- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101433226
感想・レビュー・書評
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小林照幸『死の貝 日本住血吸虫症との闘い』新潮文庫。
Wikipedia三大文学というのがあるらしい。『八甲田雪中行軍遭難事件』と『三毛別羆事件』、そして本作で取り上げた『地方病(日本住血吸虫症)』の3つで、読み始めると思わず引き込まれてしまう秀逸なWikipedia記事のことである。
『八甲田雪中行軍遭難事件』は、映画化された新田次郎の『八甲田山死の彷徨』や伊東潤の『囚われの山』を読んだ。『三毛別羆事件』も戸川幸夫の『羆風』、吉村昭の『羆嵐』、木村盛武の『慟哭の谷』を読んでいる。しかし、『地方病(日本住血吸虫症)』について書かれた書籍を読むのは初めてである。
本作はWikipedia記事の主要参考文献であり、1998年の刊行の日本住血吸虫症との100年に亘る闘いを記録した歴史的名著である。
昔、学校の授業で聞いた日本住血吸虫症の話。何とも恐ろしいと身震いしたが、主に西日本を中心にした寄生虫による病気だと聞き、安堵した覚えがある。
古来より日本各地で発生した謎の奇病。腹に水がたまり、妊婦のようになり、やがて動けなくなり、死に至る。長らく原因も治療法も分からず、発症したらなす術もなかった。
この奇病に立ち向かうため、何人もの医師や住民たちが奮闘を始める。そして未知の寄生虫が原因ではないかと疑われ始め、やがて未知の寄生虫の正体と中間宿主が判明する。
本体価格670円
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こんな病気が日本にあったのか…嫁ぐ時は「棺おけを背負って」と言われるほど恐れられた「死の貝」 | ヨミドクター(読売新聞)2024年5月7日...こんな病気が日本にあったのか…嫁ぐ時は「棺おけを背負って」と言われるほど恐れられた「死の貝」 | ヨミドクター(読売新聞)2024年5月7日
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20240507-OYT1T50105/2024/05/13
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寄生虫とかグロテスクなものが好きな私にとってこれ以上魅力的なタイトルがあるだろうか。日本住血吸虫というおどろおどろしい寄生虫の名前、興味をそそられる。
明治、大正時代の農作業者が苦しめられた寄生虫に立ち向かう医師たちの執念があって今の衛生的な暮らしがある。感謝してもしきれない。
それにしても雄と雌が常に抱き合い動物の臓器の中で血を吸い放題の彼らの暮らしぶりはなんて甘美なのか。殺伐とした社会でストレスを抱えながらなんとか子育てして食べるために毎日身を粉にして働く私たちのほうが本当に高等生物なのか? -
帯の "Wikipedia 3大文学" との文言に釣られて手に取った一冊。本書は、日本住血吸虫症と呼ばれる病との闘いを記録したノンフィクション。
「水腫張満」、腹に水がたまって妊婦のように膨れ、死に至る者も多い、そんな病が日本の数か所の地域で発生していた。山梨の甲府盆地、広島の福山市神辺、そして福岡・佐賀の筑後川流域。もちろん初めのうちは、それぞれの地域で奇病があることがその土地の住民や医師に分かっていただけだった。
その状況が動き出したのは、明治に入り西洋医学が導入され、さらに徴兵検査によって体格不良者が多いことが明らかになって、その原因を調べることが国家的課題となったことからだった。
多くの医師や研究者の努力により、ようやく原因が解明される。それは寄生虫によるものだった。次に求められるのは治療方法の確立と予防対策。そして長年にわたり多額の費用をかけた対策が講じられ、遂に日本では日本住血吸虫症の終息が宣言された。
本書はそこに至るまでの先人の苦労とドラマを描くことで、病気を根絶することの素晴らしさを謳い上げるとともに、終わった過去のこととして忘れてはいけないことを教えてくれる。
(トイレの水洗化や農作業の変化などにより、日常生活で寄生虫を意識するようなこともほとんどなくなってしまった。学校での検便検査をしたことが懐かしい。) -
日本住血吸虫。耳にしたことはあったが概要は知らなかった。
100年以上にわたる住血吸虫との戦い。膨大な資料を当たったんでしょう。労作。
ミヤイリガイを駆除するのに自衛隊が火炎放射器を使ったそうな。画像探してみよう。 -
Wikipedia三大文学があるという。
八甲田山雪中行軍遭難事件、三毛別羆事件と並んで日本住血吸虫症。
本書は題材からも内容からも「八甲田山死の彷徨」「羆嵐」と共に屈指のノンフィクション。
原因不明の地方病、山梨県、岡山県など一定の地域にだけ見られ、治療法もない不知の病。
現代医学から病の原因を探り、また病を根絶していく医師たちの戦い。 -
大部分が引用されていたWikipediaで読んだものの、当たり前だがこの本によってより詳細を知ることができた。文庫化にあたって筆者による解説が加わったが、そこにコロナの流行の件も書かれており、自分が体験したことと重ねて当時の苦しみや必死さを想像することができた。