- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121015563
作品紹介・あらすじ
1910年の日韓併合以来の不幸な状況下で来日した金素雲は、朝鮮古来の民謡や童謡を日本語訳することで、日本文壇へのデビューを飾った。それによって日本の文人たちの支持を得た彼の活動は、韓国近現代詩の日本語訳へと向かう。本書は、近代文芸の一ジャンルとして確固たる位置を獲得した二十世紀前半の韓国新体詩を日本人に紹介した金の仕事を再評価し、文化交流とはなにかを考えるものである。
感想・レビュー・書評
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1940年、金素雲(きむ・そうん)によって日本語に翻訳された『朝鮮詩集』が出版されました。当時、朝鮮では日本による文化抹殺政策が実施されていましたが、そのような時代に『朝鮮詩集』を日本で出版することは「世界文学史上あまり例を見ない」(p.15)出来事でした。
金素雲の評価は韓国内であまり高いほうではありません。佐藤春夫など日本の詩人との密接な関係であったことや、『朝鮮詩集』の詩の訳が「翻訳」というより日本語での「創作」に近いと評価されたので、「親日派」と見做されたのが原因だと思われます。
本書の著者は、金素雲には「いつ滅びるかしれない母国語への人一倍強い愛情と、母語の詩心を日本人に伝えようという使命感」(p.215)があったと述べています。その使命は十分に果たされ、日本の近代詩人たちは「金素雲の訳業を通して、『朝鮮』という『アジアの一隅の半島』の詩心の存在を新たに認識させられたのであり、同詩集から祖国を失った詩人たちの痛切な郷愁の念と亡国の思いを感じ取ることができたはず」(p.239)とさらに述べます。
私も金素雲は日本近代詩の強い影響を受けた詩人としか思っていませんでしたが、本書を読んで金素雲のイメージが変わりました。金素雲を既に知っていた方は本書を通して彼の文芸活動をもう一度考えることができますし、知らなかった方は朝鮮・韓国近代詩を味わうことが出来るのでおすすめします。
(ラーニング・アドバイザー/文芸・言語 KIM)
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