盗まれたフェルメール (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106005855

感想・レビュー・書評

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  • (2016.09.02読了)(2016.01.21購入)(2000.06.20・4刷)
    2016年8月24日、BSプレミアム午後9時からの「アナザーストーリー」は、「フェルメール盗難事件」がテーマでした。絵を見るのがすきなので興味深く見ました。
    テレビ番組を見た後、そういえば同じような題名の本を買ってあったのを思い出してこの機会に読んでみることにしました。
    題名にフェルメールとついていますが、フェルメールを餌にしながら美術品の窃盗事件について考察した本でした。それにしても、フェルメールの絵が狙われることは多いようです。
    テレビで扱われた事件は、第九章の「窃盗犯に悪運をもたらしたフェルメール」でした。
    有名絵画の盗難は、「自分だけで所有してみたいというコレクターに依頼されて」という推測が流布されているけれども、真偽のほどは不明、とのことです。
    実際にあるのは、有名美術品には保険金が掛けられているので、保険会社からお金を引き出す目的で、というものです。美術品が盗難にあうと保険会社は、美術品の所有者に多額の保険金を払うことになります。泥棒はそこに目をつけて、盗んだ美術品を返す代わりに保険会社から所有者に支払う金額より低い金額をせしめようとするのだそうです。保険会社は、所有者に支払う金額より安く済むので、取引に応じるのだそうです。
    他には、美術品を人質として、犯罪者の減刑を求めるケースもあるそうです。
    盗んだ美術品を闇市場で取引する場合は、有名作品では足がつきやすいので、あまり有名でない作品のほうがいいのだそうです。持ち出しやすさも考えると比較的小さいものがいいということです。
    盗んでゆくときは、額から外して、キャンバスから絵を切り取って丸めて持ってゆく場合もあるということで、その場合は、絵の具が結構剥がれ落ちて絵が損傷してしまいます。湿ったところに隠しておいて絵がかびてしまう場合もあるようです。そんな状態で見つかった場合には、絵の修復士の出番ということになります。修復の過程で、作家が製作した後にのちの時代の人の加筆が見つかり元の状態に戻す事が出来る場合もあります。
    絵を盗んだ後にわざと加筆して別の作品であるかのようにして売りさばこうとする場合もあるそうです。実にいろんなことがあるようです。

    【目次】
    第一章 空の額縁
    第二章 ガードナー夫人のフェルメール
    第三章 史上最大の美術品泥棒-ガードナー美術館事件
    第四章 現代の美術品窃盗を解剖する
    第五章 美術品はなぜ盗まれるのか
    第六章 義賊に盗まれた「恋文」
    第七章 アート・テロリズムの幕開け-「ギターを弾く女」の盗難
    第八章 女性アート・テロリスト「手紙を書く女と召使い」を盗む
    第九章 窃盗犯に悪運をもたらしたフェルメール
    第十章 暗礁に乗り上げたガードナー事件捜査
    第十一章 伝説的な美術品泥棒、返還交渉に乗り出す
    終章

    主要参考文献一覧
    あとがき

    ●盗難品リスト(85頁)
    アート・ロス・レジスターのコンピュータ・データベースには、現在約十万件の盗難品情報が入っている。作家別に言えば、ピカソが三百八十五点、シャガールが二百四十九点、ダリが百八十六点、さらにミロが二百七十六点、デューラー百四十四点、ルノワールが百二十五点、などが上位につけている。
    ●新作の偽物(194頁)
    ファン・メーヘレンはフェルメールの絵の複製をつくるのではなく、フェルメールのスタイルで全く新しい絵を創造した。その腕前は真に迫っており、多くのフェルメール専門家が騙された。1937年に発見され、フェルメールの初期の傑作とされていた「エマオのキリスト」も、ファン・メーヘレンの描いたものだった。

    ☆関連図書(既読)
    「フェルメール」黒江光彦著、新潮美術文庫、1975.04.25
    「フェルメール光の王国」福岡伸一著、木楽舎、2011.08.01
    「フェルメール静けさの謎を解く」藤田令伊著、集英社新書、2011.12.21
    (2016年9月8日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    東パキスタン難民を支援したり、獄中のIRAテロリストを故郷に移動させるためにフェルメールの絵を盗む。自分の刑期の短縮交渉のために、手下にレンブラントの絵を盗ませる。武器・弾薬と交換するために名画を盗む…。絵画泥棒が絵を盗む動機は私たちの想像を遙かに超えている。犯罪者にとって絵はどんな価値を持っているのだろうか?そう考えることで、私たちの絵を見る眼も変わる。

  • 自分とは無縁な美術品。自宅には親父が買ったベルリンオリンピックの時のメモリアル的なベルは存在するが、絵画などはやはり自分にはと思い興味を持たなかったが

    https://www.youtube.com/watch?v=Z-MuoYMY8rA

    フェルメールだけは別格になった。日本でもたまにフェルメール展が開かれるときは見に行くようにしているが、本当に美しいというか「美」を感じさせる。改めてリュミエール…光というものを身近に感じるようになる。

    「盗まれたフェルメール」

    正直、ナチスの時代から多くの絵画が略奪され、不明となった。そこは大きく興味があるのだが、自身調べてはいるものの本当に難しく感じる。頭の中に勝手な推理小説が出来上がってしまうくらいに…

