新中国人

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105327019

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  • 1980年代後半から1990年代前半にかけてニューヨークタイムズの記者として中国に駐在した記者二名の力の入った一作。この時代ほど2016年原題はひどくはないが、根本に流れる人の統治の仕方というのは変わっていないのだなと感じさせる。以下、記憶に残った所の抜粋。

    P5 中国はナショナリズムをかき立て、資金を軍事増強に投じつつある。日本人は今、1930年代の結末と同じ悲劇的結果がもたらされる危険性をはっきりと認識していないように思える。(1994年の時点でこういった感触を得ている事に驚く)

    P56 実は中国がヨーロッパの共産圏の国よりずっと成功している理由の一つは中国人の国外離散にある。華僑ビジネスマンは、現地の労働コストが上昇すると生産ラインや支援オフィスを祖国の生まれ故郷に移す傾向にあった。

    P75 中国の支配者にとって、歴史は常に学術的分析の対象というよりは、政権の合法性を築くための操り人形に過ぎなかった。共産党の指導者たちは、過去の皇帝達同様、多大な精力をつぎ込んで彼ら自身の歴史と神話を作り上げてきた。

    P90 1993年、”中国左翼主義の破滅”と称した、共産党の汚れた部分を熱情を込めて抉り出した本が刊行された。即座に発禁処分を受けたにもかかわらず、私営の書店などで広く売られ続けた。歴史を忘れれるテクニックはもはやそう効果的とは言えなくなった。(当時と比べると最も酷かった時代の原体験を保持している人が減ってきているなかで、若い人たちへどう影響していくかが気になる)

    P151 中国共産党が今日、ぎりぎり守ろうとしている一線はイデオロギーとか経済とかは関係なく、権力の保持こそがすべてである。1990年代における等の存在基盤は、国家を支配するという一点であり、その他すべては妥協可能というものだ。

    P169 共産党にゆさぶりをかけ、政権の座から追い立てようとしている中国人がますます増えてきている。だが、そうした動きを課題評価すべきではない。歴史によれば、衰退した王朝の崩壊に何世紀もかかることもあり得る。外国人は中国の新しい問題を指摘し、それらをやや大げさにとらえる傾向がある。汚職、宗教熱、大衆の懐疑主義などは、崩壊しつつあるの国の特徴ではなく、普通の国の現象に過ぎない。中国がいかなる実生活においても過度の無菌状態になったのは、毛沢東の異常な時代だけだった。

    P181 毛沢東時代、中国のありのままの現実を最も伝えていたリポートは、中国に入国許可されたジャーナリストが書いたものではなく、入国できずに香港で中国から逃げてくる難民の取材をしたジャーナリストたちが書いたものだった。

    P395 中国のような巨大国家がこれほどきゅげきに反映を遂げ、国際舞台で一挙に注目される存在になった例はないが、それに近いケースがある。その国は中国同様、誇るべき長い歴史と強い民族意識をもった国である。しかしその国は近隣諸国から袋だたきにあい、その領土も奪われた。その後、経済活動に力を注ぎ、軍事力の構築を始めた。近隣諸国の一部は心配したが、国際問題の専門家たちは嘲笑し、これほど経済一体化が進んでいる以上、戦争はどの国の利益にもそぐわないと懸念を一蹴した。その数年後、その国ドイツは力をバックに地域での発言力をますます主張するようになった。ようやく近隣諸国は力を行使し始め、その結果が第一次世界大戦となった。

    中国の活気に満ちた経済は軍事力を増強させ、その国境を越えて軍事力を展開する能力を持ちつつある。国境を接する12か国の半分と国境協定を結ぶ一方で、ロシア、インド、ブータン、ベトナムと国境紛争を抱え、領海を巡っては地域の大半の国と争っている。軍事および戦略分野で強まる力を使い、領土・領海紛争を有利に解決しようとするのは当然だろう。アメリカ・ロシアが兵力を削減し、アジア太平洋地域に空白が生じたのを中国が認識し、その空白を埋めようとしているのは理解できる。

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