電子書籍奮戦記

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103284116

作品紹介・あらすじ

黎明期から二〇年近く地道に電子出版に携わってきた「Mr.電子書籍」が、その過去から未来までを自らの軌跡と共に縦横無尽に語る。儲からなくても「やめようと思ったことは一度もない」と断言し、大企業の寡占に異を唱える刺激的なメッセージを掲げ目指す新たな「出版」の形とは?現状分析にも役立つビジネスノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 誰にもヒーローやヒロインがいると思う。
    僕にとっての萩野さんは、数少ないヒーローの一人だ。
    高校生の頃Macintoshに出会い、やがてExpanded Bookに出会って、ほんとコンピューターを読むようになり、気がつけばT-Timeもエキスパンドブックビルダーも買っていた。Mac Expoではエキスパンドブック横丁に通った。萩野さんがボイジャージャパンを興された頃から、多分、ずっと追っかけのようなことを、小さく静かに続けてきた。
    あれからもう随分たって、気がついたら、マガジン航に時々寄稿させてもらうようになった。ようやく、ちょっとだけ、追いついてきたのだ。
    電子書籍奮戦記は、萩野さんのこの20年ほどの、文字通り奮戦記だ。金儲けでなく、小さなものが声を発するためのメディアとしての電子書籍に取り組み続けた、萩野さんの熱い、熱い声だ。
    萩野さんの文章は面白い。語り口は丁寧なのだが、語っている内容は常に熱い。革命者のそれなのだ。フロンティアを駆けるものの、道なき草原を走るもののそれなのだ。嘘のない文章を、読んでいるとだんだんと勇気づけられる。元気になる。僕にも何かできるのではないかと信じられるように思う。
    電子書籍に興味のある方は是非読んで欲しい。そして書籍に携わる仕事をしている人には、必読の書だ。退けることなく、読むべし。

  • Mr.電子書籍の異名をとる、萩野正昭氏による文字通りの奮戦記。ジャーナリストの視点ではなく、実業として電子書籍に取り組んできた方によるノンフィクションだけに、全編を通して臨場感や必死さが溢れ出ている。おそらく著者にとって今年は、1992年にボイジャー・ジャパン(現・ボイジャー)へ転職して以来、「今年こそ!」と思い続けた”19回目の電子書籍元年”ではないだろうか。そんな愛憎入り交じる著者の思いは、下記の一文に集約される。「お前らに電子書籍の一体何がわかるのか。」

    ◆自分の視点を持つことの重要性
    冒頭、同時多発テロの際、崩壊するビルではなく、その瞬間を見る市民の表情を写した写真の話を題材に、自分の視点を持つことの大切さを訴える。著者自身、レーザーディスクの可能性を模索しているうちに、電子書籍の原型を見い出したという経験を持つ。そこへ導いた独自の視点とは、レーザーディスクを”見る側が時間をコントロールできるメディア”と見立てたこと。出版社の人でもなく、ハード機器メーカーの人でもない著者が、電子書籍の道を切り拓いてこれた要因はここにある。

    ◆著者の主張する電子書籍の理念
    ・必要性が本を生み出す
    電子書籍によって、売れない本でも出せるということは、ある人々にとっては切実な「必要性」をすくいとる力をもっている。本来電子書籍とは、小さなものののためのメディアである。
    ・「本」ではなく「読む」を送る
    言葉を一定の形式に固定して残すことが本の役割。しかし電子書籍の場合、「読む」ということだけに拘り、形は読み手が再構築できるようにすることが、新しい価値を生み出す。

    電子出版を文化として育んでいくためには、最先端の技術に翻弄されたり、巨大プラットフォームによる囲い込みに屈したりせず、「残す」という課題と向き合うことが一番大切なことである。
    そんな著者の理念こそ、残していかなければならない。

  • 荻野さんは何事にも本気に一途にトライしてきた人
    法学部を出ながら東映の映画作りに加わり
    パイオニアでレーザーディスクに関わり
    アメリカのボブスタインと気が合い
    彼が持つボイジャー社と出会って
    ニホン社を起こすことに発展する

    それ以後の20年というもの
    電子書籍という媒体を使うことで
    広く細かく発言を汲み取ることに携わってきたし
    本を機械的に音声化することで聴覚障害者へと
    本という媒体を広げてきた
    早さを調節できて無感情で読み上げることで
    文字そのままを色の付かない状態で提供できる
    又webにつなぐことで本の裏側にある膨大な資料や
    歴史にワンクリックでリンクすることができる

    現状ではドットブックという日本語用の
    電子書籍のフォーマット形式に
    閲覧ソフトのT-Timeを開発している
    こらは電子書籍フォーマットの本命であるEPUBとも
    相性が良いらしい

    兎も角荻野さんは視野の広い信頼の置ける人物のようである

  • 2012年初の読了した本。電子書籍についていろいろ知りたくて手にとった本ですが、よかったです。おもしろかった。
    中にかかれてある文書で気に入った文書を転記しておきます。
    『もし電子書籍なるものがオン・スクリーンで読めるとか、デバイスに100冊納まるとかだけにとどまるならば、一体何の意味を持つだろう。紙の本のままで十分ではないか。書き手がいて出版社があって、印刷所があり書店があり図書館がある、ただ、そうした仕組みにおいてなお育むことができない出版があり、これもまた伸ばすべきものであるならば、電子出版には存在理由がある。かすかだが試みて値する希望がある』

  • 朝霞図書館
    2011/09/01

  • ボイジャ社の荻野さんの本。先週の「国際ブックフェア」のセミナ​ーでも話を聞きました。電子書籍に長期間取り組んできた経緯を述​べています。根底の考えは、「電子書籍=本は、少数派が意見発信​できるメディア。将来に内容を残すのがつとめ」という考えのよう​です。でも、本当は紆余曲折を経てそこに到達したと考えるべきか​もしれません。 ハードメーカに対しては、「わかっていない」と批判的です。

  • ボイジャーの社歴というか、、、、そうなんだろうと思うけど、私が欲していた内容ではなかった。

  • ボイジャーの萩野さんの著作。90年代前半のCD-ROMの時代から近くて遠い存在としてお名前を聞いていたが、ようやく同じフィールドにたった。エクスパンドブックから今に至るまでのボイジャーの歴史と萩野さんの思いに触れられる。

  • 浜野保樹 極端に短いインターネットの歴史
    津野海太郎 小さなメディアの必要
    清水徹 書物について
     書物とは、1,記号が何らかの支えの上にあり、2,時間が経過しても、ほぼ同じ意味内容が発信される装置、つまり時間の支配から免れている、いわば時間を征服した装置である。

  • 2011 2/28パワー・ブラウジング。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。
    ボイジャー・ジャパンの歴史と背景にある考えがわかる本。映画・映像コンテンツやレーザーディスクとの絡みがあったのか…少し意外。
    タイトルには奮戦記、とあるが基本、苦戦の連続で最近光明が見えてきた、といった感じか。大手が幾度も敗退している中、生き残ってきたという事実が凄いとも言えそう。

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著者プロフィール

1992年ボイジャー創業以来、一貫して電子出版に関わり、小さなメディアとしての出版を追求している。
1946年東京都生まれ。1970年から東映教育映画部、その後1981年からレーザーディスク制作・企画、1990年パイオニアLDC取締役映画製作部長として映画のビジネス展開に従事する。1992年ボイジャー・ジャパンを設立。2013年ボイジャー代表取締役を退任、現在は取締役。

「2022年 『電子出版とは何かを問い続けて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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