国家の命運 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103902

作品紹介・あらすじ

国益を背負う外交の現場とは、いかなるものなのか。世界という視座から見た日本は今、どういう国なのか。戦後最大の経済交渉となった日米構造協議の内実、にわかに台頭する中国の外交スタンス、独裁国家北朝鮮との話し合いの難しさ、先進国サミットの裏側…四十年余の外交官生活をふり返りながら、衰えゆく日本の国勢を転回させるための針路を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • ほんの少し前まで最前線で日本外交の交渉を担ってきた方で、将来への憂いを滲ませる著作。まあ、現状を鑑みれば誰もが感じざるを得ない認識です。
    新書の内容としては少し軽めで、過去の体験を踏まえたエッセイが中心。やはり詳細な話は外交上差し障りがあるので話せないのでしょう。外交官は最後に歯を見せてはならない(笑顔)と言われるほど、こちらが「勝った!」と相手に思わせてはならないといいます。秘密をどこまでも抱えていなければならない立場としては、ぎりぎりの話なのでしょう。
    外交上の駆け引き術やこれまでの外交交渉の内幕はそれなりに面白かった。

  • 2010年頃に購入してそのまま積んでいた本書。10年一昔と言うけれど多少時代が経った現在でもその言わんとするところは未だに日本の課題として山積している。外交の最前線で渡り合ってきた著者が経験してきた交渉の一部を垣間見ることができる。
    外国との交渉内容に応じて日本国内の事情にも通じていなくてはいけないということで、日本が直面している様々な諸問題についても触れている。交渉におけるツボにも言及されており、これは我々の仕事上の交渉でも応用できる内容かもしれない。

  • 2013.11.22 am 12:43読了。課題図書。元外交官が外交の裏側や日本の置かれた立場、実態について語る。本のタイトルからは想像できない内容。タイトルは少し格好つけ過ぎのような気がする。『タックス・ヘイヴン』と似たような雰囲気。外交に関する本は初読。外交交渉の手法について知ることができて良かった。シェルパの存在も初めて知った。著者の考えの根拠についてはもう少し掘り下げて欲しい部分もあった。加えて、改めてメディアの影響力の大きさを感じた。背景を知り、視点を変えることで、問題は異なる姿を見せることを実感。日本のメディアはもっと多様化するべきだ。政治や外交、諸外国に関する知識が必要と痛感。類似書籍を読んで考えを深めたい。

  • 元外務事務次官の藪中さんの実録。
    外交、という交渉事の最上級ステージをどのようにとりしきるか、については自信の経験をもとに非常に示唆にとんだ解説だった。国家を背負っている立場から、最初は高めのたまを投げる。その上で各省の実情を把握して振り幅を決めて、最終的に60vs40になるように交渉をすすめる。このへんのノウハウは日常にも活かせるものだろう。
    それと、非常に共感したのが日本における最大の問題はデモグラフィー(人口動態)であるということ。少子高齢化、というが高齢化はよい、世界に誇って良い。少子化、がまずい。労働力人口の減少は、どんなすばらしい経済成長にも変えられない。これを止めるためには、出生率をあげるか、移民を受け入れるかしかない。薮中さんは割りと後者を推している感があったが、個人的には前者に注力すべきだと考えている。
    いずれにしろ、今後の日本というマクロの視点でも、日々の交渉ごとというミクロな視点でも、とてもためになる本だった。

  • 明日お会いすることになったので、エチケットっとして読んでみた。レビューを書けるほどの知識・認識・常識がないことがよく分かった。

  • 国際交渉においては、受け身の姿勢でなく、オフェンシブな態度で臨むことが重要である。また、日本にはODA分野や技術力の高さなどで世界に貢献できる部分も多く、そのためにも攻めの姿勢が求められる。
    外交交渉においては、相手を知り、己を知ることが大切で、攻めの姿勢やロジカルさ、大胆さも求められる。
    少子高齢化が進む日本で衰退から脱却する為には、国内政策を大幅に転換することが必要だが、FTAや外国人労働者の受け入れなど外交もまた重要な役割を果たす。

