- Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103516101
作品紹介・あらすじ
私はこの失敗作と再び向き合わねばならない。達人が切り拓く新しい恋愛小説。駆出しの作家だった頃の私が取り組み、完成できなかったノンフィクション。それは、ある忘れられた柔道家の型破りな半生を追ったものだった。だが、彼に寄り添う女、高校時代の恩師など、取材を進める毎にその実像はぼやけていく。一方、本人と私の間には感情のさざ波が立ち始め――相対する二つの魂の闘争と交歓を描く。
感想・レビュー・書評
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髙木のぶ子さん2作目です。わりと軽めに書かれた「明日香さんの霊異記」とはまた作風が異なり、心情をじっくり書いた作品でした。
柔道小説の様な題名と装丁ですが、触れるようで触れない、近づいたと思ったら遠く離れている…そんな、もどかしい程の恋愛小説でした。
伝説の柔道家「ハラショウ」の半生を書くため、駆け出しの女流作家が本人や回りの人々に取材を重ねて行きますが、取材を進める程、本人の実像は曖昧になって、彼女の手からすり抜けて行きます…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハラショウと呼ばれる羽良勝利、以前に柔道で一度だけ日本一になったことがあり、作家の私は彼のドキュメンタリーを書こうとインタビューを試みるところから話が始まるが、彼は現在「夢道場」で子供たちに柔道を教えている.彼の行きつけは「はらしょう」、康子という女性が切り盛りしている.高校時代の彼を調べる中で、柔道部の先生だった松本鈞に会う.彼の家で話を聞くが妻は死んだ由.遺影は康子だった.道場をすっぽかして「海鮮どんぶり」で働くハラショウ.そこで三郎や春子からハラショウの生い立ちを聞く.高校を尋ねたからか、校長はハラショウの銅像を建てると言い募る.高校を私と訪れたハラショウは演壇で松本鈞に腕挫十字固めをかける.私はドキュメンタリーを完成できなかったが、後年康子が草稿を所望する.第8章 金次郎返し で中学時代のハラショウの行動が露になるが、彼自身特異な生い立ちを全うしたともいえるものの、私がどこまで掘り下げて行けたのか.面白い展開だった.