幽閉

  • 中央公論新社
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本棚登録 : 29
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120035999

作品紹介・あらすじ

孤島で暮らす老人、幽閉された美少女、美しい看護婦の企み、フランス小説界きっての鬼才がおくる衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  • 孤島に暮らす富豪の老船長とそれとは知らずに監禁されて愛される美女、その間に入り込む若く美しい看護婦。
    愛も過ぎると毒になるのだと正面切って言われたような気がします。
    隔絶された世界で愛され続けた被害者は加害者を嫌いつつも愛する奇妙な関係。被害者を助けようとする看護婦も被害者の美しさに魅せられて…と話は進み二つの結末に。
    明るい未来は最初の結末なのでしょうがこの話の設定なら二番目の結末のほうが私にはしっくりときました。

  • 美女と野獣を連想させるシチュエーション。
    登場人物の異常な関係性は怖い。
    結末が二つ用意されている。
    巻末に作者の弁もあり。
    アメリー・ノトン、ますます好きになる。

  • ●この物語には2つの結末が用意されていた。前者はアゼルがロンクールを憎みながら、その愛情を何よりも確かに感じていた物語。後者はフランソワーズがアゼルを愛することで、ロンクールと同じ略奪者になってしまう物語。フランソワーズの果敢な行動力の源が明らかにされ、フランソワーズの見方が一変する話だが、ロンクールもフランソワーズもアゼルの美貌を愛しただけのように感じてしまった。つまり、ロンクールの愛が特別なものじゃなく、崇高な美を目にしたものが感じる普遍的な性質だということになってしまうのではないかということだ。醜い老人であるロンクールの愛は受け入れられなかったアゼルが、若く美しいフランソワーズのことを愛していることもそれを裏付けている。
    ●アメリー・ノトンの読者を惹きつける文章力とテンポのよいストーリーはとても面白かった。内容も平易で疲れたときでもすらすら読めそう。

    P129
    「娘たちにとっての善行でもある。私のように全人生を傾けて人を愛するような男がどれほどいるかね?」
    「あらまあ、なんだか自分が男性のお手本みたいな言い方ね」
    「まさしくそうさ。大部分の人にとって、愛するということはスポーツやバカンスや観劇と同じく生活の一部にすぎない。だから、打算的に考えるし、自分が選んだ生き方に一致していたほうが都合がよい。男にとっては仕事が全てだ。一方女にとっては子供が全てだ。こうした観点からすると、恋愛とは一時の気まぐれでしかないし、長引かないほうが望ましい病気みたいなものだ。そんなわけで、一過性の情熱を治療するための陳腐な決まり文句がぞろぞろ出てくるわけだ。それに対してわしはな、恋愛に基づいて人生を構築すれば、その愛は永遠のものになるということを証明したんだよ」

    P159
    「さっきも言ったけど、なんだか鏡に映った自分の顔がピンとこなくて……。昔はかわいらしいって感じだったんだけど、いまそこに映ってる私は、あまりにも美しすぎる……。あなたは思春期が終わったからだと言ったけど、それだけじゃないような気がするの。だって、ここに来たときにはもう十八だったんだから。そう、私をここまで美しくしてくれたのは彼なのよ」
    「整形手術でもしていただいたのかしら?」
    看護婦は軽蔑しきったように言った。
    「いいえ、私を愛してくれたからよ。ほんとうに愛してくれた……」
    「あなたは背が伸びて、スリムできれいになった。船長とは何の関係もないわ」
    「身体的にはそうかもしれない。でも顔に関しては違うわよ。もしこれだけのすごい愛を受けなかったら、いまの輝きと美しさを得ることはできなかったと思う」

    P163
    「ええ、変わってるかもしれないわね。ひどいことをされてるっていちばん最初に思ったのは私だもの。船長の悪行は数え切れないし、とても許せないものだったわ。だけどひとつだけはっきりしてることがあるの。それはこの人が私を愛してくれてるってこと」
    「すばらしいお話ねえ!」
    「ええ、こんなに激しく人を愛するってすばらしいことよ!この家にいるとほんとうに愛されているという感じがするんだもの」

    P175
    彼は彼女を腕に抱きかかえた。そして愛人の顔を両手ではさみ、じっと見つめた。すると彼女のほうから唇をさしだした。

    ☆きっかけは容姿をテーマにした本を紹介するyahooレビューを見て。


    読了日:2010/08/03

  • こういう愛もあるんだろうねぇ、と思いながらも、第一次大戦後という時代だからこそ、という気もする。
    2つ用意されているエンディングには驚いたけど、私は最初の方が好みかな。

  • 新作が出ていることに気が付いたときはとてもうれしかった。
    やっぱり最後が投げやりすぎる。あれじゃ納得できない!

  • 孤島に何年も籠って住む元船長が病気になったので、ナースが看病と治療に選ばれて行くことになったが、多大な報酬を貰うにはある約束をさせられた。
    質問を一切しないこと、娘の外見についてなにも言わないことを約束させられ、ナースはアゼルと向き合うが・・・
    プロットが巧みでストーリーを楽しめるこの小説は、面白いことに作者は読者にふたつの結末を用意している。
    どちらの結末を選択して楽しむかは、読者に任されるようである。

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