  • 外務官僚の交渉の裏側を書いた本。読んでいて少し飽きてしまった。

    話の中で印象的なだったのは、日本で講演するときとアメリカで講演するときは質疑応答の時間の配分でずいぶん変わってくるといった趣旨の内容があった。日本人は質問が出ないとのこと。日本人の美意識として質問をしないことがマナーといったようなこともある。質問する人は少しガツガツした印象をどうしても持ってしまうこともある。

    でもこれは恐らく、質問する人の雰囲気や間といったものが大切なんだろうと思う。今日実は1時間半の会議を30分で終わってしまった。一番遠くからは北見から来ている人に対して、それは相当失礼と私は捉えた。が、一般的に見たらスマートで会議の短縮ができたということなのかもしれない。淡々と報告することは楽だが、報告だけなら書面で十分だと考えている。一方で質問が出なかったことに安堵を覚えたのも事実。質問が出てもなんでも答えられる・・・、そんな気持ちで早く今の部署で力を発揮したい。

  • スケールの大きな話ではあるが、外交交渉における「51対49の原則」や「オフェンスこそ最大のディフェンス」という点は非常に参考になる。
    日本人としての誇りを持って、世界に立ち向かっていかなければいけない。

  • 小泉政権時に外務省の事務次官を担当した薮中氏の著書。元官僚が政治や現役官僚をバッシングするような今はやりの内容ではなく、外交交渉における交渉のポイントを平易な言葉で現実の案件を例示しながら記している。非常に読みやすい。
    元事務次官ということで外交関係の秘密や暴露は一切なし。ポイントも外交交渉において求められる人間と人間の関係とは、ということを中心に書かれているので具体的な事案の内容を知りたい読者には物足りないと思う。その意味で記録ではなく、ビジネススキルに近い内容である。
    しかし、本書を読むと、外交とは国のエゴのぶつかりあいだとか、政治家のパフォーマンスだとか昨今いわれるが、そうではなく、自国の課題や現状をしっかり踏まえて、言うべきことは論理的にしっかり伝え、そして相手と信頼関係をしっかり作ってお互いに妥協点を探っていく、そういう当たり前のことが必要であるということが改めて理解できた。
    今の日本を考えると、信頼関係という意味では総理も外相もコロコロ変わり、言うべきこと、伝えるべきこともコロコロ変わるは、言うことは言わずに国内で騒いでいるだけだし、日々国益を損なっているのではないかと危惧してしまう。
    これは民主党や今の外務官僚のせいではなくて、一部の国民が、非常に一面的に自己の利益ばかり主張し、それを誇張して報道するマスコミがあり、そして何の責任もとらないその他の一般国民が評論家的に政治・行政を批判し、そして政治・行政がそのポピュリズムに負けてしまい何も決められない・・そんなことの繰り返しであると今更ながら考えた。

  • 六カ国協議の日本代表をとりまとめたアジア大洋州局長であり,最終的には外務事務次官であった藪中氏。
    その外交の実質トップが退任してすぐに書く外交の本なのだから,おもしろくないはずがない。
    普段,「外務省は・・・」と否定的に捉えることが多かったが,その外務省が実はどのように活躍していたか,活躍していなかったかがわかった。国際政治のバランスのようなものも感じ取ることができる。おもしろい。
    日本的外交は非常に敏感。例えば,オバマ大統領の一般教書演説に日本の名前が出るかどうかなどは,本来,日本としてはそれほど気にする必要がない事項。にもかかわらず,とくにマスコミが先導して,相手の反応を過大に感じ取りすぎ,自ら不利な方向に動くよう働きかけてしまうという点には納得。

  • 良く言われる話であるが、日本は欧米という目標に追いついた後、方向性を見失った。著者の言葉「日本人は、戦後、何はともわれアメリカの言うとおりにしよう。それが間違いの無い道だ。という単純な思考パターンになったのではないか。」 外交の交渉担当のトップでもあった氏は、日本の政治家/官僚は米国の要求をいかに応えるか、のみに神経と思考を巡らし、どのように相手を攻撃(オフェンス)するかの思考が欠けている述べている。
    外交に限らず、仕事でも顧客様の要求に如何に応えるかが大事なポイントであることが多い。しかし、この思考パターンは、極めて日本的であるのだろう。ビジネスであれ、外交であれ相互依存関係が必ず成立する。その関係においては、相手を攻撃したところで簡単に関係は崩れるはずはない。交渉の現場では、如何に相手に過大な要求をつきつけ、如何に相手の弱みを攻撃し、どのように味方の強み/功績をアピールするか。 氏の経験談も交えて分かりやすく説明している。 

