母親病 (新潮文庫 も 41-3)

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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101211930

感想・レビュー・書評

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  • 母親の謎の死を巡る連作集です。正直この60代の母親の気持ちがあまり理解できなかった。共感できる登場人物もいなかった。しかし小説はそこだけが重要な訳ではないし、ミステリー的に読むこともできる作品だと思う。
    私個人としては母親にここまでもやもやを感じたことがないけれど、家族だからといって相性が悪い場合もあるだろうしその場合は関係が近い分深刻なことと思う。

  • 言いたいことはわかるけど、何かいろいろ情報が多すぎて中心が分からず気持ちは右往左往、って感じでした

  • 題名のインパクトから手に取った本
    表紙も意味深・・・

    思っていた内容とは違ったけど、
    とても新鮮だった。ミステリーの要素も強く、
    母、園枝の死の謎に引き込まれた。

    「やわらかい棘」で終わりでも成り立つけど、
    この本の奥深さは正直ここからだと思う。
    作者の実力を実感、このあとの作品もぜひ読んでみたい。

    幸仁のセリフ「知ってる?奇跡って、あとから奇跡ってわかるんだよ」
    これだけでもドキッとした。
    読んだかいがあるというものだ。
    40の年の差の恋愛(60代と25歳)あるのだろうか・・・と半信半疑
    もう一つ、気になったのは、ヘルパーの平沼さんの態度。
    珠美子が母がお世話になったことへのお礼と死因について、
    尋ねた時、「金切り声で「私は何も知りません!」」と答えたあたり、
    どうにも怪しい・・・と感じた。

    そして「砂の日々」へ繋がる。
    私が知りたかった「なごみの手、ヘルパーの平山さん」の話、
    切なかった。いかにもでもあるけど、ありそうな設定に
    少し心が苦しくなる。

    窓の外は日が暮れ、向かい側の団地に灯りがともる。
    ささやかな明るさは家族の息吹のようで、他人には我が家も尊い明るさに
    映っているのだろう。

    「尊い明るさ」上手い表現だなと思う。
    陽花や元旦那との微妙な関係や歴史など、この一言で表されている。
    すごいね。
    そのほかにも「罪悪感で細胞という細胞が脈打った」
    「園枝の爪は短く切りそろえられているが、あるかなきかの色で染まっていた」
    「限度を超えた無垢と無知は、間抜けと紙一重なのに」
    「背中の火傷の跡。出産や火傷の激痛は捨て、収集車がゴミとして持ち去ったのに、まだ痛みがくすぶっている。あるいは痛みも飽和して、歩むごとに沈んでいく、砂の日々だ」

    瑠衣に食べさせることを想像して作るクッキーには、
    園枝の家から持ち出した正体不明の赤い実を混ぜてあった。
    間一髪、陽花は食べずに済んだらしいと分かってホッとし、終わる。
    でも、なぜ??新たな疑問でこのあたりから、完読を覚悟し、夜更かしコース、
    ページをめくる手が止まらなかった。

    そして「花園」園枝と雪仁との関係が少しずつ、判明していく。
    まさか、クッキーは瑠衣の手で、園枝の家の冷蔵庫に戻ってくる。
    意外にも自然な流れだった。
    これまでの、ヘルパーと介護される側の関係性が上手く、描かれていたせいか、
    園枝のとる行動が妥当に映るように、ちゃんと彼女の考え方や人生の期し方が
    描かれていたからか・・・

    園枝の甘やかな気持ち、切実な願いの描写もいたるところに、ある。
    ベッドマットの下からノートを引っ張り出し、すかさず頬をよせた。昨夜のベッドの軋みを、このノートはまだ覚えている。
    秘密の中のラブホテルも、こんな風に素知らぬふりをしたリネンだった。
    私はここに、雪仁との日々を綴ろうと誓った。私の記憶が粉々になって、私自身が振り返って味わえなくなっても、確かに現実だと、時間を閉じ込めておけるように。

    このあたり、よくわかるなぁ。私も思ってる。だから、このブクログもそうだけど、
    記録するこに労力を惜しまない。
    流れていく日々とともに、記憶はどんどん薄くなり、寂しくなる。

    若い人同士の交わりは、肌質が類似しているから、心がついていかなくてもたいてい上手くいく。衝動も後悔も、その処理の仕方も、きっと早くて移り気だ。

    この一文も、若さを通り過ぎた今だからわかる。
    妙な説得力だ笑

    終わり方は少し不完全燃焼だけど、母親病が根底にあったとしても、
    表題としてはこれで良いのか?
    ちょっと疑問、ミステリー、サスペンス的要素としても
    十分に楽しめた。

  • どの登場人物もなんだか切ないし健気
    で、寂しい感じ

    日記というのは自己愛の燃えかす

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著者プロフィール

1970年、埼玉県生まれ。1995年、少女小説家としてデビュー。2013年、「朝凪」(「まばたきがスイッチ」と改題)で、R-18文学賞読者賞を受賞。主な著書に、受賞作を収録した『主婦病』のほか、『私の裸』『母親病』『神様たち』など。アンソロジーに『黒い結婚 白い結婚』がある。

「2023年 『わたしのいけない世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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