山の上の家事学校 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120057649

感想・レビュー・書評

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  • 男性向けの家事学校の物語。
    こんな学校が実在していたら、夫を入学させたいと思う人は多いのでは?
    かなり女性よりの考えではあるけど、こんな風に家事をする男性が増えたら、円満な家庭が増えるだろうなぁ。
    授業の内容は料理や洗濯はもちろんのこと、髪の結び方なんてものまであって面白そう。
    お料理の豆知識も参考になるものがあったりして、私も通いたい!と思った。

  • 近藤史恵さんと言えば、ビストロやカフェが舞台だったり、犬や旅を題材にしたコージーミステリーを多く読んできたが、本書は少し毛色が異なり、男性を対象とした家事学校が舞台。ミステリー要素もない。場所は大阪の、バスが30分に1本の渓流や果樹園に囲まれた山の上。コンビニも徒歩圏内にあるようなので、適度に人里離れた山の上にある学校ということで、学生の頃にあった林間学校などの宿泊施設が思い出された。主人公は妻から離婚を切り出され独り身となった40代前半の男性。妹から学校を紹介され受講してみることに。授業の内容は調理や洗濯、掃除など家事の基本で、泊まりがけでも通いでも受講可。

    日頃生活の一部となり、立ち止まって考えることのない家事についてとことん考えさせられた。親や保護者のいる子供やよっぽど裕福でメイドなどを雇える人以外、全ての人の生活に欠かせない家事。掃除、洗濯、料理…いずれも少し怠るとあっという間に生活が荒んでいく。家族や同居人のいる人、単身者など人によりその内容や負担も異なるが、本書を読み、改めて家事の大切さを知った。仕事や育児などに追われると、家事まで丁寧にやっている余裕はなくなり、誰かが多く負担することになってもそれが日常化すると感謝の気持ちすら持たなくなる。主人公がその点を大きく後悔しているので何度も家事をする人への感謝の気持ちを持つ大切さを実感させられた。印象的だったのが、(単身でもそうでなくても)家事は自分のためにするもの、という点だった。主人公も学校で家事を学ぶうち、徐々に考え方が前向きに変化し周囲との関係性も改善していっており、やはり家事は人生に直結するもので、たまにでも良いから、意識してやるようにしようとつくづく思った。

  • “家事”を通して家族の在り方や、社会システムの不足、ジェンダー平等に視点を向けたお話。
    この本の様に、生活が整って心も整うお話は共感できるし落ち着きます。
    身の回りにあるものを大切に扱って、豪華でない楽しみを持つ事、丁寧に生きる事は私にとって大きな価値のある事だと実感します。

  • 家事・子育ては女性が主体になってやるもの。
    この考え方が完全に覆る日は果たしてくるのだろうか?
    家事をこなせる人が多ければ多いほど、安全で清潔で快適な暮らしができるはずなのに、なぜそうならないのだろう?

    この物語に描かれている世界は理想の世界だ。
    自身の離婚経験から、家事の大切さに目覚め、その中にも喜びを見出だすことができることに気付く。

    こんな簡単にいけば苦労はない。でもこれはフィクションだ。フィクションが道しるべとなって、世界が変わっていけば良いなと思う。

  • 妻から離婚された男性が家事学校でのさまざまな経験を通して成長するお話。

  • やや、内容がこんなかな?って思っている通りだったけど、面白く読めました。
    うちの夫にも読んで欲しいわ!苦笑

  • チリツモで不満が溜まった奥さんから離婚を切り出された仲上幸彦。娘と妻が出ていき、やもめ暮らしを妹に危ぶまれた幸彦は、「山之上家事学校」と言う男性の家事スクールへ通う事になり…

    共感しかなかったです。男の人を差別するつもりはないですが、元妻の鈴菜と幸彦の家事に体する感じ方がまるで違う。幸彦は山之上家事学校に通う事で、自分がいかに適当にやっていたか気づいて、家事を楽しむ事を覚えたけれど、鈴菜は楽しむ所ではなかったっての解ります。それでも、家事をやって貰うではなく自分でやれる様になった点は良かったのかもしれないです。

  • なかなか主婦としては興味深い内容でした。男の人から見る家事が本当にこの作品通りなら、やっぱり舐めてるな、と思う。僕なら文句を言わず家事をする人を選ぶ、という猿渡くんの発言は若いのに昨今の流れに反してかなりモラハラ気質。最後改心した風でしたが本性はそんな簡単に変わらない気がする。仲上さんも、そこまで分かっているならもう少し早めに何とかなっただろう、と思う。まぁ、それでも奥さんとの間にズレはあるなぁ、と。そのズレこそ本質だろうと感じます。母性って強いけど、自ら踏み込む罠ですね。

  • 大阪市中心部から30分、そこから更にバスで30分、長閑な山里に佇む山之上家事学校。
    ここは男性を対象とした生活の為の家事学校である。

    この学校へ通って来るのは年代がバラバラな訳あり男性達。

    主人公の幸彦は妻に離婚を突き付けられた後、荒んだ生活を送っている。
    「外で仕事をしている俺がなぜ家事をやる必要がある?」
    とんだ勘違い野郎だ。

    幸彦のような男性は、この世の中にわんさか存在すると思う。

    家事に終わりはなく、生きている限り生活は続いていく。
    花村校長の家事に対する思いが素敵だ。

    家事を見下す男性諸君に手に取って欲しい一冊。

  • 読んだ後、前向きな気持ちになる連作短編集。
    離婚して荒んだ生活を送っていた幸彦は『山之上家事学校』に通い始める。
    男性を対象とした生活のための家事学校、という設定が面白いな。
    猿渡の「男性差別じゃないのか?」という問いに対する花村校長の回答には納得。
    参加する生徒達にはそれぞれ事情があり、物語が進むにつれて徐々に明かされる。
    家事を通して己の人生を見つめ直す彼らの姿は、切なくもあり元気も貰える。
    作中の“家事の定義”がとても分かりやすい。
    各々の家事に対する価値観の違いには、思わずドキッとしてしまう。
    家事、疎かにしてたなあと反省した。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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