蛙鳴

著者 :
  • 中央公論新社
3.85
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本棚登録 : 176
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120042409

作品紹介・あらすじ

堕せば命と希望が消える。産めば世界が必ず飢える。現代中国根源の禁忌に莫言が挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 中国の一人っ子政策を題材とした小説.陰惨な堕胎政策と跡継ぎの男児を誕生を望む人々に翻弄される人々の姿を書いている.しかし,笑いや悲しみや政治的な言及はあるものの,結局は小さくまとまってしまった作品だと思う.大躍進にも触れず,産児制限という重大な人権侵害も結局は肯定してしまっていてモヤモヤとしたものを感じる.

  • 大江健三郎氏がモデルと思われる日本の小説家にあてて、中国の田舎町に暮らす劇作家「オタマジャクシ」は、高名な産婦人科医であった伯母の生涯を書き綴る。
    日本軍占領下から、産めよ殖やせよの掛け声のもと、次々と子どもが生まれた時代へ、一転して「一人っ子政策」のもと、不妊手術と堕胎に邁進し、文革の下の裏切り、そして金さえあれば、自然の理をゆがめてまで子をもつことが可能になった現代へ――。
    とても同じひとつの国、ひとりの人間の生涯に起きうることとも思えぬほどのすさまじい社会変動だが、それは多かれ少なかれ、日本もたどってきた軌跡でもあった。しかし、子宮にまでおよぶ国家の統制権力に身を捧げたことによって、優れた産婦人科医であったこの女性は、「子授け娘娘様」の権現、血に汚れた手をした悪魔という、2つのイメージに引き裂かれてしまうのである。
    国家の人口統制を遂行した伯母たち、それに巻き込まれた多くの男女が心身ともに傷つくのに対し、語り手の「オタマジャクシ」は、そのペンネームが示す通り、責任を自らはとることなく、流れに身をゆだねて生き残ってきた知識人の罪悪感を終章で劇のかたちで吐露するのだが、それでもどこか余裕を感じさせる語り口は、自ら血を流してきた女たちの恨みや罪悪感とは遠い。今後、よりさまざまな書き手により挑まれるべき主題だろう。

  • 3.85/169
    内容(「BOOK」データベースより)
    『堕せば命と希望が消える。産めば世界が必ず飢える。現代中国根源の禁忌に莫言が挑む。』

    著者:莫言 (ばくげん) 
    訳者:吉田富夫
    出版社 ‏: ‎中央公論新社
    ハードカバー ‏: ‎476ページ

  • 中国の小説をたくさん読んでいるわけではないが、今まで読んだものはどれも、登場人物それぞれの生きるパワーにあふれていて、そこに圧倒される。妬んだり、悪いことをしたり、それを悔やんだり、苦しんだり、いろいろするが、それらを踏みしだいていく生の力。この作品は、それに加えて、一人っ子政策と現代中国社会の変貌ぶりがよくわかること、そして物語の構成のすばらしいことで、読んでよかったと思える作品であった。

  • 圧倒的な構想力、広い世界観、やはり莫言はすばらしい。さらに、訳が秀逸。

  • 「堕せば命と希望が消える 産めば世界が必ず飢える」

    この本の帯の言葉の真意が気になるのです。
    読みかけたけど数頁で挫折。


    今じゃないみたい。
    また読もう。

    ノーベル文学賞を受賞した莫言さんの作品。

  • 中国のノーベル文学賞作家、莫言の最新(2011年)長編。
    現代中国が抱える大きな命題の一つ、一人っ子政策(計画生育政策)の物語。
    作者の故郷である山東省高密県を舞台に、一人っ子政策が実施されてゆく過程を描く。
    主人公の家族・親族、近所の人々との婚姻関係の中で、人々がこの政策の必要性と、子供を産むべきという自然の摂理(あるいは儒教道徳)との間で葛藤。
    一人っ子政策の実施=中絶という悲しい行為を、国の政策として冷徹に実施する元・産婦人科医の伯母。
    それを逃れて産もうとする人々との騙し合いがコミカルに描かれてもいますが、一方では子供のいない夫婦のための代理出産という暗部も。

