- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121011138
作品紹介・あらすじ
20世紀末の現在、「ストレス」という言葉が蔓延している。一体、ストレスとは何か?言葉の生みの親セリエは、生命法則の一部という。ストレスは、生体と環境との間に起こる「さざ波」であり、人間が生存していくための意志決定が複雑な社会にあっては「生きる証し」でもある。本書は、現代文明の必然的落し子「ストレス」誕生の謎から最新研究まで、時代背景と必然性の経緯を辿り、研究・臨床両面から、対応・解消法を探る。
感想・レビュー・書評
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日常にある小さな感動を探すことがストレス緩和の道らしい
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ストレスの定義、言葉の生まれた背景など歴史的なことから、ストレス論、行動療法まで幅広く捉えられている。「ストレス」に関する概観がつかめる。
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ストレスの研究は生理学的な領域で進められた。外部の環境と生体の内部環境、自律神経のコントロールによるホメオスタシスなどをベースにセリエによる一般適応症候群が見出される。やがて物質から社会心理的ストレス因が問題視されるにいたって、生活の変化への対処や日常への認知行動といったコーピング理論が生まれ現在にいたっている。心と身体というデカルト以来の議論は、われわれのもっとも身近なところにある。
最近の学問の花形とも言える脳科学の知見も著者は早々と導入し、大脳辺縁系(下等動物にもある旧い脳)に制御される“情動”がストレス対応への源であると指摘する。生体の崩れたバランスを回復させる実動部隊、内分泌系、免疫系の司令塔である。これは精神分析における“無意識”領域になぞらえるものであり、大脳新皮質が司っている“意識”との対話が有効に行われることによって生体の健康は保たれる。
ストレス因の撲滅など不可能なことであるし、万人に通用する決定的な解消法などない。心の問題である以上、心のありようによって解決してゆくほかはない。刻々とたる“瞬間”に小さな感動を見いだせる開かれた心、それが「ストレスは人生のスパイスである」ということの意味であるようだ。