- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101486116
感想・レビュー・書評
-
「伊藤桂一」の連作時代小説『月夜駕籠―風車の浜吉・捕物綴』を読みました。
ここのところ時代小説が続いていますね。
-----story-------------
天網恢恢疎ニシテ漏ラサズ!が口癖の、風車の親分こと御用聞の「浜吉」。
今日も小石川伝通院で風車を売っていると、難事件の解決依頼が舞い込んでくる。
月夜になると娘をさらう駕籠の謎を負う表題作、ハゼ釣りの客が釣った銀のかんざしから、かどわかされたご新造の行方をつかむ『かんざし釣り』など、推理と人情で謎を解く捕物9話。
お縄にしたあとの計らいも粋な、シリーズ3作目。
-----------------------
1995年(平成7年)に刊行された「風車の浜吉」捕物綴捕物控シリーズの第3作です。
■第一話 狐憑きの娘
■第二話 月夜駕籠
■第三話 月明かりの渡し場
■第四話 鴉の呪文
■第五話 かんざし釣り
■第六話 塀の外の化物
■第七話 あの世で婚礼
■第八話 狐の嫁入り
■第九話 似顔絵の女
■解説 磯貝勝太郎
普段は伝通院の風車売り、その実、捕物には凄腕をみせる「風車の浜吉」が大活躍するシリーズでしたね、、、
月夜に起こる娘たちの神隠しの真相に迫っていく『月夜駕籠』、
大店の孫娘がかどわかされ旅芸人の「中村歌女」が「浜吉」を助ける『月明かりの渡し場』、
土蔵破りが盗んだ金の隠し場所を探るべく、鴉がくちばしる文句の謎を解き明かす『鴉の呪文』、
下総・水海道へ旅した「留造」が夜明けに厠で見た化け物の正体が事件解決の鍵を握る『塀の外の化物』、
金杉稲荷の狐の嫁入りの行事の日、「お時」の連れ子「松太郎」がかどわかされる『狐の嫁入り』、
あたりが印象に残りましたね… 事件解決後に「浜吉」が捕物の絵解きと称して、事件の顛末を解説してくれるので、読み手に対して親切だし分かりやすい構成になっているところも良かったですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代劇ミステリー。普段は手製の風車を売り歩いている捕物名人の浜吉が、各所で起きた事件を解決する内容。時代劇の枠をきっちり守ってミステリーをやっている感じがある。
いわゆる人情物で、情状酌量の余地がある捕まえた犯人や被害者にかなり手厚く取り計らう結末が多め。短編集で短い時間にも切り良く読めた。
根津付近が題材になっているようで、知っている地名がちらほら出てきて楽しかった。 -
伊藤桂一さんとといといえば戦場作家として書かれた著作しか読んでいなかった。しかし、時代小説ほか多彩な作品を書いておられる。人柄そのままに優しさに溢れ、滋味豊かな物語だ。そうか、岡っ引は公儀の役人ではなくて同心の私的雇いだからその手当では食っていけないんだね。風車を売るのが生業っていう、ゆるい設定もいい。シリーズ3作目のようで、遡って読まねば。伊藤桂一さんとといといえば戦場作家として書かれた著作しか読んでいなかった。しかし、時代小説ほか多彩な作品を書いておられる。人柄そのままに優しさに溢れ、滋味豊かな物語だ。
-
風車の、といえば弥七なんじゃぁ?という声が聞えてきそうですがこの場合風車は投げるんじゃなくって売り物。
御用聞きの浜吉親分は副業として風車を売っているのです。(しかし弥七の風車って武器にしてるわけじゃないですよね。矢文の代わり?)その風車も「五本の竹ひごを蛇籠に編み出てくる十本のひごの先に色紙を貼ったもの」だというから凝った民芸調のもの(?)のようだし。…副業としてはまずまず、と言った感じでまあ妻が料理屋で働いているとはいえ袖の下を要求する必要もなく(?)性格のいい(?)親分として描かれている。…必要悪もたいな描き方も嫌いじゃないけど、こういう「いいひと」の方が読んでて気楽でいいよね。
捕物帳だからまあ犯人がいるわけで、最後にはつかまったりするわけだけれど「お上にもご慈悲はある」というか”お目こぼし”的な解決方法がちょっと多いような気がするのが難点か。いいんだけどね。
-
98年2刷本