物語 ストラスブールの歴史 - 国家の辺境、ヨーロッパの中核 (中公新書 2027)
- 中央公論新社 (2009年10月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121020277
感想・レビュー・書評
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ストラスブールは、現在はフランスの最東部、アルザス地域圏の首府。
<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%AB">Wikiの地図</a>をご覧いただければ分かる通り、本当に端っこです。
現在は…と書きましたが、この街は独仏二大国の国境線が動くたびに両国の間で交互に領有されるという特異な歴史を有する。
ストラスブールはフランス語読みですが、ドイツ語読みではシュトラースブルクという名も持ちます。
982年 神聖ローマ帝国に帰属する司教都市シュトラースブルク成立
1681年 ルイ14世に降伏、フランス領へ併合
1871年 普仏戦争でのプロイセン勝利により、ドイツに併合
1918年 第一次大戦の結果、フランスへ復帰
1940年 ナチス侵攻、ドイツ占領
1945年 第二次大戦終結、フランスへ解放
南北に流れるライン川と東西の陸路が交わる交通の要衝ゆえに、早い時代から貿易・流通都市として商業が発達し、上述のように大国の狭間で翻弄される中で、言語・宗教が混じり合う独特の文化を育み、著者は「ヨーロッパ史の悲喜こもごもの、しかし豊かな色合いがまさしくフレスコ画のように沈着している」と表現します。
そして、21世紀の今、この街には欧州議会・欧州評議会が置かれ、ヨーロッパ統合という大きなうねりの中で名実ともに大きな役割を担うようになっているのです。
ストラスブールという街の歴史を辿ることで、数百年にわたり領地を巡って戦争を繰り返してきたヨーロッパの歴史を俯瞰することができる。
同時に、諍いの歴史を超越してヨーロッパが一つになろうとしている、今という時代のダイナミズムを改めて実感できます。
ストラスブールは、中世の早い時代から自治の体制を確立し、独仏の間を揺れ動く歴史に身を委ねながら、ドイツでもフランスでもない「アルザスの街」としてのアイデンティティを保ち続けてきました。
そのことに何だか感動してしまいます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一年以上かけて読みすすめ、実際ストラスブールに旅行しても読み終わらなかったヘタレぶり(翌々日のミュンヘンで読了)。もうちょっと近代についても言及して欲しかったかな。
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ストラスブール。
名前は聞いたことがあっても、どこかよくわからない方が
多いと思う。
フランスの端っこ、ドイツとの国境にある辺境の小都市だが、
欧州全体から見ると中央部に位置し、
EU議会の議場があり、本書の副題にあるように
「ヨーロッパの中核」と言える、ユニークな都市である。
ドーテの「最後の授業」の舞台となった、
アルザス・ロレーヌ地方の都市、というと
2大国の間で揺れ動いたストラスブールの歴史のイメージが
湧く人もいるだろう。
本書はそのストラスブールの、中世における都市形成から
現代までの歴史を地域経済や2大国の政治状況・文化的対立等を
中心に記している。
で、新書の割には結構内容が詳細で、学術的側面が強い。
都市の歴史の概略を知るにはちょっとマニアックな感じ。
よくも悪くも学者の書いた本。
あと、「国家の辺境、ヨーロッパの中核」って副題は
言いえて妙であり、いい副題だと思う。 -
特別に面白いということはありません。ストラスブルクの歴史を知りたい人には、必読書。