日露国境交渉史: 領土問題にいかに取り組むか (中公新書 1147)
- 中央公論新社 (1993年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121011473
作品紹介・あらすじ
一九九二年九月、日露両国外務省は、日ソ・日露間の最大の争点である北方領土問題についての歴史文書資料集を共同刊行した。今後の日露交渉の土台を提供する画期的な協力作業である。本書は、このように合意された全資料三十五点の背景と意義を分かりやすく解説することによって、十七世紀からエリツィン時代までに及ぶ両国の対立点と合意点の両方を客観的公平に浮彫りにし、さらに今後の解決へ向けての具体的提言を大胆に行なう。
感想・レビュー・書評
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領土紛争◆国境概念への目覚め◆北からの黒船◆武力による国境変更◆国交正常化へ◆高齢指導者たちの時代◆ゴルバチョフ時代◆エリツィン時代◆領土紛争解決法
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▼皆さんは「大津事件」を覚えているだろうか。そう、日本に来ていたロシアの皇太子が行列を横切ろうとして武士に切られたあの事件。「司法権の独立」に際して引用されることの多いこの事件だが、この斬捨御免にあったロシア人こそ、若き日のニコライ2世(ロマノフ朝最後の皇帝。もっとも、ロシア革命後に処刑されてしまうのだが)である。これこそ世界がつながりを知ることの醍醐味だろう。
▼さて、本題の日露の国境交渉と言えば、つまり「北方領土」の問題である。両国の認識はさておき、第二次大戦後の世界において、北海道と北方領土との間の線引きは国際法や国際社会が認めているものとは言い難い。それゆえ、確定自体はこれからしなければならないことは事実である。
▼意外に知られていない事実であるが、この問題がネックとなっていて日本とロシアは平和条約を締結できずにいる。そのため、国際法上、戦争は終わっていない。
▼領土問題とは非常にセンシティヴでもあり、また、そこに生きる人々たちのことを「忘れた」議論もされがちである。いかに"national"でなく"rational"な、「目的」としてではない国境交渉戦略が組み立てられるかが、今私たちに求められているのだ。