GHQと戦った女 沢田美喜 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101337531

作品紹介・あらすじ

昭和23年、進駐軍兵士と日本人女性との混血孤児を救うため、GHQと対峙し、児童養護施設エリザベス・サンダース・ホームを創設した沢田美喜。三菱財閥・岩崎家の令嬢は、なぜ養う子供のミルク代にも事欠く生活に人生を捧げたのか。その決意に秘められた「贖罪」の思いとは何か……。恐れず怯まず進駐軍と戦い、たった一人で「戦争の後始末」に立ち向かった女性の愛と情熱の生涯を描く!

感想・レビュー・書評

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  • 三菱財閥の末裔である沢田美喜という人物のノンフィクションです。
    岩崎家の栄枯盛衰などがからめて描かれていました。

    彼女自身の思いや
    混血児たちの ホームを作ってからの
    苦労などは 自身の著書にあるからなのか
    あまり描かれていないので
    いつか 本人の書いたものを読んでみたいと思いました。

  • 岩崎弥太郎の孫であり、戦後日本に「エリザベス・サンダーズ・ホーム」という孤児院をひらいた沢田美喜。
    彼女の伝記かと思って読んでいたが、そんな易しい内容ではなかった。
    本書で明かされることはなかったが、実際には知られていない陰謀めいたことが裏ではあったのかもしれない。
    沢田美喜本人よりも、その周辺の人物や事情について多く書かれている。

    沢田美喜がなぜ孤児院をひらいたのか、その真意は分からないが、財閥の孫でコネクションや財力はあったにせよ、賞賛に値する素晴らしい行いだったと思う。

    本書を読んで、当時の事件に興味を持ったので、松本清張の「日本の黒い霧」を読んでみたいと思う。

  • 沢田美喜及びエリザベス・サンダース・ホームについては、通り一遍の知識しかありませんでしたので、一発『GHQと戦った女 沢田美喜』を読んでみました。

    日本人は敗戦後、米国の進駐軍兵士が街を跋扈し、狼藉に振る舞ふのを看過するしかありませんでした。そして米軍兵士と日本人女性との間に生まれた混血児が多く誕生したのであります。強姦によるものもあれば、自由恋愛によるものもあつたでせう。生活の為、やむを得ず米兵のいひなりになつた女性も少なくありますまい。
    しかし生まれた混血児たちは、歓迎されざる存在であつた事は共通してをります。その結果、子供たちは棄てられ、多くの罪のない命が失はれたといふことです。
    そんな孤児たちを受け入れる施設として、岩崎財閥の娘・沢田美喜がエリザベス・サンダース・ホームを開設したのであります。

    と、ここまでは良く知られた話。どちらかといふと、美談として沢田を聖母扱ひする文献が目につきます。無論、その目的が何であらうと、その社会的意義に変りはないのですが......
    確かに、沢田本人の著書に、ホームを開設する動機は書かれてゐます。電車内で、捨子の母親と誤解された事がきつかけのやうです。誤解は解けますが、「たとえいっときでもこの子の母とされたのなら、なぜ、日本国中の、こうした子供たちのために、その母になってやれないのか......」と啓示を受けたといふ。

    しかし著者は、やはり大きな動機の一つとしては、沢田が岩崎財閥の娘であつた事が大きいだらうと推察します。財閥を一代で築き上げた祖父・岩崎彌太郎にちなみ、「女彌太郎」と呼ばれた彼女。GHQにより財閥解体された当事者としては、進駐軍に対する敵愾心は当然あつた事でせう。
    しかも米軍としては、負の側面である「戦争混血孤児」といふ存在はなかつたことにしたい。我が聖軍がそんな事をする訳がないぜ。そんな彼らの神経を逆なでするやうな「エリザベス・サンダース・ホーム」は容認できぬ存在であつたと想像できます。事実、陰に陽に妨害や嫌がらせは茶飯事だつたさうです。沢田は無論戦ひました。本書のタイトルとなつた所以であります。

    さらに著者は、ホームの隠蔽された側面にも注目しました。米軍諜報機関とも関りがあつたらしい。ホームの運営にも関係してゐた人物が、あの「下山事件」と何らかの絡みがあつたとして逮捕されてゐます。無論真相はわかりません。沢田自身の著書にもかかる記述はなく、意図的に触れずにゐたかのやうです。

    著者の執拗な取材にも拘らず、その結果については完全に満足とはいかなかつたやうです。それでも数少なくなつた生存者の証言を求めて、十年といふ歳月を費やしたとのこと。その苦労の成果は、如実に表れました。
    特に沢田美喜記念館館長(当時)の鯛茂氏からは、貴重な話を多く引き出してゐます。本書を読んだ後だと、彼の沢田美喜評「(沢田美喜は)普通の人ではない。生きていることそのものが素晴らしい。化粧もしていない。怖いけれど凄い人。昼間はオニババ、夜はマリア......」が、當に正鵠を射てゐるといふ想ひになります。

    単行本上梓後、取材した多くの人が物故者となつてしまつた。それだけに、出るべき時に出た、戦後史の一頁としても貴重な一冊と申せませう。


    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-814.html

  • GHQと何を戦ったのだろかと思ったが、戦後の問題に対して斜め上の解決策を考え、それに私財を投げ売った行動力と意思にただただ驚愕した。少しでも、余裕を持ち、他人のそして国家のそして世界の幸せに貢献していたいものだと思った。

  • 混血孤児を救うべくエリザベスサンダーホームを、創設した女性の生涯を描いたノンフィクション。もうひとつの占領史。

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