- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121016638
作品紹介・あらすじ
わたしたちの社会は、さまざまな倫理的難問に揺さぶられている。なぜ人を殺してはいけないのか。なぜ援助交際はいけないのか。行為の善悪に報いる神は存在するのか。本書はこうした難問に、旧新約聖書を軸に、ユダヤ・キリスト教思想、さらにギリシア哲学を読み解きながら答えようとした講演録である。人間にとって"象徴"がもつ意味を洗い直し、"超越"を通して現代に倫理を基礎づけようとする、喜びと安らぎへの語りかけ。
感想・レビュー・書評
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著者の五つの講演をもとにした本で、ユダヤ教やキリスト教の思想のなかに込められた知恵を読み解きながら、現代社会に生きる人びとが直面しているアクチュアルな問いに対するこたえを求めています。
著者は、現代が神を信じることのむずかしい時代であることを認め、義人が苦しみ罪人が栄える現実において、神の信仰をどのようにしてとりもどすことができるのかという神義論のテーマについて考察をおこなっています。著者はバテシェバ事件をとりあげ、ウリヤを殺害したダビデが「あなたに、ただあなたに罪を犯しました」と語っているのは、対神関係へと逃げ込むことで対人関係の罪からのがれたのではないかと問いかけています。そして、ダビデが罪を認めることによって、神に出会うとともに彼が殺害したウリヤに出会っているという解釈を示すことで、聖書の思想を倫理の次元に移し入れることが可能だと論じています。
さらに著者は、神戸の14歳の少年による殺人事件にさいして、「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いがテレビ番組でとりあげられたことや、援助交際に手を染める少女が「誰にも迷惑をかけていないのだから良いではないか」という開きなおりのことばを口にし、補導員たちがこたえに窮することがあるといった現代社会の問題をとりあげ、ユダヤ・キリスト教思想における姦淫や罪についての考察を展開しています。
講演がもとになっているということもあって、ユダヤ・キリスト教の思想についてくわしい知識をもたない読者にも理解しやすい内容になっているように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
善悪に報いる神は何処に◆いま信じるとは◆なぜ殺してはいけないか◆「姦淫するなかれ」と現代◆「驚き」の復権