  • 2023.10.21

  • 見た目のソフトさとは真逆で、大阪出身の阪神ファンという熱き外交官・藪中氏が提唱する日本の針路。外務省時代にはアメリカとの交渉で何度も「No !」を言い続けた筆者が、最近の政治決着において常に譲歩させられている日本の外交にモノ申す。中国や北朝鮮の脅威への対峙・アジア諸国との連携やTPPへの積極参加など、外交のテクニックに留まらない国際的視点からの処方箋を提言する。

  • 六カ国協議とかでよくテレビに出てた外交官の本。そんなに重くなく面白く読めた。移民を増やそうというのは同意見。

  • 外交官の方の仕事が僅かだが学ぶ事が出来る。

  • 国際的な仕組み作りをリードする。
    世界における国家の立ち位置を方向付ける。
    世界情勢と国家の将来ビジョンを深く考えて自分なりの回答を持っていないとできない仕事であるが、一般の会社でも同じ事が言える。特に、受け身の姿勢ではなく仕組み作りをリードする、の部分。外交だけでなくビジネスでも日本人は同じ問題を抱えているなぁ、と感心。

  • 北朝鮮の拉致問題のニュースで拝見したのが初めてだったと思う。外交官として国益を守るために様々な修羅場をくぐってきた人の言葉には重みがある。もっと主張すべきは主張していかなくてはならない。
    アフガンで農業・医療・教育で現地に深く根ざして貢献しているように、日本として何ができるのかをもっと胸を張って主張すべきというのは確かにその通りだと思う。われわれがもっとそういうことを理解して、日本がどのようなことができるかをきちんと言えるようにならなくてはならない。そうでないと外圧に屈し続けることにもなりかねない。

  • 1.この本をひと言でまとめると
      外交官の仕事のエッセイ

    2.お気に入りコンテンツとその理由を3から5個程度
    ・外交交渉の要諦 I 敵を知り、己を知る(p95)
     →本番の前によく調べ尽くしておく重要さを説いている。有力議員まで調べるのがプロ意識を感じさせた。
    ・1.ウソをつかず、欺かない2.絶対に必要なことと、融通のきくことを分け、優先順位を相手に分かるように伝える3.ダメなこと、デリバー(約束できるかできないか)できないことは、はっきりと言う(p107)
     →ビジネスやプライベートでも使えそう。国同士の交渉でも人間関係が効いてくるのは面白い。
    ・日本流の「Yes,we can」(p60)
     →アフガニスタンでのODAの具体的内容は初めて知った内容。アメリカに対してよく主張してくれました。
    ・私論―5つの提言(p85)
     →危機感を強く感じている点は全く同じ意見。問題を指摘するだけでなく案を出すところがよい。

    3.突っ込みどころ
    ・第一章「アメリカ離れ」のすすめ は、なぜ離れる必要があるのか、どうやって離れるのかがよくわからない。
    ・外交官の仕事がよくわかったが「国家の命運」というタイトルは大げさ
    ・第五章 北朝鮮はなぜ手ごわいか 最初に過大な要求(p126)とあるが、“交渉の初期段階ではいわゆる「ダメもと」、無理は承知で、まずは目一杯の要求をすることが少なくない”(p108)と何が違うのか?
    ・私論―5つの提言(p85)→懸念される問題の対策も書いてほしかった。
    ・東アジア共同体やTPPの話は記述が浅すぎる。
    ・ところどころに自慢話が入っている。

    4.自分語り
    ・全体的に広く浅く、エッセイ的。もう少し突っ込んだ話、交渉の核心部分を書いてほしかった。
    ・度々引用されていた「日本辺境論」が気になった。
    ・著者は日本のよいところを外国にアピールしたという点で、いい仕事をしたと思う。

  • 714円購入2011-01-25

  • 『時代を嘆いているだけでは何も始まらない。時代は人間がつくっていくものだ。』

  • 外交官の仕事が分かる本。
    途中で著者の性格が出る部分があるが、今の世の問題もうまく定義できている。若い人にこそ読んでほしい本。
    下手に外交官の交渉方法は特殊な部分が多いので真似はしないでほしいかなーなんて思ったり。
    ただ政治を、一票を考える上で、とてもいいと思う。

