九龍城の殺人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101802497

作品紹介・あらすじ

母は殺された。幾つもの謎を残して―― 死んだ母のルーツ香港に、私は向かった。裏社会の長である祖母に遺骨を渡すために――。同世代の二人の香港女子に出会い、徐々に知らされる光と闇。暗黒市場に欲望が渦巻き、 女だけが入れる城が謎を孕む。富と貧困を支配する九龍城の奥で、異様な連続殺人の幕が開く……。残された麻雀牌、切り取られた指。謎の血手形が意味するものとは。忌まわしき真相とは。本格ミステリーの傑作。

感想・レビュー・書評

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  •  今回は万能家政婦のシズカさんは出てこないのねと思ってしまった(笑)

     母を殺された新垣風は、これまであったことがない香港に住んでいる祖母から連絡を受け、生まれて初めての海外旅行へ。
     
     そこで出会った二人の友人。そのうちの一人が九龍城へ身売りしに行ってしまった。彼女を取り返すために九龍城へ向かう風。そこで裏社会で人身売買をしているトップの死体を見つけてしまい……。

     面白かったですが、もう香港にはあの場所はないのだなぁと思うとしみじみ~。

  • 殺された母のルーツである香港へ、娘・新垣風(あらがきふう・作中ではフー)は旅立った。裏社会の長である祖母に母の遺骨を渡すために──。香港社会の光と闇。風は富と貧困を統べる九龍城の奥で謎と殺人事件に挑むことになる。

    1980年代の香港と九龍城が舞台のミステリ。読むにあたって九龍城の動画を改めて見てみたけれど、まさに魔境という名に相応しい場所だった。建て増しされて膨れ上がった住居群と迷宮のような内部構造が歪ながらも美しい。度重なる戦争や、国同士の駆け引きから法の手が届かない場所となり、住む人々もまた抜け出せない貧困の迷路にあえいでいる。

    ミステリとしても読ませる作品ながら、核となるテーマはこの貧困が支配する世界で生き抜いていく少女たちを描き出す物語だった。女しか入れない非合法組織「風姫(フォンジュン)」や、「城」と呼ばれる少女の人身売買組織という闇の世界。貧困の上に立つ組織を相手取り、日本育ちのフー、風姫所属のシャクティ、貧困に苦しむ人々に教えを説くホンファの三人組が活躍するシスターフッドストーリーとして読み応えあり。巨悪がはびこるこの世界を壊せるのか?!

    母を殺したのは誰か?その真相をたどる香港への旅と聞くと、シェンムーを彷彿とさせるものがある。異国冒険譚としてのムードも満載。そこに、切り取られた一本の指、残された麻雀牌、血の手形といった謎が絡んでくる。殺人事件だけではないミステリの仕掛けもたくさんあって驚かされた。月原先生の作品ではこの物語が一番好き。殺人事件をいかに解くかが読みたい人には物足りないと思うけれど、人間ドラマとして面白かった。アニメ映画とかネトフリでアニメ配信したら合いそうな雰囲気がある。

  • 好きな世界観!閉鎖的で雑多な闇の深い舞台。
    (九龍城についてあんまり知らなかったけど、すごいところだったんだな・・・)

    エンタメ色が強くてサラッと読めた。
    キャラクターも魅力的。アニメ化とかできそう?な感じかな。


    「人が、人を、人だと思わない。そんな社会なら壊すしかない。いつか、あなたもわたしと同じ選択をする時がくる――。」

  • 月原渉『九龍城の殺人』新潮文庫。

    魔都香港を舞台にした暗黒ミステリー冒険小説。

    この調子で活劇が続くのかと期待すれば、それは一瞬にして終わり、似たような展開が何度か描かれる。途中、しつこく同じような描写が繰り返され、少し厭きるが、終盤の意外な展開とミステリーの謎解きは面白い。

    多くの謎を残したまま殺害された母親の遺骨を裏社会の風姫(フォンジェン)の長と呼ばれる祖母の雪麗(シェリー)に渡すために香港に向かった新垣風(フー)は、空港に迎えに来た同世代の風姫のシャクティ・サマンサと知り合う。

    友人のホンファとシャクティを救うために富と貧困を支配する女性だけの九龍城に侵入した風は異様な連続殺人事件に巻き込まれる。

    本体価格710円
    ★★★★

  • 3人の女性達のシスターフッドもの。今はなき香港の九龍城や裏社会を舞台に派手な展開や個性的なキャラが出てくるのは、漫画的で面白い。
    ただ、本格ミステリと呼ぶのであれば、メイントリックのひとつが、最近読んだ同じ作者の作と類似しており、あれ見たことあるな、、、またこれか、、、と感じてしまいました。隠された真相やジェットコースター的展開も少し置いてきぼり感がありました。ハードボイルドとしては、面白い小説ではあるのですが。

  • 死んだ母のルーツである香港にやってきたフー。裏社会のボスである祖母や親戚のシャクティ、その友人のホンファと出会い、巻き込まれる殺人事件。

    香港行ったことないけど、すごく行ってみたくなった。ミステリ的には結構あっという間に終わってしまって、どちらかというとアクション感が強い作品だったけど、街の雰囲気や歴史などが深く感じられたかな。

  • 『使用人探偵シズカ』シリーズの続編に見えますが、実は違う完全新作の長編です。
    最初から違うって知っていたけれど、表紙とタイトルで「もしかしたら…!?」と思ってしまいました。

    前作などに比べると、ミステリ色はそこまで強くなかった印象です。もしかしたらアクションなどの要素が強かったなど、沢山あるのでそう感じてしまっただけかもしれませんが…:( ;´꒳`;)

    80年代の香港が舞台で、かなり闇が深い設定で自分の想像を遥かに超える世界のお話でした。
    でも、九龍城の闇を読むのはかなり楽しかったです。
    前半は殺人事件が起きるまで、この舞台設定がどうやって関わっていくのかワクワクしながら読めました。

    嫌いでは無いし、しっかり面白かったのですが特殊な舞台設定もあり、上手く物語に入り込めないまま終わってしまいました。また機会を見つけて読みたいです。

  • 真実の部分がちょっとぎゅっとなってる気がした。
    でも思ったよりライトでサクッと読めたので、面白い。
    三人が友人として思い合ってるのが、美しいなぁ。

  • 私的にはこの著者の中で一番面白かった作品がこれかな?

    前半は、主人公や香港で出会った人たちとのやりとりになっていて、後半から一気に急展開がくるといった構成になっています。

    正直読むまでは、暗黒街を舞台としているので、結構重めな内容かなと思ったけど、想像していたよりかは軽かったです。
    (ホンファの過去が重いかもしれない…)

    ファンタジーとミステリーが上手く混在しているのでそこまで内容は難しくは無くて面白かったです。

  • 殺された母の遺骨を祖母に届けるために香港に行った”私”は、香港にいるときいた父を探そうとする。そんな中知り合った同年代の女子と親しくなるが、その一人が女だけは入れるという魔窟「九龍城」に向かったことを知り、救い出そうと後を追うことに…
    返還前の香港の闇が深くて圧倒される。密室殺人のおどろおどろしさより、その中で必死に生きる少女たちが心に残る話だった。

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