- Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106022050
作品紹介・あらすじ
幕末から明治にかけての激動の時代を生き抜いた「画鬼」の波乱万丈の人生と、仏画から戯画まで何でもござれの多彩なる作品世界を、余すところなく紹介する。
感想・レビュー・書評
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「星落ちて、なお」を読むために参考として図書館で借りてきた二冊のうちの一冊。
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河鍋暁斎についてコンパクトに知ることができる。
北斎なら富士山とかぱっと有名な絵が浮かぶが、暁斎はあまりイメージが湧かなかった。が、この本を読むと、それもそのはず、7才で歌川国芳に入門するも、すぐにやめ、次に10才で日本画の狩野派に弟子入り。収録されている画をみても、表紙の巨大な猫のようなおどけたものから、静かな仏画まで、画風は多岐にわたっていた。
文中に曾孫の河鍋楠美氏と狩野博幸氏の対談がある。江戸末期からの画家で直系の子孫がいるとは。楠美氏と母は画家であった祖母の暁翠から絵を描いちゃいけない、と言われていたそうだ。で母は教員に、自身は眼科医師になったというのだ。楠美氏は中学時に終戦を迎えたが、戦前は河鍋だ、というと近所の八百屋でも魚屋でも、「あの画家の親戚か?」と聞かれるので煩わしかったが、戦後になるとまったく忘れ去られ美術の専門家でさえ知らないという。それを憂えて自宅にあった三千枚にもおよぶ下絵や絵手本を整理し、1977年、自宅の一部を展示室にした、というのだ。だが、財団法人として認可されたのは10年後、県からは下絵ばかりで本画が無いから、ということだったと。
この下絵もこの本にはたくさん載っている。月岡芳年の下絵と似たような雰囲気があり、赤線と黒線でとても立体的だ。
印象に残ったのは、
表紙:「化け猫 惺々狂斎画帖三」明治3年 猫の口元がなにかアリスのチシャ猫を思わせる。
「髑髏と蜥蜴」(風俗鳥獣画帖)明治2~3年 髑髏の両目を蜥蜴が通る図 これは北斎の百物語の「しうねん」という蛇の図の延長線上にあるという。さらに若冲の「髑髏図」という髑髏2つがある絵に行き着くという。
「枯木寒鴉図」明治14年 絹本墨画 これは見た事があった。第二回内国勧業博覧会で最高賞を受賞。
「北海道人樹下午睡図」明治19年 これは釈迦涅槃図の構図だが、北海道調査の偉人・松浦武四郎を描いている。松浦はTVでドラマをみたことがあったので、おやと思ったが、なんと暁斎と松浦は胸襟を開いて話せる友人だったというのだ。
「暁斎先生、日光にて」明治18年8月5日 コンドル画 鹿鳴館の設計者コンドルと暁斎は親しく、日光に旅行に行った。その暁斎が写生をしているところをコンドルが描いた図。
「風流蛙大合戦之図」元治元年(1864) 長州征伐を蛙合戦に見立てた図。蛙の開いた口の具合がなんともユーモラス。
「像の写生の図」文久3年(1863) 両国で本物の像をスケッチ。いつでもどこでもスケッチをしたという。
「波乗り観音図屏風」明治4年以降 紙本着色 正統な仏画のようなのだが、観音様が巨大なコイに乗っている。
河鍋暁斎 天保2年~明治22年(1831-1839)57才没
月岡芳年 天保10年~明治25年(1839-1892)54才没
ともに歌川国芳の門下となったが、暁斎は7才時1837年、芳年は12才時1850年 なので同時期ではない。
2010.7.25発行 図書館 -
暁斎の関連本は結構見ていたつもりだったけど、春画や工芸品まで及んでいたとは知らなんだ。前者はまぁやってないわけないだろうけど。
べた褒め一辺倒なのは鼻につくけど、他にあまりない分野のものまで眺められる良い一冊だった。
…ただ、狩野さん執筆の本はもういいかなぁ。関係ないところでまで蔑称使ってこられると、読んでる方はしんどいよ。 -
名前と化け猫の画と幽霊画を描いた人、くらいの事前知識しかなかったが、なんとなく興味を持ち購入。
とにかく満足感の高い一冊。
河鍋暁斎の作風の多様さと自由さ、懐の広さに驚嘆。
動物画の愛嬌と迫力ある表情、〈風流蛙大合戦之図〉のようなユーモア、そして何よりも確かな筆力。伝統的な仏画は当然(しかも立体感とか光の表現とかが尋常でなくオシャレ)、西洋画までこなせるマルチさは圧巻。下絵の精巧さと緻密さも見逃せない。
巻末には年譜や相関図まで完備と抜かりがない。
大満足でした。
1刷
2021.1.9 -
幕末から明治にかけて活躍した画家の一人、河鍋暁斎についての本。
ただ一言素晴らしい画家であるということに尽きます。
河鍋暁斎という名前だけでなく「画鬼」や「狂斎」という名前で呼ばれるのもふさわしいほど色々とぶっ飛んでいる絵があるかと思えば、
『猫又と狸』や『美人観蛙戯図』や『化け猫』といった非常に可愛らしい絵も多くあり、
また、『枯木寒鴉図』や『白鷲と猿』といった圧倒的シンプルイズベスト感のある絵もある。
自分は画家でもないし、まったくもって美術系に近い分野の人でもないですが、
もし自分が画家で同世代にこれほどまでに多彩な画家がいたらと考えると、怖さと無力感に苛まれるかと思われます。 -
写真が多く、絵を楽しめた一冊だった。
博物館では細かいところまでは肉眼で見られないので、こうやって冊子として見られるのはとても有難い。 -
作品を観ると、国芳の影響を毛呂受けてるな。
暁斎も素晴らしい作風で大好きになりました。 -
美人画、仏画、戯画、幽霊画、デザインなど、マルチな才能を発揮し、幕末から明治にかけ大活躍した河鍋暁斎。多才にして鬼才。正統派にして異端。ユーモアあり皮肉・風刺ありの本格技。天才のなせる技の数々にただただ圧倒される。下絵もお見事としか言いようがない。並々ならぬ技量を思いっきり見せつけられた。
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2012.4