倫理の探索: 聖書からのアプローチ (中公新書 1663)

著者 :
  • 中央公論新社
3.17
  • (1)
  • (0)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 28
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016638

作品紹介・あらすじ

わたしたちの社会は、さまざまな倫理的難問に揺さぶられている。なぜ人を殺してはいけないのか。なぜ援助交際はいけないのか。行為の善悪に報いる神は存在するのか。本書はこうした難問に、旧新約聖書を軸に、ユダヤ・キリスト教思想、さらにギリシア哲学を読み解きながら答えようとした講演録である。人間にとって"象徴"がもつ意味を洗い直し、"超越"を通して現代に倫理を基礎づけようとする、喜びと安らぎへの語りかけ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者の五つの講演をもとにした本で、ユダヤ教やキリスト教の思想のなかに込められた知恵を読み解きながら、現代社会に生きる人びとが直面しているアクチュアルな問いに対するこたえを求めています。

    著者は、現代が神を信じることのむずかしい時代であることを認め、義人が苦しみ罪人が栄える現実において、神の信仰をどのようにしてとりもどすことができるのかという神義論のテーマについて考察をおこなっています。著者はバテシェバ事件をとりあげ、ウリヤを殺害したダビデが「あなたに、ただあなたに罪を犯しました」と語っているのは、対神関係へと逃げ込むことで対人関係の罪からのがれたのではないかと問いかけています。そして、ダビデが罪を認めることによって、神に出会うとともに彼が殺害したウリヤに出会っているという解釈を示すことで、聖書の思想を倫理の次元に移し入れることが可能だと論じています。

    さらに著者は、神戸の14歳の少年による殺人事件にさいして、「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いがテレビ番組でとりあげられたことや、援助交際に手を染める少女が「誰にも迷惑をかけていないのだから良いではないか」という開きなおりのことばを口にし、補導員たちがこたえに窮することがあるといった現代社会の問題をとりあげ、ユダヤ・キリスト教思想における姦淫や罪についての考察を展開しています。

    講演がもとになっているということもあって、ユダヤ・キリスト教の思想についてくわしい知識をもたない読者にも理解しやすい内容になっているように思います。

  • 善悪に報いる神は何処に◆いま信じるとは◆なぜ殺してはいけないか◆「姦淫するなかれ」と現代◆「驚き」の復権

  • 旧約学者だった関根潤三の子息。現在東大文教授、倫理学・旧約聖書専攻の学者が書いた本です。善悪に報いる神は何処におられるのか?なぜ悪が栄えるのか?言うまでもなく、これが旧約ヨブ記、以来の神に関する謎であり、ファウスト、カラマーゾフへと続く問い掛けでもありました。また今、なぜキリスト教は信じ得るのか?なぜ信じられなくなったのか?無神論者はでは何を信じているのか?など講演で分かり易く語ったものの文章化したものです。分かり易いとは言いづらい内容ですが、知的な刺激にはなりました。しかし後半の、なぜ殺してはいけないのか?なぜ姦淫してはならないのか?なぜ援助交際がいけないのか?などを聖書的倫理学者の立場から語っている文章は実際的な話であるだけに、分かりづらいということは今ひとつ説得力に欠けるのではないかと思いました。

  • [ 内容 ]
    わたしたちの社会は、さまざまな倫理的難問に揺さぶられている。
    なぜ人を殺してはいけないのか。
    なぜ援助交際はいけないのか。
    行為の善悪に報いる神は存在するのか。
    本書はこうした難問に、旧新約聖書を軸に、ユダヤ・キリスト教思想、さらにギリシア哲学を読み解きながら答えようとした講演録である。
    人間にとって“象徴”がもつ意味を洗い直し、“超越”を通して現代に倫理を基礎づけようとする、喜びと安らぎへの語りかけ。

    [ 目次 ]
    第1章 善悪に報いる神は何処に―ユダヤ・キリスト教倫理の謎
    第2章 いま信じるとは―現代の中のキリスト教
    第3章 なぜ殺してはいけないか―命への驚き
    第4章 「姦淫するなかれ」と現代―聖書の性の捉え方
    第5章 「驚き」の復権―ギリシア・ヘブライ倫理の源泉を訪ねる

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

全4件中 1 - 4件を表示

関根清三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×