気狂いピエロ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102401910

作品紹介・あらすじ

真夜中をとうに過ぎた。やつらがここに到着するまで二時間はかかるだろう。おれはキッチンテーブルの椅子にすわって、ノートに文章をしたためる。アリーというたぐいなき魅力を秘めた娘との出会い、見知らぬ男の死体、白いジャガー、逃亡の旅、そしてオートマティック拳銃――。一人の男の妄執を描き、トリュフォーに愛されゴダール映画永遠の名作の原作となった、犯罪ノワールの金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 積読本消化。

    本棚の2つ前の「月と六ペンス」で書きましたが、そのとき本屋で葛藤して買った3冊のうちの1冊。

    ジャン=リュック・ゴダール監督の代表的名作の原作だそうです。

    中年男がベビーシッターの少女と出会ったことで転落していく物語。

    犯罪ノワールの金字塔、とは書いてあるがそれほどでもないと思う。

    わりと淡泊にテンポよく話は進む。

    映画の方も観たことはないが、ずいぶん後半は原作と違う。原作の終わり方の方が好きかな。

    一昔前のフランス映画にありがちなポップで軽いBGM
    「パーパカ、パーパカ、パッパッ、パッパーパパパパパッ♪」
    って感じの曲がずっと脳内で流れていた。

    こんなに暗さのないノワールってのも珍しいかも。


    あ、関係ないんだけど、本に紐が付いているのがありますよね。
    なんて呼ぶのか知らないけど栞として使うあの紐。
    この文庫にも付いていたんですが、紐が挟まっているページにくるまでまったく気づかずに普通に紙の栞を使っていて、なんか損した感。
    いや、何も損はしてないんですがね(笑)
    ほら「今月の新刊」みたいなペラペラな広告が挟まってることがあるじゃないですか。
    できれば栞の紐はそこに一緒に挟んでおいてほしいな~と。
    それなら気がつく。
    まあ、本を買ったときに上から見ればわかるだろうって話ではありますが、本の上や下ってあんまり見ないんですよね~。

    • 1Q84O1さん
      割り箸の袋もいいですよ!
      割り箸の袋もいいですよ!
      2023/07/20
    • おびのりさん
      悪いことは言わない。江國さんは、無理だと思う。
      悪いことは言わない。江國さんは、無理だと思う。
      2023/07/20
    • 土瓶さん
      うむ。( ˘•ω•˘ )
      タイトルのつけかたがおもしろいのでうっかり手に取りそうになるんよ。
      「号泣する準備はできていた」とか。
      「泳...
      うむ。( ˘•ω•˘ )
      タイトルのつけかたがおもしろいのでうっかり手に取りそうになるんよ。
      「号泣する準備はできていた」とか。
      「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」とかね。
      2023/07/20
  • TOP - 映画「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」公式サイト | 2022年4月より全国順次ロードショー
    http://katte-pierrot.2022.onlyhearts.co.jp

    ライオネル・ホワイト、矢口誠/訳 『気狂いピエロ』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/240191/

  •  ファム・ファタール(運命の女)と言うには、あまりに少女過ぎるが、本質的には奔放な魅力で男たちを操るエゴイストなヒロイン。彼女に対する原題通りのObsession(妄執・執着)を抱えて、破滅への道をまっしぐらに進む主人公を、かの映画作品では、ジャン・ポール・ベルモンドが演じた。30代。酔いどれ。性と悪の暴走まっしぐらの、青春と言うには幼すぎたり遅すぎたりする女と男の、ホンキートンクな愛の道行き。

     罪を恐れず暗黒界の大物までをも翻弄しようとする怖さ知らずの自由なヒロインと、大人としての人生をしくじり破天荒な道を辿ろうとしている語り手の主人公。この二人があることから手に入れた地に足のつかない賭け金。それは、彼らの足跡に血と復讐の置き土産をくっきりと遺す。愚かな青春。愚かな肉欲。愚かな執着。

     ゴダールの映画の中で最も強烈なインパクトを遺した『気狂いピエロ』であるが、今、この段になってその原作が邦訳されるとは、まるで夢のようである。あの赤や黄色や青の原色が強烈だった伝説的前衛シネマが、過去の時代とともに蘇る。ベルモンドの名を映画史に刻んだ、人を食ったような映画の結末は、原作とどう違うのか。あの奇妙な後味は? それは本作で確認して頂くとして、それにも増して眼と心とを引っ張ってゆく物語力は壮絶であった。そう。掛け値なしのノワールであったのだ。

     昨秋亡くなったベルモンドという役者の栄誉を称えるかのように、同じくゴダールによる『勝手にしやがれ』ともども古いフィルムがデジタル化され、劇場での二本立て公開上映されているそうである。ベルモンドもゴダールも共に代表とする名画の二本立てとは何とも贅沢な話題!

