佐伯祐三 (新潮日本美術文庫)

制作 : 日本アートセンター 
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  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106015632

感想・レビュー・書評

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  • 当時は何が何でも芸術家はパリに行かないといけないと言われていた。明治の頃ね。
    だから貧乏な日本人はそれこそ死んでもいいという気持でこぞって無理してパリに行った。
    でも、生活なんかできるわけはないから、ほとんどの人は食べることもできずに衰弱して、肺炎になって死にました。パリにはそういう熱い思いで果てていった芸術家の血がしみこんでいるんです。
    それで、あの時代は誰もが印象派に憧れたんですね。佐伯ももちろんそうで、一生懸命印象派の勉強をして、その画風を自分のものにしようとしていた。
    ある日ブラマンクをいう画家の家に行って、自分の絵を見せるんです。そうしたら、もうブラマンクが怒り狂って。
    「お前は何をしているんだ。お前がしたいのはなんなんだ」って、もう佐伯がシオシオになるまで怒鳴られたんですね。
    要は、自分の芸術とは何かを求める心が無いことを懸命に説かれたんです。
    それから佐伯は死にました。もう昨日までの自分は死んで、必死に自分の絵を模索したんですね。
    ああ、これは私の研究した佐伯の絵の根底ですから、偉い評論家がなんと言うか知りません。でも私の確信では、佐伯がなんでパリの壁ばかり描いていたかがわかるんです。
    後輩の山口長男の証言から私が確信したことですが、とにかく佐伯は日に2枚絵を描いていたと。もう自分から自分の命を燃え尽きさせようとする姿だったと。
    それで私にはわかりましたが、日に2枚の絵を描く人間はどのようにモチーフを選ぶのか。それは目の前にあるものだったんじゃないかと考えています。
    佐伯はとにかく描くしかないと考えた。描いて描いて描いて、その先に見えるものを見据えようと考えた。その時に目の前に壁があった。これなら無限に描き続けられると考えたんです。
    まあ、それで本当に燃え尽きて死にましたけどね。芸術家というのはそういうものです。自分の人生の価値を、絵を描くことにした人間ですからね。それでそれを自分の一番上に乗っけた。一番上なんだから、命より上です。だから佐伯はそのように生きて、そのように死んだんです。それだけのことです。

  • 佐伯祐三の絵が好きだ。本書を通して、改めてそのことを実感した。心を捉えて離さないもの、風景と一体になろうという必死さを感じる。最期、パリに立ったのもなぜかすごく共感できる。

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