「たえず書く人」辻邦生と暮らして

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120039317

作品紹介・あらすじ

美や愛、生と永遠のすばらしさを生涯書き続けた小説家・辻邦生。その素顔と作品を半世紀をともにした夫人が綴る。

感想・レビュー・書評

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  • 以前、御茶ノ水女子大教授の辻佐保子氏と話をしたことがあります。
    凛としてきびきび動く人というハードなイメージが強かったのですが、この本での夫を見つめる目は温かく、そばにいて作家である夫の苦悩を見守り、支え続けた様子が描かれています。

    流麗な世界が構築された長編大河小説を得意とする辻邦生について、妻の視点からまとめたエッセイ。

    作家の夫と美術家の妻という芸術家夫婦は、違う専門でありながらも、深い理解で結ばれていたことがわかります。

    美しい文章ながら、難解でとっつきにくさもある作家ですが、その孤高の苦しみをそばで見てきた妻の目を通すと、硬質な作品も温かみを帯びたものに思えてくるのが不思議。

    超大作をどうやって頭の中で構成しているのかと、読みながらいつも疑問に思っていましたが、邦生氏の
    「もうすべてできちゃった。くしゃくしゃに丸めた紙にもう書いてあるから、あとはそれをゆっくり伸ばすだけだよ」
    というセリフが、その答えのような気がします。
    構成力、構築力はやはり一般の人の比ではないのでしょう。

    完璧で近寄りがたいイメージのご夫婦でしたが、「幽霊が怖くて一人で寝られない夫」と「銀行でお金を下すこともできない妻」だったと知って、2人とも一人では生きていけない心細さをかかえた人間らしい面があったんだと知りました。

    現実社会とは一線を画している作品世界に思えていたので、最後の小説となった『光の大地』はオウム真理教事件からヒントを得たということも驚きでした。

  • 本篇と合わせて読まないと。

  • 辻邦生氏の妻として全集の月報のために著作した作品とその著作をしていた時期の思い出などを綴る。「背教者ユリアヌス」を「ユリちゃん」。「春の戴冠」を「ポチちゃん」と夫婦で呼び習わしていたことなど、あの辻氏が・・と思うような意外な一面を知ることも楽しいが、作家の著作におけるすさまじい執念と深い思惟・知性に、辻氏への尊敬の思いが募る。乱読のわが身、そろそろじっくりと物語を広げたい気分になった。

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著者プロフィール

早稲田大学文学学術院文化構想学部講師(任期付)。専門はアメリカのステージ・ミュージカルやミュージカル映画、ラジオ・ミュージカルの作劇法。
「ミュージカル『特急二十世紀号に乗って』における楽曲の機能」(『早稲田大学大学院文学研究科紀要』59、第三輯、早稲田大学文学研究科、2014年)、「ミュージカル『ビリオン・ダラー・ベイビー』における号外の機能とその劇的意義について」(『表象・メディア研究』7、早稲田表象・メディア論学会、2017年)、“‘Salute to Radio’: The Self-reflexive Artistry of Betty Comden and Adolph Green in Fun with the Revuers” In. Studies in Musical Theatre. (2020年度中に掲載予定)。

「2020年 『演劇と音楽』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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