バラの誕生: 技術と文化の高貴なる結合 (中公新書 1391)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121013910

作品紹介・あらすじ

バラと人との関わりは古い。野生植物であったころから、素朴な美しさが我々の祖先の心を魅了していた。しかし人間は、より美しくより強いバラを求めて改良を加え始める。世界じゅうのバラが交配され、原生バラは今見るバラとなった。が、短期間に劇的な発達を遂げることができたのは、帝政ローマ時代まで遡るバラへの高貴なイメージや憧れがあったからである。本書は、そうした科学と芸術の融合の精華の歴史を繙くものである。

感想・レビュー・書評

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  • バラの植物としての歴史、園芸化の歴史をたどります。
    序章で4000年前ものクノッソスでの壁画に描かれていた花がバラなのかとも言われているらしく(これはこれで議論はあるそうな)、それだけ古くから人々を魅了していたのがわかります。

    現代のモダンローズといえるものが、中国のコウシンバラの導入によって花開いたそうです。西洋のイメージが強いバラですが、その黎明期にアジアが関わっていたというのは印象的でした。

    個人的にはイングリッシュ・ローズの興味関心があっtのですが、この本はそれよりも前の話になります。

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    園芸植物の発達は、自然界から鑑賞に値する植物を見つけるところから始まる。栽培中に偶然生じた雑種や奇形などを選択し、株分けしていくことを第二段階。人工的に異なる種や異なる系統間の交配を行って自然には存在しないまったく新しい植物を生み出す段階を第三段階と考える。※要約

    1867年はオールドローズとモダンローズの分水嶺。
    この年に最初のハイブリットティーローズ「ラ・フランス」が登場する。
    ハイブリッドティーローズは、コウシンバラとローザ・ギガンティアの交配に由来する雑種のティーローズと、コウシンバラ、ローザ・ガリカ、ダマスクバラ、キャベジローズという4つの異系統の交配に由来するハイブリッド・パーペチュアルとの掛け合わせによるものである。(P59)

  • 今年の春はバラがとてもきれいで何度も熱心に見に行った.現代のバラは人工的に作られる品種がほとんどなので,バラの本といえば趣味的な側面や園芸的な側面ばかりが強調されたものが多い.その中で,この本は植物学的観点を主にバラの歴史,植生を学術的な立場から記述したまれに見る本.こういう知識があるとバラが深く鑑賞できる気がする.

  • バラ改良の歴史、人との関わりを少し詳しく知りたい人に向けた内容。
    学問的な文章で書かれているような感じがして、園芸書のような感覚で読もうとすると、つらく感じるかもしれないです。

    20年以上前に書かれた本なので、現代・将来に関する部分は、実状と合わなくなってしまってるけれど、近代までの歴史は興味深く読むことができました。

  • 資料番号:010703551
    請求記号:627.7/オ

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:627.7||O
    資料ID:59702324

  • バラをニンゲンは、いつバラとして認識したのか?
    そして、バラが人間生活に如何に関与し、文化として、
    発展したのか?
    ということを、丁寧に明らかにしている。
    博物学の先生らしい仕事をしている。
    しかし、これは、一体どのような読者を想定しているのだろうか?
    バラの生産がどのようになっているのか?
    一切触れていないので、バラ農家や花屋さんを対象にしていない。

    バラの知識が増えたということだけが、楽しみなのか。
    バラの知識の本 ということなのだろう。
    画像も極端に少ない。バラを文字で説明する。
    こういう本を、最後まで読むのは、えらくしんどい。
    最後まで読む人は、どれくらいいるのだろう?
    まぁ。いい。とりあえず、全部読めたのだから。

    クノッソス宮殿のフレスコ画に、バラの絵が書いてある謎解きから始まる。
    そのタッチは、何ともいい感じだが、そのような推理はこの章で終わる。
    結論は、平凡すぎる。
    そして、時代は、ギリシャ、ローマに移る。
    バラの油作りから、始まる。

    雄しべが、花弁の形に変わる。そのことで、花弁の多いバラができた。
    バラの植物史を語りながら、バラの進化まで考察していない。
    バラの遺伝子の解明がされていないという限界なのか。

    大場秀章はいう
    『どんな野の花も見ようによっては美しい。美しいか美しくないかは、対象に接する人間の問題、つまり、美意識であり、花そのものの問題ではない。』

    バラは、8つの野生種で成り立っている。
    日本のノイバラ、テリハノイバラ、ハマナス。
    中国産のコウシンバラ、ローザオドラータ、ローザフェティダ、ローザモスカータ、ダマスクバラ。
    コウシンバラは、四季咲きの性質がバラに導入されることで、モダーンガーデンローズが誕生した。
    それが、1867年に、ハイブリットティーローズができた。

    バラの現在の未来
    は、あまりにも視野が狭すぎることが、残念。

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著者プロフィール

おおば・ひであき 1943年東京都生まれ。植物学者。東京大学名誉教授、東京大学総合研究博物館特招研究員。専門は植物分類学、植物文化史。理学博士。著書に『秘境・崑崙を行く―極限の植物を求めてー』『森を読む』『植物学と植物画』『ヒマラヤを越えた花々』『はじめての植物学 』『大場秀章著作選-植物学史・植物文化史』、編著に『日本植物研究の歴史-小石川植物園三〇〇年の歩み―』東京大学総合研究博物館など多数。

「2023年 『バラの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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