- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120056208
作品紹介・あらすじ
「好きでやってることだすけな、仲間っこが来てければ嬉しいよ」
趣味もなく学校でも進路に迷っていた綾。でも「ひし形屋」で、より子先生に南部菱刺しを教わって、世界が一変した!?「魔女の菱刺し工房」
母が認知症となり、接し方に悩む香織。より子先生と一緒に無心で刺している中、あるアイディアを思いつく。「ひょうたん」
長らく引き籠もっていたより子の孫・亮平。より子は静かに亮平を見守っていたが……。「真麻の聴色」
苦しい時、嬉しい時、そして誰かを想う時。布の目を数え、模様を作る――。
青森の南部菱刺しをテーマに描く、手芸×再生の四篇。
感想・レビュー・書評
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「菱刺しをすると手指が満たされる。
そうすると気持ちも満ちるから不思議だ。」
菱刺しに魅せられて、より子先生の人柄と技量に導かれて工房に集う人々。特に最後の孫の亮平の再生の物語が良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
青森南部に伝わる「菱刺し」
自宅で菱刺しをしている「より子先生」に集まった4人と引きこもりの孫。
それぞれが何かしらの悩みを持っているんですが
より子先生と菱刺しをし、美味しいものを食べ、世代の違う仲間を作る事で癒されます。
これ泣けます!うっかり3回ほど泣きました(꒦ິ⌑︎꒦ີ)
より子さんが可愛い!南部弁が最高!
嫁入りの話のくだりを待合室で読んでて慌ててしまったε~( ̄、 ̄;)ゞフー
装丁も可愛いです〜♪
菱刺し…ポチッと調べてみてください。
素敵ですよ‹‹\(´ω` )/››
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2023/07/26
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2023/07/26
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2023/07/26
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青森南部に江戸時代後期から伝わる刺し子の技法のひとつ菱刺し、伝統工芸を通じて再生する4編いや5編かも!?
八戸にある、お婆ちゃん先生のより子さんの工房。東側に名久井岳とゆう山が見える場所にあるらしい。そこで菱刺しを習う人たちの日常を中心に展開して行くストーリー。
スマホやパソコン、メールにSNSと現在の便利なアイテムが登場する中に一手間一手間作り上げる伝統の菱刺しは相反する存在のようなんですが、程良く生活の中に溶け込み受け継がれてゆく絆を感じました。
語り手が次々変わってゆくのですが章を重ねるごとに深みが出てきて立体感が増してゆく手法は秀逸で、繰返しの中から生み出される模様が人生と重なり見事な作品になっていて。ネクタイとか、スマホカバーに仕上がったりが素敵でした。
一般人が一生の内で経験できる悩みや痛み、苦しみといった類いのほとんどが網羅されてて向き合うことができます。親子の確執、進学、就職、結婚、子育て、親の介護といった問題です。
生徒さんたちの手に寄って、それぞれの人生の四季を彩る1枚の暖簾が完成した。見上げると吉兆の兆しを知らせる彩雲が空に掛かっていた。 -
青森県南の太平洋地域に伝わる、偶数目を拾う南部菱刺し。
より子が運営する菱刺し工房を軸に、集う人々を描く。
何度も泣けて、こころあたたまる物語。
地道に着実に進めていく、菱刺しの作業。
地に足が付き、没頭させる作業が、心を穏やかにさせ、それぞれの悩みを解決していく。
より子の、相手のそのままを受け入れるおおらかさ。
色のハーモニーや、糸の色の名前の美しさ。
おだやかであたたかな、工房の雰囲気が心地よかった。
それぞれの苦しみや、より子の回想など、何度もぐっときた。 -
青森の伝統工芸、"菱刺し"を絡めながら、家族の物語5編で繋がる短編集。
ひさびさに本気で泣けた。
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言葉にはできない溢れる思い。
大切な人に伝えられるとしたら…。
それを可能にした菱刺しと菱刺し工房に集う仲間たちのリスタートの物語。
菱刺しは青森県に伝わる刺し子。
その模様の一つ一つには意味がありました。
・女子高生綾は職場の人間関係に悩む父親に、
