黒いスイス (新潮新書 59)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100598

作品紹介・あらすじ

永世中立国で世界有数の治安のよさ。米国などを抜き、常に「住んでみたい国」の上位に名を連ねる国、スイス。しかしその実態は-。「優生学」的立場からロマ族を殲滅しようと画策、映画"サウンド・オブ・ミュージック"とは裏腹にユダヤ人難民をナチスに追い返していた過去、永世中立の名の下に核配備計画が進行、"銀行の国"でまかり通るマネーロンダリング…。独自の視点と取材で次々と驚くべき真相を明かす。

感想・レビュー・書評

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  • ナチスドイツとの関係。スイスはナチスドイツに武器を輸出していた。ナチスドイツの共犯者だと批判されている。ナチスドイツがオーストリアを併合。オーストリアのユダヤ人がスイスに大量移住。スイス政府は国境でユダヤ人を識別し、ユダヤ人の旅券にJ(Jude)のスタンプを押して追い返した。

    ロマ族。スイス政府が支援する公共団体は1926年から1972年の間にロマ族の子どもたちを誘拐し、強制的に施設に入れた。施設では子どもたちへの暴行も。ロマ族は怠惰で知恵遅れ、学校の勉強では理解力が欠けていて、喧嘩ばかり、監視しないと浮浪者になってしまう、と団体のスイス人は考えていた。

    米テキサスで1987年に設立されたネオナチ組織「ハンマースキン」。スイスには欧州初の支部が置かれた。白人優位。外国人排斥。

    ある町では、1997年、外国人にスイス国籍を与える場合、住民投票を行って決めた。外国人の写真や経歴が掲載されたパンフレットを配って住民が投票。結果、東欧人やトルコ人は国籍付与が拒否された。

    ※ドイツ語64%、フランス語19%、イタリア語8%
    ※カトリック46%、プロテスタント40%

  •  永世中立国と名高いスイスの暗い側面に目を当てた本。
     以前タックスヘイブンについて書かれた本を読んだこともあり、スイスが色々と問題を抱えていることは知っていたが、政府主導で核兵器の開発が行われていた事や、国籍を取得を希望する人物を国民が決定する(本書においてはトルコ人や黒人は却下されている)という事までは知らなかった。これまでに幾多の困難を乗り越えてきた結果が、本書で書かれているような他民族に排他的な国民性となったのだろうか。

     言うまでもないことだが、本書で書かれている事のみでスイス人の人々の事を見てはいけない。事実は事実で受け止め、その人個人の事を見つめていくようにしていかなくてはいけない。そしてそれは、かつて選民思想に取り憑かれてしまい、惨劇に加担してしまった戦時中のスイス人から反面教師として学べることだと思う。


    自分用キーワード
    ロマ族(かつてスイス政府に不当な理由で子ども達が誘拐された。成人後も稼いだお金を勝手に徴収する、婚約を破談にしようとするといったことをしていた) 「J」スタンプ(ユダヤ人をスイスから締めだすために、政府がナチスに提案した施策) モーリス・バボー(ヒトラー暗殺を試みた人物) ポール・グリューニンガー(ユダヤ人の密航を手助けした人物) 国籍取得(非白人は冷遇される傾向にある) 相互監視社会(本屋において個人情報満載の本が売られており、スイスの政策を批判した筆者の友人(フランス人)は糾弾された) ネオナチ ハンマースキン(酒とドラッグを慎み、白人の世界にしようとする若者中心の組織) ダニエル・シュバイツァー『スキンオアダイ』(ネオナチ思想に溺れる若者に焦点を当てた映画) ヘロイン(重度のヘロイン中毒者に対し、少量のヘロインと副作用の弱い薬物を国が与えることで、薬物の流通を防ごうとしている) クリストフ・ブロッハー(政治家。自民族中心主義者の傾向あり)  

  • 一般的なスイスのイメージがいかに表面的なものかがよく分かった。
    スイスに限らず、他の国の歴史についても学んでいきたいと思った。

  • なかなか面白かった。
    本の帯にあるとおり、全くイメージでしかスイスという国を知らなかったが、この本を読んでなるほどと思ったことも多々あった。
    ロマの話に始まり、ナチス、核実験、そしてマネーロンダリングまで、筆者が実在する人物から得た情報を詳細に書かれていて、読みごたえがあった。
    また、いくつかは日本の問題にも通ずるところがあり、考えさせられた。

  • 保守的なスイスだった。
    満足度5

  • 2012/09/22読了。

    理想の国というイメージのスイスの過去から現在までの黒い一面を集めた一冊。
    幾度となく言及されるスイスの閉鎖性については、私自身も経験があるので納得できた。

  • 好感度の高いスイスの隠れた黒い一面を扱った本。

    ・・・らしいですが、読後この国へのイメージが変わることはなかったです。
    黒い面と言えばそうでしょうが、強国に囲まれた国ではむしろ防衛の意味でもこの本内のようなことを行っていても不思議はないかな、と(決して肯定する意味ではなく)。
    むしろ綺麗なだけの国家などあるのだろうか・・・?という疑問。

    移民問題についてのある若者の意見も、確かにやや過激ではありますが「信じられない意見」とは思いませんね。たぶん今移民を抱えたどの国でも似たような考えを持つ人は多くいるんじゃないでしょうか?

    この作者はスイスのことが好きらしいですが、むしろ読者よりもスイスに夢を見ていたのはこの作者なのではないかなー・・・と思いました。

  • 更新された続きがあれば、読んでみたい。

  • やはり中立を守るには綺麗事だけではダメだということ

  • 第1章 ロマ(ジプシー)の子供を誘拐せよ
    第2章 「悪魔」のスタンプ
    第3章 それぞれの戦い 「祖国」と「人道」の狭間
    第4章 中立国の核計画
    第5章 理想の国というウソⅠ 「相互監視」社会
    第6章 理想の国というウソⅡ 民主主義社会
    第7章 理想の国というウソⅢ 「ある政治家との対話」
    第8章 マネーロンダリング

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