希望のゆくえ

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103531913

作品紹介・あらすじ

突然、失踪した弟。あいつの真実の姿に、僕は辿り着くことができるのだろうか……。弟が放火犯の疑いがある女と姿を消したらしいと、母から連絡があった。僕は彼と交流があった人物に会いに行ったが、弟の印象はそれぞれまるで異なっていた―。弟はどういう人間だったのか。誰のために生きてきたのか。僕たちの声は、弟に届くのだろうか。人生の「希望」とは何かを問う、話題の作家が拓く新境地。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって数日経って、可もなく不可もなくといった感想。自分はどんな人間なのか、自分の一番近くにいるはずの家族がどんな人間なのか。理解できているかと問われれば難しい。分かったつもりになっているだけかもしれない。他人の望むことばかり追い求めていたら、自分という人間はどこかに埋没してしまう。

  • 人は多面的で、黒か白かで表せるものではない。
    一言で、その人となりを表せる人なんていないのだ。
    誠実な人、性格悪い人、優しい人…とカテゴライズしてしまうとそのカテゴリーから外れると混乱する。本人からしたら勝手にカテゴライズされていただけなので迷惑な話だ。

    希望は今後どうなっていくのだろうか。
    誠実は希望をどう見ていたのだろうか。
    内容はすばらしいものの、迷子のまま終わってしまった感がある。

  • まさか人探しとは⁈不思議な空気感。「悲しみや苦しみを抱えて生きた者こそが美しい真珠を生み出せる」「弟に対する全員の印象がバラバラなのは、それぞれが自分の見たいものを投影してたからじゃないか」結局、弟はどこへ旅立ったんだろう。

  • 人って、多面的だし、どんな人なんて、はっきり言えない。ましてや、自分がどんな人なんて言える訳がない。登場人物すべてのマイナスの面を浮き彫りにした形のお話だけど、それは、逆にプラスと捉えられる。一気に読んだけど、読み終えてからの方がいろいろ考えさせられた。

  • この本を読んで何を感じているか感想が分からない。ただ、私も失踪したくなった。私の箱は、好きなものより、ガマンしてるものでイッパイになってる。イヤ、違う。好きでいっぱいの箱と我慢の箱と2つある。空虚感漂う物語を読んでたから、好きもいっぱいあるのを忘れてた。
    希望の容姿が美しくなければ、周りの人の希望に対する反応はどうだったんだろう。それとも希望の佇まいが彼を美しくしていたのだろうか?
    誠実の生き直しの物語かな?

  • 読みにくいことはないし、むしろスイスイと呼んでしまうし先が知りたいし、それぞれの人の希望の捉え方がさまざまで飽きずに読ませる。
    どの家庭にもありそうな不協和音ではあるが、みんな親に対して憎しみや諦念ばかりを抱いていてとてもやりきれない。幸せな人が一人も出てこない物語。リアル。

    むずかしい、という感想もあったけど確かにそうかも。自分の周りに希望のような人はいないし、希望の抱える生きにくさはちょっと難しすぎて共感しにくい。みかこせんせいくらいならわかるけど。

    映像化するなら希望の役は高橋一生の一択だな。

  • 章ごとに違う人物の目線から希望という人物について語られる小説。
    登場人物1人1人に希望からかけられて印象に残っている言葉があり、それが彼らにとっての救い・希望となっているように思った。
    兄は、思っていたことを押し殺し、むしろ反対の言動を取ることで、相手との関係に波を立てずにその場をやりすごす自分を弟に笑われたことを希望と自分との最も印象的なエピソードとしている。一見それは嫌な思い出のようであるが、実は相手に自分の本当の気持ちに気づいて欲しいと感じている誠実にとっては、それを言えない自分の嫌なところに気づいてかつ見ぬふりをしなかった希望は貴重な人物であったのではないかと考えた。
    希望の元彼は、他の誰にも打ち明けてない突拍子もないが考えるだけでワクワクする夢を希望にいいんじゃないと興味深そうに聞いてもらったことを大切に思っている。
    父の元から希望と逃げたくみ子は、父に罵られ、周りからも蔑まれてきたが、別れ際に希望からきれいだと言われ、その言葉は彼女の中にとって一生の宝物になる。
    希望の同僚は、何かに全力で取り組んだことがないということをコンプレックスに生きていたが、希望から人間みんな違うからそれはそれでいいと認めてもらったことを無意識に救いにしている。
    希望保育園の時の先生は、二人暮らしをしている母と折り合いが悪く悩んでいたが、嫌いだから一緒に住まない、大切だから一緒に住むというほど家族は単純でないと言われ、最後に希望からあなたは自由になれますと言われたことを噛みしめている。
    最後には当の希望は関わっていた人の元をさり、どこかへ旅立っていった。彼自身の希望も見つかってほしいと願いたくなる。

  • 新年1冊目は寺地はるなさんの作品。
    タイトルの通り、希望の行方を探しながら、希望がどんな人だったのか、そもそも何で探しているのか、探していくようなお話。
    色々な人の想像や理想の希望がいて、でももうそれでいいんじゃないかと思ってくる。
    ミステリアスに見えるけど、一人一人みんな希望と同じようなんだろうなと感じた。

  • 突然、弟が失踪した。探しながら弟の内面に触れてみたくなる。流されるように生きていく自分、誰もが自分に無いものを持っているように思えてくる。そういう自分を振り返りながら、真実の弟を知りたいと思う。なぜ希望(のぞむ)は全てを捨てたのか、もっと希望の視点のお話も読みたい。

  • 「希望のゆくえ」。
    読み終わった後に改めてタイトルを見て、ああ、なるほどなぁ。と思った。

    突然行方不明になった柳瀬希望と、希望に携わった人達の物語。全体的に物悲しいというか、ヒリヒリした空気が漂う一冊だった。
    私の「こうなりたい」「こう見られたい」という自分像って一体なんだろう。

    面白いという感想が合うのかは分からないけれど、とても面白かった。

    かなり前だけど「他の寺地作品とは雰囲気が全然違うけど、私は1番好きなんです」と、読書カフェの店員さんに薦めて頂いた本。
    確かにこの雰囲気の寺地さん作品とは印象が違うな。やっぱり寺地さん作品好きだ。

    ⚫自分は驚くほどなにも知らない。きっとみんなが若いうちから積んできたであろう人生経験も、知るべき人間関係のマナーも、存在すら気づかずに通り過ぎてきてしまった。でも空っぽであることは、これからいくらでも好きなもので好きなように満たせるということでもある

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

寺地はるなの作品

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