  • 著者の薮中三十二氏は、2008~2010年に外務事務次官を務めた外交官。大阪大学法学部3回生のときに外務省専門職として外務省に入り、入省後外務省上級職(外務キャリア)に合格した、事務次官としては異色の経歴を持つ。
    本書では、1980年代後半の北米局課長としての日米経済交渉から、2000年代のアジア大洋州局長としての北朝鮮核問題の6ヶ国協議、更に経済・政治担当外務審議官、外務事務次官としての体験を振り返ったものである。但し、自ら「外交インサイダーとしての立場を利して、個々の政治家について論評したり、暴露的レポートをお届けしたりするつもりは毛頭ない」と語っているように、関わった外交関連の課題の全てがカバーされているわけではなく、回顧録というよりは、外交交渉に関する普遍的な問題・ポイントをまとめたものという印象が強い。
    印象に残ったポイントとしては以下である。
    ◆総じて日本人はロジックが苦手。日米経済交渉でも、対米の「ご理解いただきたい(please understand)」、対内的な「これでは日米関係がもたない」の二つのフレーズがよく出てきたが、論理性を欠いた考え・表現は役に立たない。
    ◆日本ほど自国への視線と評価に関心を寄せる国民は他にいない。外からどう見られるかに神経をすり減らすくらいならば、国際社会において日本に有利なシステムをどのようにして作るかにもっと関心を向けるべき。
    ◆交渉相手が英語を母国語とする場合は、通訳を使った方がいいこともある。通訳がいれば、相手の話が通訳されている間に「次の一手」を考える時間ができる。また、言い間違いや誤解を恐れて集中力が途切れるくらいなら、通訳を使う方がいいし、一向に構わない。
    ◆最終局面で交渉に臨むとき、合意のモメンタムを逃さずに行動することが大事。本国に戻って最終了承を取り付ける必要があっても、交渉官同士の信頼関係ができていればまず問題はない。まとめは、勇気をもって決断すること。誰もが満足することはありえないので、大事なのはバランス感覚、これならいける、という読みである。
    日本外交交渉に関わる思考は、ビジネスの現場にも通じるものとして参考になる。
    (2010年10月了)

  • 外交交渉の原則「51対49の原則」は、外交に限らず、日常の仕事にも通じることだと痛感した。

  • 2141026

  • 51対49の原則などは、ビジネスの世界でも意識していきたいと思った。

    マスコミ各社には、官僚や政治家を批判するだけではなく、こういった頑張りの裏側も報じて欲しいと心から思う。

  • 単なる新書かと思ってたら、意外とこっそり暴露だの皮肉めいたことを言っていたりだのしていて、面白かった。

    タイトルは特に内容と関係ありません。

  • 「英語を使って仕事がしたい」「海外で仕事がしたい」そんなことを考えている人は必ず読んでほしい。

    日本が海外からどう思われていて、何を期待されているか。その中で日本が世界でどんな役割を果たすべきか。

    そんなことがよくわかる本。英語が好きな人は絶対読んでほしい。

    著者がテレビ東京の「カンブリア宮殿」に出演したビデオもあります。

  • 外国からみた現在の日本の立ち位置がわかる新書。

    元外交事務次官の記録や持論をまとめている。

    私が一番興味深かったのは北朝鮮での外交である。
    北朝鮮という国の外交手段を知れてタメになった。

    日本は受け身の国。
    それが美徳だと謳う我々日本人は、いつか列強の圧に苛まれ苦しむ未来を想像してしまう。

    読んで学んだことは、
    今の日本に危機感を持つこと。
    そしてある程度生き抜くためには、したたかさが必要であること。

    様々な生き抜く強さを急務とする。
    そんな日本の現状を垣間見れた本だった。

  • 毎日の地下鉄3駅分の往復だけでほぼ読めました.ちりも積もれば山となる.

    ご存知の方も多いと思いますが,薮中さんが書かれたもので,外交がどういう風に進められているのか,詳しく知ることができます.

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著者プロフィール

2021年7月現在
立命館大学客員教授、大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)特任教授、グローバル寺子屋・薮中塾主宰。

「2021年 『外交交渉四〇年 薮中三十二回顧録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

薮中三十二の作品

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