巴里の空はあかね雲 (新潮文庫 き 6-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339023

感想・レビュー・書評

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  • 岸惠子と言えば、山口百恵の「赤いシリーズ」に現れるの謎のフランス在住夫人のイメージが強く(笑)、年齢的にかぶらないので映画女優時代の作品はほとんど見ていない。
    作品歴を見ていると「赤いシリーズ」に出演されていた頃は離婚の直後あたりで、この本を読むと穏やかではない日々の最中だったようだ。
    そんな片鱗はみじんもない圧倒的な演技に、やはり女優とは凄いものと思う。そして、映画女優時代の写真を見るに若き頃の美人ぶりは凄く、さぞモテたことと思う。

    実際、海外の映画人からのオファーだらけだったことが、本書を読むとよくわかる。
    フランス人映画監督で医師の資格を持つ夫との結婚、そして離婚。欧州らしく離婚後も元旦那や母家族とのつきあい、一人娘と暮す生身の女優。登場する映画人も数多、ショーケン、三船敏郎、池部良、ルネ・クレール、アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー・・・、本当に豪華絢爛な登場人物たち。

    その中で、イザベル・アジャーニへのインタヴューは白眉。大遅刻の彼女を許し、写真も撮らせない彼女の唯我独尊ぶりを、役者としてのひたむきさとみなす。少女時代の詩的な邂逅も素敵だ。

    そして、デビット・リーンから脚本を書き換えるから出演しないかと手紙をもらい、来日したウィリアム・ホールデンからの直接の説得にも応じず「戦場にかける橋」の出演を断ったり、マーロン・ブランドとの共演のオファーを断るなど、たいした売れっ子女優だった。

    また、アパルトマンの退去、家の火事、盗難、異国での暮らしの苦労の狭間での精力的な仕事ぶりも強烈で、彼女の生き様グイグイ引き込まれる。

    こちらの本、編集者が手を加えるのに腰がひけたのか、少々読みにくい文章があるが、それが良い味になっている。なんと言うかご当人の勢いある語りが脳内で再現されるような文章で、それが逆に心地よい。

    <その他の書籍紹介>
    https://jtaniguchi.com/tag/%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e7%b4%b9%e4%bb%8b/

  • 夫との離婚から夫の死までのエッセイ。それにしても、夫は岸さんのような素敵な女性と離婚するなんて、本当に勿体無い。そのせいで早死にしたんではないかと思うくらいだ。

  • 岸恵子さん初のエッセイ。東京巴里井戸端会議があんまりよかったんで買ってみた。感想は…うーん、こんなもんか、と。小気味いいリズムのある文章はいいんだけど、ひとつの章ごとに伝えたいことがいまいちわからない。
    往復書簡集ではあんなに生き生きしてたのに、この作品では古い言い回しと落語や小噺みたいな古いオチつきの話ばかりで、みずみずしいとは言い難い。でもパリでの生活がより詳しく書かれているところは面白かった。泥棒に入られたところとかね。
    見どころは、娘デルフィーヌとのやり取りかな。ボケツッコミが出来上がってていいコンビ。好奇心旺盛なデルフィーヌの乞食旅にびっくり。
    印象的なのは、ロミ・シュナイダーの死について書かれた話。彼女の死に真っ向から向き合っている。にもかかわらず、自分の夫の死には向き合えない。女としてのもろさと鋼の強さが交互にやってくる。多面的な女性なのだろう。女優をやっている人には当たり前のことかもしれないけど。

  • 十数年前から複数回読んでいる。個人的にパリが懐かしくなった時にふと読みたくなるエッセイ。

  • こないだ読んだ「ベラルーシの林檎」が良かったので、こちらも読んでみました。
    離婚して、その後の娘さんと二人の生活、本当に人生いろんなことがあって、それでもたくましくうつくしく生きておられる姿がすばらしいなぁ、と。
    ひとりの女性として、母として、とっても率直に心情が書かれていて、大女優さんなんだけど親しみを感じてしまいました。

  • 今なおエレガントな女優,岸恵子さんの
    自伝的エッセイ。
    パリの暮らしが長かった岸さんならではの
    小粋で凛とした生き方が素敵。
    こんな風に年を重ねたいな。日本文芸大賞エッセイ賞作。

  • 私って個性的でしょ。個性的でしょ。って、ずっといわれているような気がする文章。確かにリズム感はあって、言い回しがおもしろいんだけれど、いかんせん口語が古い。もう少し立つとそれも味として楽しめるのかもしれない。筆者のガッツと決断力のあるところが、ステキだなあと思った。ちょうど、同時に読んでいた石井好子さんの本に離婚前の家での作者の写真があったので、ここでいろいろな出来事が起こったんだと、思えて、小さな臨場感ももてた。

  • これも小気味の良いエッセイ。

  • なにげに古本屋さんで購入。ご本人の凛とした風情にぴったりの歯切れの良い粋なエッセイ。これを読んでいると背筋がピンとしてきます。

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岸惠子の作品

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