医学史と数学史の対話: 試練の中の科学と医学 (中公新書 1102)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121011022

作品紹介・あらすじ

誕生時点から現実の課題にさらされ続けた長い歴史を有する医学。その医学と医学史こそ、これからの学問のモデルだと認識した気鋭の数学史家が、基礎医学の広汎な分野で活躍し、医学史分野でも画期的な業績を上げている碩学に、医学の史的展開について問いかける。対極的な専門分野にもかかわらず、脳死等の現実的課題への対応には歴史的反省の上に立つ理性的観点が必要だ、という共通の足場を確認し合い、知的対話の有効性を実証。

感想・レビュー・書評

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  • 医学史家の川喜田愛郎と、数学史家の佐々木力の対談本です。

    数学と医学という、対極的な学問の歴史を専門とする二人ですが、医学をなによりも「技術」と考える川喜田と、「ラディカル・クーニアン」を標榜する佐々木は、思いのほか近い立ち位置にいることが、対談を通して明らかになります。このことは、いわゆるポスト・モダンの陣営による科学批判に対する反論においても、両者が歩調をあわせているにも明瞭に理解できます。

    それぞれの専門分野の研究史について、両者が簡潔な報告をおこなっているところもありますが、わたくし自身その方面にかんする知識がなく、残念なことに流し読みですませるほかありませんでしたが、ある意味では古典的な学問的誠実さと、「学問のための学問」への批判のどちらも手放そうとしない、ある種の教養主義的なスタンスが強く印象にのこりました。

  •  「数学史家」の佐々木力が、「医学史家」川喜田愛郎の聞き手となって、主に川喜田が医学史を志したきっかけと試みについて述べた本。数学史とタイトルにあるものの、川喜田が語る具体的な医学とバランスの取れた数学は全くというほど語られていない。ちょっと古びた現代医学のあらましや東洋医学との関係に触れられているものの、表層的で面白みに欠ける。また、妙な謙遜や、「私は平素、何事によらず自分について語るのを好みません」と言っておきながら、自分史もかなり語っていて鼻につく。また、
     近代批判に対する反論めいた対話や、学生運動時代のレッテル貼りに対する「遅すぎる反論」など、見苦しさもあり、教養主義っていうのはこういうものなのかな、と感じさせられた。
     最終章の「臓器移植医療をめぐる省察」では、臓器移植反対の論拠に無理がありすぎやしないか。免疫反応を自然の摂理とし、それに抗する移植はおかしいというのであれば、アレルギーも自己免疫疾患もすべて放置しなければならないだろう。思慮が浅くて読んでも頭に入らなかった。
     正直読むのに苦痛を感じたが、前半部、医学史の読書案内程度にはなりそうなので、星をおまけしておく。

  • 105円購入2012-04-26

  •  読む前は、理工学で共通するものの、実践的な医学と抽象性の高い数学とを各時代毎で対比し、その相互連関を記した書と予測。
     が、読破後は、むしろ本書は、科学哲学を医学と数学という別面から光を当てた書に感じる。
     また、実践に根差している意味で納得感は個人的には高い。

     「現代の哲学は悪く自立しすぎ…悪い意味で形而上学に近く」「(人間を対象とする)医学者にとって機械論的哲学と生気論とは…両立不可能ではなく…常に対面する…哲学の二形態」「『モダン』について知らない者が『ポストモダン』(を滔々と論じる)とはどういうこと」が例。
     さらに「近代科学が…完結した体系を構築しうると考えるのは…現場を知らない門外漢、…幻想…。それにもかかわらず、科学者は…探求を続行…。…このような理性のあり方が…人間精神にふさわしい…。近代科学は…弁証法的批判性を伴ってこそ健康な営み…」というのも同様か。

     もちろん、例えば、患者の自己決定に関する医師の有りようなどに関し、著者らに対する異論もある(個人的には、施術による利益も不利益も甘受しなければならないのは患者であり、施術の内容に関しては、医師の意向よりも患者の意向が究極的には優先されると考えるが、著者らは医師の専門的知見と死を精神的に甘受できる患者ばかりではない点を重く見るのかも)。
     しかしながら、実践にも目配せを聞かせた議論には感銘を受けた。

     著者は川喜田が千葉大学名誉教授、佐々木が東京大学教授。1992年刊行。

  • (1992.12.05読了)(1992.11.23購入)
    試錬の中の科学と医学
    (「BOOK」データベースより)amazon
    誕生時点から現実の課題にさらされ続けた長い歴史を有する医学。その医学と医学史こそ、これからの学問のモデルだと認識した気鋭の数学史家が、基礎医学の広汎な分野で活躍し、医学史分野でも画期的な業績を上げている碩学に、医学の史的展開について問いかける。対極的な専門分野にもかかわらず、脳死等の現実的課題への対応には歴史的反省の上に立つ理性的観点が必要だ、という共通の足場を確認し合い、知的対話の有効性を実証。

  • [ 内容 ]
    誕生時点から現実の課題にさらされ続けた長い歴史を有する医学。
    その医学と医学史こそ、これからの学問のモデルだと認識した気鋭の数学史家が、基礎医学の広汎な分野で活躍し、医学史分野でも画期的な業績を上げている碩学に、医学の史的展開について問いかける。
    対極的な専門分野にもかかわらず、脳死等の現実的課題への対応には歴史的反省の上に立つ理性的観点が必要だ、という共通の足場を確認し合い、知的対話の有効性を実証。

    [ 目次 ]
    第1章 病い、そして癒しの術と学
    第2章 医学史への道
    第3章 医学史と数学史―あるいはカオスとコスモス
    第4章 日本の科学史・世界の科学史
    第5章 変貌する現代医学
    第6章 臓器移植医療をめぐる省察

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