スマホで薬物を買う子どもたち (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106109577

作品紹介・あらすじ

カラフルな絵文字に隠語の数々、秘匿アプリが浸透したSNS上では、今日も違法薬物の特売セール。親に隠れて手を出すのは中高生や大学生、売人もまたごく普通の若者たちだ。気楽に手早くお手軽に、スマホを介した「密売革命」によって、子どもたちの薬物汚染は急速に蔓延している。ひと昔前とは様変わりした最新ドラッグ事情から、安易な誤解で広がる大麻の脅威まで、元「マトリ」トップが実例とともに徹底解説。

感想・レビュー・書評

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  • 「マトリ」の元トップで、定年退官後の現在も薬物問題の調査研究に従事している著者の、単著第2弾である。

    同じ新潮新書から出た1冊目の『マトリ――厚労省麻薬取締官』(2020年)は、日本における薬物禍の歴史と、現役時代の捜査の舞台裏が主に綴られていた。

    つまり過去にベクトルが向いていたわけだが、本書は対照的に「いま」の話が中心だ。

    タイトルのとおり、スマホとSNSの普及によって、若者と薬物の距離が急速に縮まってしまった現状を描いている。

    いまや薬物被害も薬物密売も、反社とヤカラとアブネー奴らだけではなく、ごく普通の若者たちの問題になってきているのだ。

  • ★今はスマホさえあれば、インターネット上で多種、多様な薬物情報を難なく得ることができ、たとえ中学生であっても実際に薬物を入手することが可能である
    → SNSでさらに加速する密売革命
    ・野菜、サラダ、草、88、→大麻の隠語
    ・アイス、氷、エス→覚醒剤の隠語

  • 著者は以前にマトリという本を出させれた方。 気になって読んでみた。

    一作目も興味深く読んだが、こちらもかなりインパクトあった。 ケース紹介の3例も、生々しく、こんなに些細なところからハマってしまうのかと驚かされた。

    確証バイアスたっぷりのネット情報を信じてしまっている子達に対応するため、こちらもきちんと知識を持っておく必要性を感じた。また、最後にQ&A形式で大麻合法化について整理しているのも、大変参考になった。

  • 2022/10読了

  •  元マトリなのでリアルであると同時に取締り側の理論が鼻につくところはある。国の感覚を知るには良い資料。薬物に頼らなくても良いつながりの構築みたいな松本さんの依存症治療の話と,現場で蔓延を食い止めようとする著者の話は合わされば良いのにと思う。
     それにしても大麻増えてると思ってたけど,実際そうなんすね。何が良いのかよく分からんけど。アッパー系の覚醒剤が一番人気だったこの国のトレンドが変わりつつあるのは,この国の変容と相関があるのかないのか。

  • 私は正直、大麻合法化派なので筆者の意見に全面的に賛同することはできないが、中毒者による薬物体験談、また子どもたちがどういう経緯で薬物を購入するのか、その経緯などは非常にわかりやすく興味深かった。薬物についてだけでなく、今どきの若者のSNSを使った交友関係事情なども描かれているので、中高生の子を持つ親や、学校の教師等に読んでほしい一冊。

  • #野菜
    これが何を意味するかは、新聞ニュース等で報道もされていたので知っていた。
    仮に知らなくても、今の時代、ネットで調べれば何のことかはすぐに分かる。

    薬物犯罪は、被害者なき犯罪と言われていた時期がある。
    使用していた本人の心身が損なわれるだけで、他者を害することはない犯罪だからである。
    しかし、本書を読む限り、現在では、薬物犯罪はその使用者一人だけの問題ではすまないことがよく分かる。
    現在の学校教育の過程でも薬物防止教育は行われているのかもしれないが、中学生くらいから繰り返し教育することが必要ではないかと思いました。

