッション』を読み始めて。
    最初は面白く読んでいたのだけれど、あまりに男気に溢れる理想的な仲間同士として描かれる主人公と旧幕府の人たちに、だんだんシラケてきちゃって(^^ゞ
    とはいえ、頭の中が幕末・維新モードになっていたので、なんか面白そうな本ないかなーと探していたら。
    何年か前にドラマでやってた西郷隆盛関連本の古本が安く売っていた、というわけ。

    そういえば、アマゾンを見ていて思ったんだけど、その『ラ・ミッション』もそうだけど、最近は、明治政府側より、旧幕府側寄りの本が多く出ているような気がする。
    ま、男としては、反乱や反旗という言葉に、無性にロマンを感じるわけで、旧幕府側や奥羽列藩同盟の人を主人公にした物語が多く出るのはうなずける。
    ただ、明治維新批判の本とかが数冊あったりで、まぁそれはそれとしてわからなくはないんだけど、でも、明治維新があればこそ、今の豊かな日本があるわけだ。
    そりゃ、明治維新が全部正しかったなんてことあるわけないし、それこそ間違いや失敗がいっぱいあったのは確かだろう。
    でも、江戸時代、江戸に住む庶民の多くは長屋に住んでいたのだ。
    詳しくは知らないが、確か、4畳半よりちょっと大きいくらいの畳敷きの部屋に土間がついていて、トイレ(厠ねw)は共同。
    そんな住まいが、江戸時代の庶民の標準だったわけだ。
    まー、明治になったからって、そんな庶民の暮らしが大きく変わったわけではないんだろうが。
    それでも、大正になる頃には、大正モダンだのモボ・モガなんて言葉が流行るわけだから、少しずつでも生活は向上していったんだと思う。

    あの時、明治新政府でなく、そのまま江戸幕府が近代国家を担っていたら、大正になる頃に庶民の暮らしはそんな風になっていただろうか?
    たぶん、江戸時代のように、武家という特権階級があって、庶民は相変わらず長屋暮らしだったんじゃないだろうか?
    もちろん、そんな国だったら、国としては栄えないから。自ら国を滅ぼしてしまうような、あんな愚かなことは出来なかっただろう。
    でも、その代わり、おそらく21世紀の今頃にやっと中産階級が育ってきたみたいな、今の新興国みたいな暮らしでしかなかっただろう。
    というかー、明治維新というのは、そもそも欧米列強の植民地支配の恐怖から起きたことなわけで。
    明治維新がなされず、富国強兵策がなかったら、ロシアに侵略されていた可能性があるわけだ。
    それがなかったとしても、その後の自由主義と共産主義の戦争の最前線になって、その結果、国土が分断されて。一方の国は今も北朝鮮のような人たちのような暮らしをしていたかもしれないわけだ。

    明治維新というと、大久保利通が何か批判される傾向があるが、批判をものとせず大久保利通(やその後継者たち)がガーっと舗装道路をひくように時代を変えていったことが、今の私たちの豊かな暮らしにつながっているわけだ。
    確かに、そこに多くの間違いや失敗、犠牲があったのは間違いない。
    だからって、現代において明治維新を批判する人たちが、今の日本のまがりなりにも平和で豊かな暮らしを踏まえた上でそれを批判しているとは到底思えない。

  • 在世中の西郷を知る人から後世の人まで様々な西郷評。
    やはり息子さんなど直接的な証言の方が面白い。

  • 様々な人の西郷論が掲載されている。
    流し読みのため、星一つ。

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著者プロフィール

1947年、鹿児島県生まれ。東京大学文学部国史学科卒。同大学大学院修士課程修了、博士課程単位取得。鹿児島大学法文学部教授を経て、同大学名誉教授、志學館大学教授、鹿児島県立図書館館長。専門は日本近世・近代史、薩摩藩の歴史。NHK大河ドラマ「翔ぶが如く」「琉球の風」「篤姫」「西郷(せご)どん」の時代考証を担当。『世界危機をチャンスに変えた幕末維新の知恵』(PHP新書)、『龍馬を超えた男 小松帯刀』(グラフ社)など著書多数。

「2022年 『日本人として知っておきたい琉球・沖縄史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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