・結婚の決まった結菜は残していく父親に、
そして父親は嫁ぐ娘に、
・母子家庭で育てられた香織は施設で暮らす認 知症の母親に、
登場人物たちはそれぞれ大切な人に菱刺しを贈ります。
菱刺しは忘れていた記憶を呼び覚まし、見落としていた思いにも気づかせてくれました。
また菱刺しには、たとえ間違って針を刺してしまっても何度でもやり直せるという特徴も。
失敗しても大丈夫。
自信は無くてもとりあえず前に。
一針一針進む姿は、まるで人生の歩みのよう。
リスタートは、いつでも、どこでも、何度でも。
温かく励まされたような気持ちになれる作品でした。
癒やされます。
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青森県南部に江戸時代から伝わる刺し子の技法「菱刺し」。その菱刺しに魅せられた人たちを描く群像劇。全4章。
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物語の柱になるのは2つ。主要人物たちにとって心の糧となる菱刺しと、その技法を手ほどきするより子先生です。
菱刺しは、その地味ながら美しい紋様や彩りで現代でも愛好家がいるほどですが、元は江戸時代に貧しい庶民たちによって考案された、実用第一の生活の知恵でした。
綿の栽培が思うに任せぬ本州最北県の青森。麻の衣類で長く厳しい冬を乗りきるためには保温性を高める必要があります。
目の粗い布地の隙間を麻糸で埋め縫いすることによって、風を通さず、体温も逃さず、さらに着物の強度も増すという一石三鳥の技法が菱刺しです。本当にすごい知恵だと思います。
でも、菱刺しのいいところは、「誰でもできる」という点にあるのではないでしょうか。
多少の修練は必要だけれど、複雑な手技がいるわけではないし、しくじってもそこからやり直せばいい。だから時間と根気さえあれば仕上げることができるのです。
何より意匠が形になっていく喜びや達成感は心を豊かにしてくれます。ひと刺しは小さくても菱刺しによって得られるものがどれだけ大きいかは、本作を通してよくわかりました。
将来について希望も展望もない女子高生や、認知症を発症した母親への対応に悩む女性、恋人を事故で亡くした青年など、自己の無力感に苦しむ人たちを支え救った物語には説得力があり感動を覚えます。
そして工房の主宰でもあるより子さん。
彼女の持つ菱刺しの技術は優れたものであるけれど、より子さんは誇ることも衒うこともしません。ただ、にこやかに輪の中にいざなってくれるのです。
「好きでやってることだすけな、仲間っこが来てければ嬉しいよ」
気持ちに余裕をなくした人に対してもゆったり穏やかに接する姿が印象的でした。
他にも、心に残るより子さんのことばがあります。
「ぼちぼちがちょンどいいね、ぼちぼちは自分の速さだ。我は好きだよ」
「なあに、頑張りは人と比べるもんでねえよ」
より子さんにそっと背中を押され、針を持ち布地に向かう人たち。気づくと、ただひたすら布の目を数え、針を刺し模様を作ることに熱中している。
そしてそうするうちに、心の中が整理され落ち着いてくる。まるで魔法にかかったかのように。
より子さんがひとりで息を引き取った場面は悲しかったけれど、その後の、魔法使いの弟子たちが自らの足で立っていくラストシーンは、まったく感涙ものでした。
各章の主人公に合わせて文体を変えたり、青森弁を効果的に盛り込むなど、高森さんの構成の妙にも感心するばかりです。
初読みの作家さんですが、ファンになりました。 -
刺子という未知の手芸のお話。
ていねいで、文化を感じさせてくれて、
やさしい登場人物たちばかりで
温かい読後感に癒されました。
行ったことのない青森県南部
に俄然興味が湧いてきました。 -
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人へと伝わる人生の一針 大矢博子氏が選ぶ一冊: 日本経済新聞 [有料会員限定]
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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD02ABR0S3A200C2000000/2023/02/10
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菱刺しを通して、人の温かさや生き方を知っていく、やさしいおはなし。
おばあちゃんの昔の振り返りもありつつ、菱刺しと生きてきたんだなあ、と。
黙々と作業するって、自分と向き合う時間でもあり、切り替えるキッカケをくれたりするんだな、と思いました。