企業年金危機: 信頼回復と再生に向けて (中公新書 1485)

著者 :
  • 中央公論新社
3.67
  • (1)
  • (0)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 12
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121014856

作品紹介・あらすじ

企業年金とは、企業が従業員の退職時に年金を給付することを目的とした積立制度である。給付には十分な積立金と効率的な運用が必要だ。しかし、積立不足、運用難で基金の解散、給付削減が相次ぎ、年金への不安が高まっている。危機は不可避だったのか。年金財政を健全化し、受給権を保護する仕組みをどうつくるか。豊富な現場体験をもとに、資産運用の変遷、企業会計、監督官庁の役割等を実証的に分析し、再生への道を提言する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1999年刊。著者は三井信託銀行の元本店福祉営業部・年金運用部・年金企画部勤務歴あり。◆1986~91年くらいのバブル景気、そしてその後の崩壊。私は学生だったので、現実の社会事象を直接感得する立場にはなかったが、不動産価格・株価の高騰とその後の暴落、金融機関の受けた痛手(ただし自業自得感は漂う)は印象的。本書はバブル崩壊前後で企業年金の被った問題と弥縫策的解決策を時間軸に沿って解説。企業年金の制度概要にも言及。◆情報としては古いと言わざるを得ないが、規制緩和・確定拠出型年金導入に代表される自己責任原理。
    80年後半バブルが如何に日本の各制度を変容させ、それが決して適切ではない現代の在り様を規定しているかが感得できる一書として読む価値はあるだろう。◆ノーベル経済学賞を受賞した人物が提唱した投資理論をもとに運営されていたLTCM破綻に象徴されるように、数学的に正しい投資分析術が現実を常に反映しているわけではない。理論を万能視する態度は慎むべき(大塚久雄教授)。米国の自国益に即した周到な年金市場開放計画等、現代の様々な社会事情のある種の先例として読めればなお価値が増すのではないだろうか。
    PS.90~96年の株価・不動産価格減少で、家計と企業から840兆円、GDPの1.8倍ものキャピタルロスが生じた点、その後の低金利のため個人部門から金融部門へ莫大な富が移転した(93年と96年の純受取財産所得は家計部門6.4兆円減、金融部門7.9兆円強増)は、バブル失政の問題に加え、バブルそのものが持つ危険・問題を明らかにするデータとして是非記憶すべき事項のように感じた。

  • 最近では、週刊誌でも特集記事などで取り上げられることが多くなった年金問題。そんな年金の中でも特に問題が多いのが、企業年金ではないでしょうか。
    本書では、適年や基金といった企業年金が日本社会でどのような経緯で発展してきたか、そしてバブル経済でどのようなデタラメが行われ、そして様々な問題を抱えながら今日に至ったか、を長年にわたり信託銀行で企業年金に携わって来た著者が詳細な資料を用いて説明しています。99年7月の出版と言う事で、状況が変わっている点もありますが、著者の主張(特に情報開示や自己責任の強化)は基本的に色褪せることなく、基金の解散などが相次いで安易に確定給付へ移行する風潮がある中、もう一度再考する恰好の材料を提供しています。

全2件中 1 - 2件を表示

河村健吉の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×