- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101801681
作品紹介・あらすじ
あなたは、わたしになる。密室こそが、救いだから。その死体は、三重の密室の最奥に立っていた。異様な形で凍りついたまま……。そのとき犬神館では、奇怪な《犬の儀式》が行われていた。密室のすべての戸に、ギロチンが仕込まれ、儀式の参加者は自分の首を賭けて、"人間鍵”となる。鍵を開けるには、殺さねばならない。究極の密室論理。これは三年前に発生した事件の再現なのか。犯人からの不敵な挑戦状なのか。瞠目のミステリー。
感想・レビュー・書評
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その死体は、三重の密室の最奥に氷結して立っていた。犬神館で行われた「犬の儀式」。それは使用人シズカが三年前に目撃した事件の再現なのか?!現在と過去の事件の視点が交差する密室ミステリ。使用人探偵シリーズ第三弾。
「犬神」なんてキーワードがあったら読んじゃうよね!今作も仕掛けに設定が特盛状態!二つの事件が並行して進んでいく。現在の視点は、親戚の氷室邸で行われる「犬の儀式」を止めようとする芹沢妃夜子とシズカが描かれる。過去の視点は、姉を亡くした「ぼく」が迷い込んだ雪島邸で当主・清春と彼に仕えるシズカ、さらに「犬の儀式」を持ち込んだ明日井鏡花との出会いと事件が語られる。
「犬の儀式」──巫女と三人の贄が儀式へと臨む。儀式の間は三重の丸に似た密室。それぞれの密室を隔てる引き戸にはギロチンが仕込まれている。戸袋が棺のような鍵箱になっており、そこに贄は一人ずつ入り、内側から鍵で身体を拘束される。巫女が持つ鍵で拘束を解かないまま戸を開ければ贄は死んでしまう。自分の首をかけた「人間鍵」だ。
「人を殺してまで、密室へ踏み込もうとするものはいない」──そんな「人の理性と倫理によって形作られた密室」で発生した惨劇と氷結した死体の謎が突きつけられる。
儀式の説明だけでこの分量!それが倍プッシュ!面白いのにややこしい!ここまでするならせめて三重密室の図と登場人物リストが欲しかった。自作したけども、こんな感じ?みたいになってしまう。現在と過去の事件の対比、外から内か?内から外か?という流れがドラマと重ねられているのは読み応えあった。でも、これって時間的に不可能では?というポイントが何個かあるような?ネタバレでタイムテーブルのおまけもほしい。
キーパーソンである明日井鏡花のセリフが好き。ブギーポップシリーズの世界の敵が言いそうな哲学を感じる。
「その不条理すら、はかられたものだとはいえない? よく不幸を不条理だと云う人がいるけれど、それは条理の数とどちらが多いのかしらね?」
「世の中が公平ならば、本当の意味で公平であるならば、そこに喪失を取り戻す鍵がある。世界の限界という密室を脱出する術がある。わたしはそれを行おうとしているにすぎないわ」
明日井鏡花という人物の癖の強さはよかったものの、設定や事件の濃厚さに登場人物のドラマが追いつかない印象は今作も同じ。不可解な密室の謎とシズカの組み立てるロジックを味わうなら充分楽しい。ミステリにドラマを求めると物足りないのが惜しい。ドラマを重厚に描いてくれたら、心理的な多重密室や人間鍵の衝撃がより深く忘れがたいものになったと思う。
p.152
「理性のある人間は、行動の動機に欲があると考える。何らかの利益、何らかの快楽、何らかの愛が、そこにはあると。しかし、そうではない人間もいるのです。破滅を動機にする人間が存在する」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シズカシリーズ。
3年前と現在で繰り返される犬の儀式。密室の奥に入るには、ギロチンのついた人間鍵。大切な人を殺さないと入れない密室の奥には、また別の死体。
このシリーズの中では、雰囲気、ロジック、仕掛け含めて一番良かったと思います。3年前と現在の事件でまるで違う真相。エピローグもおどろおどろしくてよいです。 -
書店で何気なく手に取って面白そうだなと思って購入。そしてそのあとに気づいたのだけど、シリーズものでしかも本作は途中なのね。
なかなか複雑な構造。
本作の中核を成す密室トリックもそうだが、過去と現在の人間関係も入り組んでいる。
過去と現在を交互に展開する構造は、綾辻行人の「水車館の殺人」でも見られる。この手の多くの場合、何かしらのトリックが仕掛けられていることが多いので、身構えていたのだけれど、なるほど、やはりそうきたか…。
メディア映えしそうな作品だなということと、作品自体のページ数が少なく、非常にコンパクトにまとめられている。他のシリーズも見てみようかな…。 -
今のところ読んだ月原さんの作品では、これが一番好きかも。シズカさんとひよこさんのやり取り結構いい。
よくこんなシチュエーションと三重密室思いつくなぁと思うし、ある意味今までの中で登場人物と設定が一番シンプルだったので、理解しやすかったかな。 -
使用人探偵シズカシリーズ第3弾。
三重密室の中で発見された凍りついた死体。シズカは三年前に似た事件があったというが‥
過去と現在を交互に描く構成で、正直混乱した。が、それも著者の狙いだろう。
ギロチンが仕込まれた扉に人間が入り、扉を開けるとギロチンで死亡するという”人間鍵”というのがインパクトがすごいが、独特の世界観というか美学についていけず、個人的には盛り上がりなく読み終わってしまった。このシリーズ、内容のわりにあっさりしすぎかも。 -
現在と過去が交互に語られる展開ですが、どちらが現在で過去なのか分かり難くてストレスが溜まります。
また、この二重構成がうまく活かされていない印象で、過去の事件だけに絞った方がより良いものになったのではないかと感じてしまいます。 -
館もののミステリーは大好きなので本屋で見て即買い。
使用人探偵シリーズの3作目ですが、そんなに繋がりはないので単発で読んでも大丈夫。
今作、とにかく館の見取り図が欲しかった!
おそらくトリックに直接関わるから載せてないのでしょうが、結構移動もあって複雑なので自分で見取り図を書こうかと思いました笑
2つの時代を交互に行き来しながらお話が進むので、分厚くないけど結構頭使う満足感はあります。
賛否ある作品ですがわたしは好きです。
前作読みましたが使用人のシズカさんは一体何者なのか、、、
気になるので続編も出たら読もうと思います。