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- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106004605
感想・レビュー・書評
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昭和30年代の「純愛」にまつわる規範と、それを受け入れるとともに支えることになった人びとの精神史に迫った本です。
著者は、1964年に刊行され、吉永小百合・浜田光夫主演で映画にもなった手記『愛と死をみつめて』や、石坂洋次郎の諸作品、三浦哲郎の『忍ぶ川』などの作品を検討し、さらには夏目漱石の『こころ』が教科書の中でどのように扱われたのかという切り口から、「純愛」という規範にいくらかの齟齬を感じながらも、さまざまな作品を通じて人びとがそうした規範を内面化していくプロセスを解明しています。
その一方で、「純愛」という規範への囚われから解放へと向かっていった「手記ブーム」の担い手たちの葛藤を詳細にたどりながら、ブームの掉尾をなす高野悦子の『二十歳の原点』が、共産主義革命といった別の規範を呼び寄せてしまったことに触れています。
日本におけるウーマン・リブの前史に相当する時代を生きた人びとの意識を、さまざまな実例を通して明らかにしているという点で、興味深く読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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