  • 20140615読了
    2000年出版。絵画の盗難事件を追う本。おもしろい!ボストンで盗まれた「合奏」、ロンドンで盗まれた「ギターを弾く女」。作品数の少ないフェルメールは盗難の対象として目を付けられがち。ロンドンのほうは解決したが、1990年に姿を消した「合奏」はいまだ見つかっていない(ガードナー美術館事件)。●絵画窃盗の動機は
    ①自分でその絵を所有したい→警備の充実により減少
    ②コレクターによる窃盗委嘱→そのような悪徳コレクターの存在を否定する専門家も多い
    ③画商に売る→足のつきにくい目立たない絵が対象
    ④オークション会社に依託する→盗品の依託は会社にとって不名誉かつ不利益であり、絵の来歴チェックは厳しいが、チェックにもれる場合もある
    ⑤思惑だけで盗む→売却手段や買い手のアテがない、いきあたりばったりの窃盗
    ⑥投資→ロンダリング(数年かけて無名の競売にかけ続け来歴づくりをして盗品であることを隠す)してから画商やコレクターに売る
    ⑦買い戻し金や報奨金が目当て→盗んだ絵を楯にとって持ち主や保険会社と取引をし、金を得ようとする
    ⑧政治的理由→テロリストや革命家が著名な芸術家の有名な絵を盗み、政治的主張を通したり交渉を有利にするための切り札として利用する
    ●悪徳コレクター日本人説は1980年代のバブル期に海外で絵を買いあさった日本人に対する反感から生まれた。このイメージは、87年、フランスで盗難に遭ったコローの絵画5点が日本人の仲介者(前科あり)をとおして日本で売られていた事件(犯人はフランス人窃盗団で、86年に有楽町で現金輸送車から3億円を強奪する犯罪も犯している)によって定着した。しかし購入者は悪徳コレクターではなく、盗品と知らずに購入した「善意の購入者」で、最終的には所有権を放棄もしくはフランス政府に絵を寄贈。●日本の民法は買い手を保護する立場(動産の即時取得の原則)をとっているため、盗品であってもそれと知らずに購入した瞬間から占有者の合法的な所有物となり、2年経てば善意の所有者は被害者に作品を返還する義務が消滅する。返還請求に対しても弁償金を請求できる。よって盗品を購入することによる買い手のリスクが海外よりも低いため、暴力団がからんだ美術品の盗品市場が存在するというイメージが海外で流布する結果となったという。

  • 全部で30数点しかないフェルメールの作品。
    美しき彼の作品に目をつけたのは、世界中の泥棒たち。
    フェルメールの絵画はなぜ狙われるのか?
    謎多き絵画盗難事件の裏側に迫る!!

    手書きPOPより抜粋

  • 先の「ムンクを追え」と同じ事件をカバーしている記述も多く、対比して読むと美術盗難事件の知見が広がります。
    読み物というよりかは、文献、新聞記事、インタビューを元に客観的に美術品盗難事件について書かれているので、面白さというよりかは知識を深めるにはいい本です

  • 美術品の価格が上がるにつれて、美術品泥棒が増えるとは。当然のこととはいえ皮肉なもんですね。著者の丹念な調査と取材によって、日本でほとんど報道されない海外の名画泥棒が、まるで目の前で再現されているような臨場感があります。新潮選書という制約はあったのでしょうが、盗まれて傷ついた絵画の写真などがもう少し多いともっと楽しめたと思います。それにしてもフェルメールの『合奏』は今どこに…

  •  フェルメールの作品として現在確認されているのは30数点のみ。とても寡作な画家さんだ。それ故に作品の希少価値も高く、もし売りに出されたとしたら相当な高値になる。
     フェルメールの作品は過去に美術館や個人宅から何度も盗み出されている。戻って来た作品もあるし、未だ戻らない作品もある(この本が刊行されたのが2000年なので、ここに書かれている事はちょっと古い。そうはいっても1990年に盗まれた『合奏』はまだみつかっていない)。そういった作品は高額に売れるから盗まれた。訳ではない。フェルメールのように有名な画家の絵は盗品だとすぐにバレてしまうので、売買を目的としたプロの美術品泥棒達は画商に売ってもバレなそうな、もっとマイナーな作品を盗むのだそうだ。もしそういうことを知らない人が闇市みたいなところで高額で売ろうとしても、買い手がつかなくて途方に暮れる事になる。
     本作品は美術品が何故盗まれるのかを主にフェルメール作品に絞って見ていける。美術品って盗まれた後には高額でコレクターにでも売られているんだろうなあ、という私の安易な考えは全く当たっていなかった。盗む人それぞれの思惑はあるものの、基本的には単なる商品とか取引の材料に考えられてることが多いみたいだ。絵画ドロボーの思惑がある程度分かっているのは、もちろん戻って来てくる作品もあるから。
     この前見に行ったフェルメール展に展示されていた『手紙を書く女と召使い』は過去に2度も盗まれ、2度戻ってきた。でも盗まれた時に雑に扱われたおかげで作品には傷がついてしまった。なんてことを…。だから今回見た作品は修復後の作品。
     それにしても、ペットボトルのおまけみたいな、ただ同然のものがお金になるかと思えば、億で売れる絵画を簡単に傷がつけられたり、物の価値って不思議だなあ。

  • フェルメール巡礼ーそれはフェルメール作品を巡る旅。
    ガードナー美術館の『合奏』を除いてー
    フェルメールはなぜ盗まれるのか?
    そして『合奏』が戻る日は来るのでしょうか

    鹿児島大学スタッフ(木)

  • ガードナー美術館の盗難事件の
    詳細が知りたくて読んでみた。
    図面等も収録されており、参考になった。

    また、美術品を人質にとるということは
    そこまで芸術を大事にする人ばかりでもなく
    宗教や民族問題もあまり表面化しない
    単一で無宗教の民族といわれるである日本人には
    中々理解が及ばないことなのだろうと思った。

    悪徳コレクター=日本人のイメージがつけられるのは
    非常に不満だが。

  • 『絵画泥棒が絵を盗む動機は私たちの想像を遥かに超えている。』
    (これを読んでる途中、オスロでムンクが盗まれた)

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