黒澤明封印された十年

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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103039327

感想・レビュー・書評

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  • 著者の大学生活と映画評論の始まりと黒澤監督の最も辛い時代(映画の斜陽化とテレビの隆盛という表現媒体の勢力の大きな変化を背景として)1965年から1975年までをキネマ旬報(白井編集長)や熊井啓監督との交流を交えて描く。
    アメリカでの挫折(「トラ!トラ!トラ!」「暴走機関車」)の背景や原因分析、ソ連での過酷な撮影状況と復活(「デルスウザーラ」)の経緯も描かれる。
    テアトル新宿での偶然の黒澤監督との出会いやビール談義は、自殺未遂の1年後でのインタビューとして貴重な記録。
    熊井啓監督が黒澤監督を尊敬していて様々に影響された点を記されていて、本書は熊井啓監督に捧げられている。

  • 非常に面白い。1965年から1975年の10年間の黒澤明を追っているのだが、そのエピソードや分析も面白いが、学生から映画評論家に巣立つ筆者自身の、そしてそこに絡む映画界の人物や父親(フランスで禅を普及させた弟子丸泰仙)などが織りなす10年も当時の世評をぐっと掴んでいる。重ねて非常に読ませる本でした。折から、三船敏郎と石原裕次郎が競演する「黒部の太陽」(1968年公開)がNHKBSで放映される。こちらも楽しもうと思う。

  • 今の監督のほぼすべて多少なりともお手本にされるという黒澤明の秘密。具体的に書かれてある。

  • 筆者はこれまでも多くの黒澤研究書をものしていてだぶる記述も多いが、ここでは学生運動・反体制運動が煮詰まって破綻するのを横目で見ながら、当時一般に「権威」と見なされて批判の対象となっていた黒澤に傾倒していく筆者自身の個人史が平行して描かれる。同じ年に早稲田を卒業した村上春樹が「ノルウェイの森」で描いた学生運動の欺瞞性ともつながってくるし、筆者の父親が弟子丸泰仙というのも初めて知った。

  • (図)

  • 1965年の「赤ひげ」から「デルス・ウザーラ」までの十年間の巨匠の紆余曲折と、著者自身の青春、そして、巨匠に大きな影響を受けたもう一人の映画監督の姿が描かれます。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家、映画評論家、音楽評論家。1951年佐賀市生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科を卒業後、「キネマ旬報」パリ駐在員。帰国後、映像ディレクターとしてビデオ作品を演出。1985年から古湯映画祭(佐賀市富士町)の総合ディレクターを務め、その功績により「佐賀新聞文化奨励賞」を受賞。現在佐賀大学で教鞭をとる。佐賀新聞のコラム「シネマトーク」は45年目を超え、新聞単独連載の記録を更新中。2010年、モスクワ国際映画祭の「黒澤明シンポジウム」に招待され、日本代表として講演を行った。著作は『黒澤明 音と映像』(立風書房)、『シネマ・ミーツ・クラシック』(音楽之友社)、『映画でクラシック!』『殉愛 原節子と小津安二郎』(共に新潮社)、『巨匠たちの映画術』(キネマ旬報社)、『輝け!キネマ 巨匠と名優はかくして燃えた』(ちくま文庫)、『君は「七人の侍」を見たか?』(ヒカルランド)他多数。

「2023年 『北の前奏曲 早坂文雄と伊福部昭の青春』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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