増補新版 イスラーム世界の論じ方

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048340

作品紹介・あらすじ

日本の言説空間の閉塞状況を乗り越え、イスラーム世界の全体像を理解する枠組みを提示し、真の「対話」の可能性を探る。サントリー学芸賞受賞作(思想・歴史部門)に新たに8篇の論考を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 911から20年経った。改めてどういうことだったんだろうと思い、NetflixでTurning pointを観る。イスラーム側のことが知りたくて、その後、著者のイスラーム国の衝撃を読み、この本を手に取ってみた。

    全部は読んでいないがエッセイのようで、興味のある所を読むだけでも面白い。改めて、自分たちが感覚的にはわからないところがあり、しっかり勉強しないと現実には対話できないだろうなと思った。

  • 本学のOPACはこちら↓
    https://nuhm-lib.opac.jp/opac/Holding_list?rgtn=017659

    イスラム世界を日本や日本語という局外で語ることにまつわる様々な問題を、日本の読者におもねることなく、鋭くばっさりと論じており、ずっしりときます。これも大部の本で、完全には読み終えておらず、お勧めするのは気が引けるのですが、論説集ですので、一編ずつ、どこからでも読んでいけますから大丈夫です、と言い訳しておきます。

  • 11月24日読了。著者の論文、寄稿文、エッセイ風なものまで種々雑多な文章を掲載。2016年初版なので、少し情報としては古いかもしれないが著者のイスラームに対する考察の軌跡が分かる。第1章の「アラブが見たヒロシマ」では、「日本は、「ヒロシマを世界へ」というメッセージを(安易に)打ち出すが「ヒロシマ」によって世界に何を伝えたいのかがはっきりしなければ、当然伝わらない」とし、アラブ諸国での理解は「原爆投下という悲劇を繰り返さないためには、「当然、二度と投下されないように力を蓄える」という決意を日本人が固めている、というものだという。これにはかなりのショックを感じた。
    第8章「乱反射する鏡像」では、東洋的宗教はどちらかというとスピリチュアル的であり、イスラームやユダヤ教は立法主義的、キリスト教は律法主義的と霊性主義のはざまで緊張関係を保ちつつ解決すべき課題として対峙しているようである。
    個人的には第6章のロレンス再訪(アラビアのロレンス)を興味深く読んだ。第9章『われわれにとって「イスラーム」とは何か』では井筒俊彦批判を試みているが、これは今現在も論争の中にあるのだろうか。議論の先が知りたい。

  • [彼我の遠さを離陸点として]日本語でイスラーム世界を語ることはできるか,そしてできるとすれば,それはどのような方法に則るべきかを徹底的に考察した作品。著者は,『イスラーム国の衝撃』で毎日出版文化賞・特別賞を受賞した池内恵。

    感覚的な表現になりますが,思考を本気で切り結んでいるなというのがびしびしと伝わる一冊。文明間に横たわる絶望的な距離を正しく認識しながら,それでもそこから何とか前に進もうとする意志に研究者としての誠意と善意を感じました。決して易しい作品ではないですが,それでも読む価値は十二分にあります。

    〜現在われわれが直面しているグローバルな思想的課題は,対話が成立することは自明ではないという前提を踏まえたうえで,いかにして摩擦を対立に発展させずに共存するかといった形でとらえたほうがよいのではないだろうか。〜

    イスラーム世界を考える上で不可欠な一冊になることは間違いなし☆5つ

  • イスラム教を理解するための決定版!本書を読むことでムスリムと共存していくことを考えるための基盤が築けると思う。民主主義や他宗教との共存は慎重に行うことが必要で、無条件に可能であると考えるにはあまりにナイーブであることが理解できる。

  • 通読はしてない。増補部のみ目を通した。

  • ・「イスラームは実は寛容な宗教だ」というような日本的な、理解可能な部分だけをきりとった「イスラーム理解」よりも、イスラーム教の政治性やジハードを正当化する論理、そして彼らにとってアッラーやコーランが「現実」であることを直視したアプローチの方が、建設的であるはずだ。

    ・日本では中東のニュースはそれがアメリカと関わってくるときだけ注目される。

    ・中東問題の責任はアメリカにあるかのように論じる説があるが、違う。根本の原因はイギリスが結んだ約束である。

    ・ムスリムに対する政策
    イギリス : 多文化主義。
    フランス : 同化主義寄り。

    イギリスが寛容なように見えるが、「イスラーム教が他の宗教より優れている」ことがムスリムにとっては「現実」なのであり、それを認めない人は罪のある異教徒となる。多文化主義の中に暮らしていれば彼らはジハードをする理由を増やしていくことになるだろう。一方、フランスの政策は国に入ってくる時点で西洋的価値観を認めさせる。

    ・ 2006年のノーベル文学賞受賞者はトルコのオルハン・パムクだった。これはイスラーム世界からヨーロッパに渡ってきて自らの文化に由来する障壁を超えて近代に到達しようとする道筋、そしてそこで生じる政治世界の葛藤と摩擦を書いている。このようにイスラーム世界との摩擦がある中で「(こちらがイスラーム世界に取り込まれるのではなく)彼らの方が西欧世界に歩み寄る」というストーリーに賞をあげるのはひとつのメッセージ。村上春樹の小説は可能性があるも、受賞によって世界に発するメッセージの点から優先度は低い。

    ・中東には近代化を通り越してグローバル化とIT化の波がくる地域もある。

    ・日本の「お上」信仰。壬生狂言では後から来て弁論巧みに免税権を奪い取った皿売りよりも、先にきていたのに弁がたたず勝負に負けた太鼓売りが皿売りの商品を感情に任せて全て割ってしまう。代官はその行為を褒め称える。つまり、「交渉や弁論を努力しなくてもお上はちゃんと真面目さを見ていてくれる」という意識の表れ。アメリカという「お上」に中国や北朝鮮との外交問題を期待し自分で世界に向けて説明したり説得する気概はない。

  • 分厚い!500ページ超え。
    新聞や雑誌のコラムを集めた本。
    それぞれわかりやすい文章だが、これだけ集めて読むのはしんどい。

  • 日本の言説空間の閉塞状況を乗り越え、イスラーム世界の全体像を理解する枠組みを提示し、真の「対話」の可能性を探る。サントリー学芸賞受賞作に新たに8篇の論考を収録。

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著者プロフィール

東京大学先端科学技術研究センター教授。専門はイスラーム政治思想史・中東研究。著書に『アラブ政治の今を読む』(中央公論新社)、『増補新版 イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社)『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)、『シーア派とスンニ派』(新潮選書)など多数。

「2022年 『UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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