  • 「これ読んどけ」で、薬物学習の教科書として使える新書。それくらいのインパクトがある。ごく普通の若者が薬物に巻き込まれる恐ろしさ。

  • インターネットを通して安易に依存性薬物が購入できる状況に警鐘を鳴らした書籍である。これを本書は「密売革命」とまで表現する。若年層の大麻汚染が深刻である。

    警察官の大麻犯罪も相次いでいる。京都府警警察学校初任科生の巡査は大麻を所持し、警察学校で同期の腕時計を盗みました。京都地裁は2019年10月9日、懲役2年、執行猶予3年と大麻草2袋の没収(求刑・懲役2年と大麻草2袋の没収)の判決を出した。
    兵庫県警尼崎南署留置管理課の巡査は2020年5月13日、大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕された。
    大阪府警堺署地域課の巡査は2020年6月4日、大麻取締法違反(所持)容疑で逮捕された。大阪府警では警察学校同期ら4人が大麻を使用した。
    山形県警巡査は知人から乾燥大麻を有償で譲り受けたとして、2020年7月13日に大麻取締法違反(譲り受け)の疑いで逮捕された。
    島根県警の男性巡査長(26)は自宅で大麻を所持していたとして2022年10月13日に大麻取締法違反(所持)容疑で書類送検され、懲戒免職処分となった(「島根県警の26歳巡査長が「大麻所持」懲戒免職で書類送検」さんいん中央テレビ2022年10月13日)。
    大阪府警堺署地域課の男性巡査(26)はマイカー内に微量の大麻を隠し持っていたとして2023年1月19日に大麻取締法違反(共同所持)容疑で書類送検された(「「10回くらい吸った…」大阪府警・堺警察署の巡査 大麻使用」テレビ大阪2023年1月19日)。

    近時の大麻汚染は複数の意味で危険ドラッグが遠因になっている。直接的な要因として規制強化された危険ドラッグの代用として大麻が求められている。「近年流行した危険ドラッグに対する規制強化を受け、若者を中心に大麻への回帰が進んでいるとみられる」(「大麻回帰する若者たち 危険ドラッグの代用 きっかけは好奇心、誘惑、安価 県内検挙前年比4割増 /岡山」毎日新聞2018年6月22日)

    新型コロナウイルスに新しいタイプの遺伝子配列を持つものが登場している(「新タイプのウイルス、6月に突然出現…東京から感染拡大」読売新聞2020年8月8日)。新タイプのウイルスが続々登場するならばワクチンを開発してもイタチごっこになってしまう。新しい生活様式を続けることが対策になる。危険ドラッグを規制すると大麻を販売する依存性薬物の売人も社会にとって新型コロナウイルスのようなものである。

    大麻が人体を蝕む有害な薬物であることは言うまでもない。本書は大麻解禁論に反論する。大麻が酒や煙草にはない幻覚作用を持ち、反社会的行動への端緒となる。
    「乱用すると、感情の起伏が激しくなったり、異常行動や思考力低下を引き起こすと言われる大麻」(「緊急リポ 高校生に忍び寄る大麻 その実態」琉球朝日放送2019年6月14日)。
    「大麻を吸えば思考能力の低下や記憶障害、幻覚・妄想を招くおそれがある。より強い刺激を求めて、ほかの違法薬物に手を出す契機となることから「ゲートウェイ・ドラッグ」とも呼ばれる」(「「興味本位で吸った」若年層の大麻汚染、警察官にも…」産経新聞2020年6月27日)。
    ところが、若年層には大麻が有害という知識の欠如が見られる。「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」で育った世代としては大きなギャップを感じる。ここには麻という自然由来だから健康的という誤解がある。
    これも危険ドラッグの弊害になる。危険ドラッグも売人は脱法ハーブと称して、ナチュラルなイメージで販売していた。危険ドラッグの法規制は進められたが、「人間やめますか」くらいに脱法ハーブを社会悪として徹底的に根絶しなかったことが今日の大麻汚染につながっていると言えるだろう。

    インターネット上では依存性薬物が隠語を使って販売されている。大麻を野菜、覚せい剤をアイスとする。昔からシャブなどの隠語はありましたが、日常語を隠語にしている点が特徴である。日常の食べ物を隠語とすることは、違法薬物との自覚を失わせ、安易に購入させる悪辣な手口になる。これは危険ドラッグを脱法ハーブ、脱法ドラッグ、合法ハーブ、合法ハーブ、お香と称して問題のない薬物のように販売する手口から一貫している。この点でも若年層の大麻汚染は危険ドラッグが罪作りになっている。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/776920

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著者プロフィール

1956年、福岡県生まれ。明治薬科大学薬学部卒業後、80年に厚生省麻薬取締官事務所(通称:マトリ)に入所。薬物犯罪捜査の第一線で活躍し、九州部長などを歴任。2014年に関東信越厚生局麻薬取締部部長に就任し、18年3月に退官する。13年、15年に人事院総裁賞受賞。著書に『マトリ 厚労省麻薬取締官』『スマホで薬物を買う子どもたち』(ともに新潮新書)がある。

「2023年 『ナルコスの戦後史 ドラッグが繋ぐ金と暴力の世界地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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