フロイスの日本覚書: 日本とヨーロッパの風習の違い (中公新書 707)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121007070

感想・レビュー・書評

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  • フロイスの文章だけではなく、なんだか大家っぽい人の解説までついているのがよかった。

    にしても東西比較は面白い。なるほど、日本人って鼻が小さいから小指で鼻をほじるわけね。ヨーロッパ人はでかいから人差し指だ、と。なんちゅう説や。
    あと当然ながら、仏教をめちゃめちゃくさしているのも、ちょっとほほえましさすら感じちゃう。

  • フロイスがヴァリニャーノから嫌われているとは!
    日本史の原稿を一瞥して長文すぎるとヨーロッパ送付を拒んだり、1584年の早朝への報告時の中では「大いに慎重さに欠け、イエズス会外部の者との対話の際に、警戒すべき人に対しても口が軽く、誇張癖があり、小心者で些事にこだわり、中庸を保てない」と酷評されている。

  • 細かい性格だったらしいルイス・フロイスの覚書メモ。

    ”ヨーロッパでは・・・、日本では・・・・”と文化・風習の違いを細かに箇条書きにしている。日本に来る宣教師達の為に書かれたメモらしい。ヨーロッパから見た日本の不思議なところ、そしてその時代の日本の風習が分かる楽しい本。

    ただし、フロイスはポルトガルの田舎者だから”ヨーロッパでは・・・”の文章も本当にヨーロッパの行われていたことかは妖しいらしい。

  • 16世紀の戦国時代の真っただ中に、宣教師としてポルトガルから来たルイス・フロイス。
    彼の覚え書きの中でも、ポルトガルと日本の文化比較にスポットを当てた本。
    ヨーロッパでは○○だが、日本では××だというやつです。
    特に面白かったのをいくつかあれると、
    ・ヨーロッパでは夫婦が財産を共有するが、日本では夫と妻別々に財産を持つ。
    ・ヨーロッパでは女性が葡萄酒を飲むのを非礼とされるが、日本では女性の飲酒が頻繁であり、時には酩酊するまで飲む。
    ・我々は他人から強要されることなく酒を飲むが、日本では無理に勧めあうので、ある者は前後不覚になる。
    当時から日本は、食事の時に箸をつかっていましたが、ヨーロッパは手で食事しているようでその違いもおどろいています。

    ヨーロッパと日本が初めて交流した時期ですから、そのカルチャーショックが手に取るようにわかります。ただ、神に仕える宣教師といえど、彼らの中の差別意識は拭いがたく、随所に言葉としてにじみ出ています。

    彼らと日本人との文化的軋轢はとうぜんあったわけで、最後に代表的なエピソードで非常に気に入ったものを以下に紹介します。

    ある日、南蛮人宣教師が、日本人宣教師(改宗によってわずかながらいた)から日本の風習に従えと言われた。
    そこで、南蛮人宣教師は、「日本人のあなた方は、私たちが異なった風習の中で育ち、日本の礼法をし知らないことを考慮すべきだ」と反論。
    すると、日本人からは次のような言葉が返ってきたという。
    「そのことについては、あなた方に同情するし、一年や二年なら我慢もするが、幾年も経っているのであるから、堪えられない。なぜなら、あなた方が日本の風習や礼儀を覚えないのは、それを覚えようともしないし、それがあなた方の気に入らないからである。それは私たち(日本人)に対する侮辱であり道理にも反する。なぜなら、あなた方が日本に来て、その数も少ない以上は、日本の習俗に従うべきであり、私たちは日本の礼法をやめることはできないし、あなた方の風習に従うべきでもない。あるいはまた、あなた方が日本の風習を覚えないのが、あなた方にその知力と能力が欠けているためであるならば、日本人はそれほど無能なあなた方の教えを受けたり、あなた方を師とすべきではない」

    当時の日本人も非常に理論的だし、大人な諭し方だなと感心。これ、現代の外資系に勤める日本人とアメリカ人の上司にあてはめるといいと思います。

  • 私が読んだのは
    ルイス・フロイス「ヨーロッパ文化と日本文化」岩波文庫
    だが、ブクログにこの本がないのでこちらで登録…

    面白かった所を一部抜粋
    ・われわれの間では誰も自分の欲する以上に酒を飲まず、人からしつこくすすめられることもない。
    日本では非常にしつこくすすめ合うので、あるものは嘔吐し、また他のものは酔っ払う。
    ・われわれの間では酒飲んで前後不覚に陥ることは大きな恥辱であり、不名誉である。
    日本ではそれを誇りとして語り、「殿はいかがなされた。」と尋ねると、「酔っ払ったのだ。」と答える。
    ・われわれの間では修道士は人それぞれの事情を顧慮することなく人々の罪を責める。
    坊主らは檀那にへつらい、その罪を讃える。その収入を奪われないようにと。
    ・われわれの間では、偽善や虚偽や阿諛を大いに避ける。日本の坊主らはそれによって生活し、また生きてゆくための最良の方法としている。

  • ふしだらな国「日本」 (10/18)
    http://rimaroom.jugem.jp/?eid=222

  • ●構成
    第一章 謎を秘めた文書
    第二章 十六世紀以前のヨーロッパに伝えられた日本記事
    第三章 「日本覚書」を読む
    第四章 「ヨーロッパでは……」の補足と検討
    第五章 日本とヨーロッパの風習の相違について
    --
     1563年に、31歳で日本に来たイエズス会の宣教師ルイス・フロイスは、その後30年余りを日本での布教活動や他のイエズス会の人々の通訳、補助などを勤め、長崎で65年の生涯を閉じた。その間フロイスは『日本史』をはじめとして膨大な分量の日本に関する記録を書き残している。その中に、日欧の風習を隅々まで逐一比較し記録した文書がある。
     本書はこの『日本覚書』について、その筆者が確かにフロイスであることを証明し、『日本覚書』の成立について検証し、さらにはその具体的な記述内容を検討する。
     著者は『日本覚書』が「誰に向けて書かれたものか」を問う。普段のフロイスの文体とはかけはなれた、あまりにも簡素な記述。日本語の単語をそのまま音写しその説明を省いていることなどから、著者は『日本覚書』は同僚のイエズス会士を読者に想定した手引書のようなものであったと述べる。
     また著者は、フロイスが日本の風習について一部誤解のままに記した部分があるのみならず、ヨーロッパの風習にも、実態との齟齬があることを指摘する。これについて著者は、フロイスは16歳でポルトガルを離れインドのゴアに赴き、そこで多年過ごした後に来日したため、十分にヨーロッパ本国の慣習を身につけていなかったのではないかと推察する。
     平易な文体で分かりやすく記されている好著である。
     なお、本書と内容が類似する岩波文庫『ヨーロッパ文化と日本文化』は、本書における『日本覚書』の全文を、一件一件に注釈を付けたものであり、本書とは若干性格が異なる。あわせて読むとより深く理解できるであろう(内容の半分以上が被ることになるが……)。

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著者プロフィール

一九二一年(大正十年)、高松市生まれ。上智大学文学部史学科卒業。元京都外国語大学名誉教授。『完訳フロイス日本史』全十二巻(共編訳)にて第二十九回菊池寛賞と毎日出版文化賞特別賞を受賞。著書『南蛮史料の研究』『在南欧日本関係文書探訪録』『南蛮史料の発見』『黄金のゴア盛衰記』など。九七年(平成九年)没。

「2020年 『回想の織田信長 フロイス「日本史」より』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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