    主人公の一人称で、日本人の作家(大江健三郎をモデルにしていると思われる)への手紙という形式で物語を展開。
    そのため台詞は「」で囲まれていないという珍しい形式。
    そしてやはり、最後はイマイチ不明w
    主人公の息子を産んだのは、どっちの女性?(^O^;

    ニン、トン♪

  • ノーベル賞とられたのでしたっけ
    いつかは、とりそうな、そんな大河的な小説をお書きの方です。
    今の中国を見ていると、自分の国礼賛の作家か?などと思っちゃいそうですが、この方のはそうじゃありません。
    というより、作家というのは、本来、批判的なものかも
    そんな、昔ながらの作家像を体現されているような気もします。

    読むときは長編なので腰をすえるという感じですが
    ずしーんと腹にきます。

    「一人っ子政策」という響きが可愛らしく
    また、人口増加の抑止のためという、
    言葉面では、いいもののような感じがしますが
    血肉、感情を伴う人間たちがそれを行う
    悲喜こもごもが書かれています。
    主人公のおたまじゃくし(精子を表している?)の
    伯母さんは、腕のいい産婆(助産師)
    そして、一人っ子政策の推進委員として、
    堕胎を率先して行う立場となります。
    これは正しいこと!正義なのだ!という行政と
    子供がいなかったら、働き手、後継ぎがいないじゃないかと
    反発する農家との壮絶なバトルの歴史です。
    正しい、正しいと言い張っていた伯母さんは
    自分の子をもたず、そして蛙の鳴き声が
    赤ちゃんの泣き声に聞こえます。
    タイトルはそこから来ています。
    人形のシーンにうるっときました。
    無駄な伏線もなく、全て国の政策に翻弄される人たちを描いています。
    どうして、そこに芝居の脚本が入ってきたのかちょっと戸惑いましたが、そこは作家の実験だったのかも。

  • 読み終えた瞬間に、ずるい!と思った。
    誰に対してかというと、主人公のオタマジャクシに、だ。
    結局のところ、彼は人生の「勝ち組」である。
    亡くなった最初の奥さんに対して生涯申し訳ないと思っている、とはいえ、
    結果的には人生のステップになっているのだ。
    その上、いいこと悪いこと、辛いことも嬉しいこと、自分の波乱万丈すべてを、
    世間へのアピールの道具にしている。
    小説の中では、彼は主役でありながら時には傍観者、時には演出家だ。
    他者に演技指導はするけれど、自分自身の態度をはっきり言うことはない。
    だからずるい!
    中国の産児抑制の状況がリアルにつづられた作品として、たいへん
    興味深く読める。それは国の方針を忠実に実行する伯母さんや
    二番目の奥さんのチビライオン、さらに地下で試験管ベビーを誕生させる
    事業を営む男たちなど、個性あふれる配役あっての成果である。
    そんなところからも、オタマジャクシの手腕は優れていると思うのだ。
    すると、だんだん、作者と主人公を重ねてみるようになっていく。決して
    そうではないと思うのだが。
    なんだか、作者の思うつぼ、みたいな読み方、感想になってしまったな。

    なお、翻訳書が、翻訳者のフィルターを通して伝わるものであることを
    実感する読書でもあった。
    中国を描いた作品の訳語には、猥雑な言葉、勢いのある言い回しがよく
    使われる傾向にある。確かにそういう側面を感じる人も多いかも
    しれないが、今回はなぜか気になって仕方がなかった。
    他国語の翻訳書でどんな言葉が使われているのか知りたいところである。

  • 2013/4/30(火)の中国語教室でこの本は読みやすいと紹介があり、いつか読んでみようと思ってます。

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著者プロフィール

中国・山東省高密県出身。小学校中退後、1976年に人民解放軍に入隊し、執筆活動を開始。『赤い高粱(コーリャン)』(1987年)が映画化され世界的な注目を集める。「魔術的リアリズム」の手法で中国農村を描く作品が多く、代表作に『酒国』『豊乳肥臀』『白檀の刑』など。2012年10月、ノーベル文学賞を受賞。

「2013年 『変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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