     さて、本書。半世紀前の作品とは言え、人間を作る感情・欲望・愚かさなどは、今も昔も寸分も変わらない。人間の心、青春の抑圧されたエネルギー、それらをもたらす環境等々、今の時代もそれらは前に進むことなく、人間の限界点を予感させつつ、敢え無く暴走する負のエネルギーとなって常に心の裏側に潜んでいる。その負のエネルギーが、人間の弱さを捉える落とし穴のような瞬間を、誰にでもどこにでも何時でも、創り出して全く不思議はない。

     小説は現実を写し、映画はまたそれを拡散する。人間の逃れようのない弱さと愚かさ。そんな欲望にまみれた悲しい現実を。

     本書も映画も、人生の示唆に富んでいるわけでもなく説教じみたものでもない、破滅のブルースしか、この作品にはあり得ない。半世紀を経た今の世にこの小説を読んでも、さほどの古さは正直感じなかった。映像の鮮烈さに比して、とても暗いモノクロームの小説。金と犯罪と欲望と、その裏で微笑むファム・ファタル(宿命の女)。これぞノワールである。掛け値なしの。

  • 堕ちていってるのに楽しそう。楽しそうに堕ちる。

  • 必読書であるとの推奨はかなり困難な出来ですが後世のサスペンス小説や映画、テレビに与えた影響はかなり大きいでしょうね。主人公マッデンはたしかにマヌケだけど、彼が実は元海兵隊員という経歴が終盤になつて効いてきて思わず腑に落ちるのである。

  • 疾走感がすごい作品。
    展開が早くどこまでも突っ走る。

  • 【あらすじ】
     失業中のシナリオライターコンラッド(コン)は妻マータと二人の子供に見向きもされず、上手くいかない求職活動に打ちひしがれている。気晴らしにと連れ出されたパーティーの帰り、少女のようにも見えるが美しく独特の色気を垣間見せるベビーシッター・アリーを家まで送って行き、泥酔して一晩を過ごす。

     翌日、部屋に見知らぬ男の死体を見つける。そこに貸した車を取りに来た友人ネッドが死体を見つけてしまう。アリーに急かされるまま友人を気絶させ、死体の男が持っていたという大金を手に二人はセックスを背活の中心とした逃走を始める。

     アリーの殺した男はギャングの一員で奪ってきた金はその上納先のボスのものだった。追っ手を交わすため新婚夫婦を偽装してホテルから、アパートメントへと移動し、コンは莫大な資産を持っていることを匂わせながら移動先で地位を築き上げようとするがアリーの拒絶にあって失敗。

     更に移動を続け、落ち着いた先で追っての一味と出くわしてしまう。アリーはその男を殺害し、入れ替わるようにコンはボス・ブラッドマーと手下に捕まり激しい拷問の末に命からがら脱出。完全に消息を経ったアリーの居場所を見失ったコンだが、金を工面してくれる兄がいるラスベガスにいるとの話から検討をつけ移動。カジノで再会を果たす。

     また情熱的なセックスを交わし、アリーの兄だというジョエルと面会。カジノで働き現金輸送の仕事をするジョエルは、自分を襲撃するように見せかけコンに金を運ばせ、アリーにそれを中継させる、という金儲けの話を持ち込む。これを承諾したコンは実行の当日、アリーとジョエルに利用され警察に捕まってしまう。しかひ、依頼人不明の弁護士がコンを保釈。これがブラッドマーの手によるものと寸でで気付いたコンは逃走。滞在していた部屋に戻り、以前に儲け話をしめ、落ち合う先でもあったジョエルのランチハウスの位置を、ジョエルの口にした無線番号から無線の所在地と番号の申請者を通信委員会に電話で確認し、郡丁の郡書記に電話で判事を装って確認。日が暮れ、目の前の家から荷物を出していた引っ越し業者の車のナンバーがジョエルの所在住所に近いことを発見。荷物に紛れ込んで目的地に近づき脱出。レンタカーをチャーターし、遂にランチハウスを発見。

     ジョエルの首を絞めて殺害した後、アリーとまた情熱的セックスをして、絶頂の最中に首を絞めて殺す。無線でつながった男に警察を呼ぶよう依頼し、事の顛末をノートパッドに書き留めていた。

    【感想】
     ー堕ち生きるー

     獣は夢を見ない。獣は過去も未来も持っていない。自分の欲望以上に大切な他の一切のものも持っていない。いや、家族をもっている獣はそうではないかもしれないけれど。じゃあ、わたしが出会ったこの人物たちを一体なんと呼べばいいのだろう?悪魔か夢遊病者か鬼か。

