渡来銭の社会史: おもしろ室町記 (中公新書 862)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121008626

作品紹介・あらすじ

貨幣を使用するということは大地に拘束される二次元的生活=自然経済から立ち上り、三次元的生活=貨幣的経済への道を進むことであるが、室町時代こそは日本史上初めてこの貨幣的経済への道を切り開き、着実にそれを形成した時代であった。本書はこの時代を、愛欲と煩悩にかられる業のふかい人間が主役の極めて人間味豊かな経済学の視角から、興味あふれるエピソードを交え、国際的視野のもとで展望しようという試みである。

感想・レビュー・書評

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  • 1987年刊。著者は和歌山大学経済学部教授(経済原理)。


     表題は「渡来銭の社会史」だが、もう少し広く史的に「銭・貨幣」を巡る経済・社会問題(租税他、政治も若干関連する)を幾つかの側面で解読する書と言えそう。

     具体的には
    ➀ 貨幣貸の成立と、その社会的・政治的意義(中世後期の室町時代中心。一揆論も)。
    ➁ ➀と同時期に盛んに貨幣利用を進めた地域、つまり都市論(特に京都の生活の内実)。
    ③ 日本における貨幣変遷(古代の皇朝十二銭~中世の輸入銅銭~近世の三貨)。
    ➃ 中世における貨幣の日欧比較。
    ➄ 貨幣の意味に関する通史的理解。古代の呪術的・官位獲得手段(蓄銭叙位令)→中世以降の経済発展に伴う物との交換・流通機能→多数種貨幣間での交換機能(近世の三貨制度)。

    という具合である。

     教科書的な貨幣の歴史を、中世を中心にして少し深めながら、経済学における貨幣論のとっかかりの部分を、歴史の流れと歴史上の事実に即して(多少の脱線も含みつつ)解説してもらった。そんな印象の残る著作である。


     ところで、備忘録。撰銭とグレシャム法則。
     撰銭は通貨通用力を持つ権力が希薄な中、複数通貨が流通する場合、低価値の通貨を強制通用させる公権力がないため、通貨受取人に通貨選択の優先権が齎される。
     結果、良貨は悪貨を追放する。これが室町時代の現象。

     他方、グレシャム法則とは、通貨の強制的通用力を持つ権力が存在する中、額面共通なのに価値の違う通貨が流通する場合、通貨の払渡人が自らの利益のために悪貨のみを利用。
     結果、悪貨は良貨を駆逐する。これが江戸時代(特に後期)の現象。

     両者は銭の選択・選り好みの点で共通するが、内実は完全に違う。

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