沈黙の勇者たち: ユダヤ人を救ったドイツ市民の戦い (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106038990

作品紹介・あらすじ

潜伏ユダヤ人とドイツ市民の〈知られざる共闘〉を描く。ナチスが1943年6月に「ユダヤ人一掃」を宣言した時点で、ドイツ国内に取り残されたユダヤ人はおよそ1万人。収容所送りを逃れて潜伏した彼らのうち、約半数の5000人が生きて終戦を迎えられたのはなぜか。反ナチ抵抗組織だけでなく、娼婦や農場主といった無名のドイツ市民による救援活動の驚くべき実態を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • ユダヤ人を救おうと、様々な国の人たちが己を顧みず尽くした実録。

    これまでに歴史書や映画や文献でナチスを読んできたが、このフォーカスはなかったように思う。
    12年に及んだナチスの支配が終わり、平和とともに新しいダイバーシティが始まった。

    後半になるにつれより深く深く展開されていく。

  • KAKEN — 研究者をさがす | 岡 典子 (20315021)
    https://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000020315021/

    岡典子 『沈黙の勇者たち―ユダヤ人を救ったドイツ市民の戦い―』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/603899/

  • 日本に杉原千畝がいたように、ドイツにシンドラーがいたように、有名ではないけど残虐行為から自分のできることを命をかけてナチスからユダヤ人を守った人たちの記録。
    ユダヤ人音楽家のコンラート•ラッテの「たいていの人は、なされるがまま、運命に身をゆだねてしまっているが、僕には理解できない。何とか脱出の道を探すべきだ。」と自ら生きる道を模索した人がいたこと、ルート一家のように少ない食料と恐怖に怯える中、家族と一緒にいられる幸せを感じる人たち。また、当時のドイツ人の中に、ユダヤ人の苦難を見過ごすことができず、何か行動しなければと動いた人たちがいたこと。(その数、およそ二万人ほど) 
    そして、いまと共通するであろうと思ったのが戦争で友情を割かれ、傷みを追った人。昨日まで仲良く学び、、ともに働いてた人を国家が割くという非道さ。従軍での残虐行為がトラウマになりユダヤ人を守ることを決意した農場主。大勢の普通の人たちの勇気がひとをひとでいさせたことに感動。また、元女子ギムナジウム教師のエリザベート•アベックが匿ったユダヤ人のため、「小さな学校」を作ったのも心打たれた。彼女に教わったラルフが「あのころの自分が無知な愚か者にならずに済んだのは、ひとえにアベック先生のおかげだった」と振り返っている。
    「戦争が終わっだら」という言葉が、潜伏ユダヤ人たちにとって希望を、生きるよすがになっていたこと(終わっだら学びたいなど)。また、仕事や役割を持つことが、金銭的理由のみならず「社会からの孤立)を防いだことも大きかった。(例えばジテンシャでの使い走りとか)
    アベック先生の教え子たちに戦争反対、ユダヤ人救援の思想が根づいていたのもよかった。(内なる輪の結成)
    また、ユダヤ人のため、偽造身分証を作り、捕まったカウフマン(本人はユダヤ人なるもドイツ人貴族の娘と結婚)が逮捕後に「わたしのこころに根差していたのは、キリスト教徒としての意識でした。年とともにその意識が成熟してゆくにつれ、私は自らの過失に寄るのではないこの苦しみと向き合い、耐えるべきだと思いいたったのです。やがて、その認識は自然に、迫害を受けるユダヤ人たちへと向けられていきました。彼らは私が自分たちを助けてくれると信じ、信頼を寄せていました。そうした人びとを失望差せることはできなかったのです。私が彼らを扶けたのは彼等がユダヤ人たったからではありません。助けを必要とし、おびえている人間だったからなのです。」にも人間の持つ、内なる、最大の善意という意味で心に残った。
    ルートが戦後、かくまってくれたマリアと再会するときに子どもや孫に「この人がマリア。私たち皆の天使よ。もしもこの人がいなかったら、今ここにいる私たちの唯一人、この世にいないのよ」は他にもいた無数のマリアたちへの感謝してのコトバだったと思う。
    終わりに著者指摘している「多様性ということばの根幹には、少数者の意見や価値観を尊重すべきとの価値観が存在する。だが歴史を振り返ってみれば、少数者がいかに尊重差れるかは、その社会や銃弾がもつ「余裕」に依存するというのが現実というのはまさに嚆矢を得ている。

  • とにかく心の底からおすすめする。ドイツにおいてユダヤ人を救援した人びとの実態が手際よく整理されながら、壮大なヒストリーが織られている。共助の芽を今こそみんなで育てないとな。そう思わせてくれる一冊

  • 自分の危険を顧みず助けた人がいたんだなあ。感動的だけど読みにくかった。ごめん。

  • ものすごい作品だった.
    こんな側面から歴史を考えた事がなかった!
    そして,ナチス政権がどんな強権を振り翳しても壊せなかったのが「人間の,人間としての良心や共感力」だったと言うことの,強烈な肯定感はどんどん閉塞感の増す今の世の中でも一筋の希望として輝いて見えた.
    ただ,筆者も記す通りここに書かれた人々はまさに「不幸中の幸い」の集合体で,助けようにも助けられなかった数多の犠牲者など,その何倍もの悲惨な末路は本書の裏に無数に存在していると言う事実は,「人の罪」としてそれぞれの心に永久に刻まなければならない.

  • 司馬遼太郎賞受賞に納得。
    なんでこの視点を今まで持ち得なかったんだろう。

  • 東2法経図・6F開架:234.07A/O36c//K

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著者プロフィール

福岡教育大学講師、東京学芸大学准教授を経て、現在、筑波大学教授。博士(心身障害学)(筑波大学)。専門は障害教育原論。著書に『視覚障害者の自立と音楽――アメリカ盲学校音楽教育成立史』(風間書房、2004年)がある。

「2020年 『ナチスに抗った障害者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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