     仕事が見つからない、家庭内不和、不倫。別に特別でもない不幸や不実のなかを生きていたコンは、その“向こう側”の世界に住んでいる、人の形をした獣に魅了されてしまう。触れてしまったが最期、瞬に瓦解した日常の破片を踏みしめて、「逃げる=生きる」のレースへと駆り立てたてられる。超えてはならない線が、薄皮一枚隔ててわたしたちの誰にでもあることが、引きずり込まれていく彼を見ていて気づかされる。

     その地獄にいきる獣たちは、生きることを体現するかのようにセックスをし、飢えを癒し、眠りにつく。それら生きることの他にはなんの興味もない。金がなくなれば金を手に入れることを考え、生きるため以外のことはしない。アリーの開放的で率直な生き方には、現実のしがらみを生きるわたしにとって爽快なものに映る。美しい女性が無機質な食べ物(例えば菓子類、ケーキ)およそ滋味とか栄養とかとは関係のないものを口にしているのがどうしても魅力的に見えて仕方ないのはなぜだろう。決まった時間に食事をするでなく、本能のままに腹が減れば、そのとき一番食べたいものを食べる。眠たい時には眠る。なんだか余計な雑念がなくって悟ってるみたいだ。財産も名誉もなにも必要としちゃいない。執着もしていない。

     コンは文字通り堕ちていく。世間一般の人が上へ上へと続く階段を上を見ながら昇っていくのに、彼は一段ずつ降りていくようなイメージだ。そのうち灯りすらなくなって先は真っ暗になっていく。降りた先から今足を離した上のだんをはぼろっと崩れて消えていく。堕ちていく。まだ良心や、許されたか弱さを持ち合わせながらも、彼は否応なく獣の法則のなかに身を沈めていく。

     コンがマイアミからラスベガスで、ラスベガスからロサンゼルスのランチハウスで「やあアリー」と、それはもう不死鳥のごとくアリーのもとへと舞い戻ってくるのが狂気と愛の薄氷に立っているような痛快感を催させる。アリーは「あら、コンじゃない」と受け入れる。最初は、ギャングに拷問を受け満身創痍、音信不通の状態から。次は、警察に捕縛、包囲網の中からはるかに離れた砂漠の所在地も曖昧、騙してはめた状態から。コンは堕ちて堕ちて「人間を止めてしまった」みたい。でも彼の常軌を逸した執念が強運を呼び寄せているのだろうと思えるほど、彼を襲った不運と幸運があながちフィクションに感じられらないところに、しっかりと書き込んでいくことが出来ていると感じた。

     それでもコンはアリーを愛し、アリーの愛を得ようともがくところもあった。繊細に嫉妬して見たり、懐疑的に彼女を眺めたりする。貞操観念はゼロだし、そもそも特定の男を必要としてすらいない。そのときどきに必要に応じた相手があり、セックスがある。まるで吹いてくる風のように必然的な生き方のアリーに呼応するように、コンも彼女の愛し方で彼女を愛した。故のラストだと思う。

     また、折に触れて、コンがいかに、自分の考え方、自分という生き物が変わって来たのかを述懐するのが面白く読めた。ほとんど叫び出したいくらいにそこから逃げたい現実を生きてる人はたくさんいると思う。今、この瞬間にも。その私たちが嫉妬に燃えるような一言を彼はこの物語の最後に語る。
     “なぜか恐怖も後悔も感じていない。記憶にある限り、おれはこの数年ではじめて、自分自身いやましさを感じていない”
     彼は幸福だ。彼の立ってるところにわたしも行けたらなとはっとする。後ろにそっと立っている私自身の妄執がこちらをじっとみている。

  • 映画は見てない
    もう見なくていい
    なんせ勝手に脳内で再生したからな

    最初からぶっとばしてて
    お、読みやすいなぁって集中してたら
    読むのフツースピードの自分が
    3時間ほどで読み終わったんだから
    好みにあったんだろう

    全然肩入れしたくなるキャラいないんだけど
    みんなキャラたってて好き
    たぶん、いや絶対違うだろうけど
    個人的にはブラックユーモア
    最後、脳内エンドロールは
    めちゃくちゃ陽気な曲流れたし
    バカばっかやないかw
    ってニヤけるラストだった

    ニヤニヤしながら余韻に浸ったし
    なによりすごく読みやすかったし
    訳がよかったのかな
    星は4つ

  • 自分は何も悪事に手を染めていないと思いながら周りに振り回されてアメリカを転々とするマッデン。

    映画との対比をするととても面白い。ゴダールは天才だと改めて認識した。あとがきは必読。

  • 人生いつ、どのように転がるかわからない。まさに狂ってる。うまくいっていない時ほど判断力は鈍るものなのだと、改めて思う。

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