パリのグランド・デザイン: ルイ十四世が創った世界都市 (中公新書 2049)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020499

作品紹介・あらすじ

フランスが世界に誇る「花の都」パリ、そしてヴェルサイユ宮殿。これらを形作ったのは、ルイ十四世の治世に花開いた「グランド・デザイン」の思想だった。当時のフランスは、世界を席巻していたバロックに背を向け、徹底した計画志向の下でニュータウンを建設し、パリの街並みを整備し、ついにはヴェルサイユ宮殿を造営した。駆け引きに満ちた宮廷政治と、個性豊かな建築家たちの物語を通して、近代都市の源流に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 割と読みやすかった。マリー・ド・メディシスがイタリアからさまざまな文化を輸入したところから一種の文明開化がフランスで始まり、建築にまつわるさまざまな技術の発展と相まって、パリの街並みの土台が形作られていくのを追うのが、読んでいて面白かった。

  • こういう都市デザインと日本の都市デザインの違いは何か

  • 花の都と呼ばれる大都市・パリの、都市計画の源流をみていくのが中心の本。アンリ四世からルイ十六世まで、ざっと五代の王の時代の建築と都市整備をたどります。まず本書は、リシュリュー枢機卿という人物からはじまります。鉤鼻で、権謀術数にたける策士といった風貌で、デュマの『三銃士』では悪役として描かれていますが、まあ、実際は権力争いで苦労しながらも生き延びた人でもあるようなので、実際、政治力があった人物なのでしょうが、その名もリシュリューという小さな町をつくっていて、その街のすぐれた美的であり機能的であるデザインこそが、その後のパリの都市整備(当時は「美装」と呼んだそうですが)の源流と位置付けられそうなのでした。いわば、結果的に、リシュリューは、その後のパリの都市計画にむけた先駆的なイメージを持っていた。建築も都市整備も、そこに住んだり行き交ったりすることになる人々の動線を考えるし、建物や街並みのデザインの美しさ・芸術性も考えて、などなどいろいろな面をミックスして、建築家の思う「これだ!」という良いところで落とし合わせて案として完成する。そして建築アカデミーの会員たちのそういった案を集めたコンペ(設計競技)で、実際に施工するデザインを決めているのですが、そこには、権力争いや利権も絡んでいる場合もあったようです。読んでいてふと思い浮かんだのは、20年くらい前までが最後だろうか、いい車を持っていることがステイタスっていう価値観がありましたよね。そういうのを遡っていくと、王様だとか宮廷貴族による宮殿などの建設、つまり建築こそが、ステイタスを誇るいちばんの手段というところに行き着くなあと。でも、一呼吸置いて再度、あたまの中をめぐらしてみると、ステイタスを誇ることは確かにあっても、芸術をそこに作りあげる欲望、美的な渇望があるなあとわかってきました。

  • 1 リシュリューのニュータウン
    2 森の城館
    3 フランソワ・マンサールとフランス古典主義
    4 王の寝室
    5 アカデミーと新旧論争
    6 ルイ十四世の都市計画
    7 ルイ十五世広場の設計競技
    8 穀物取引場とフリーメーソン

    著者:三宅理一(1948-、東京、建築史)

  • [冠たる都市の冠たる設計]卓越した都市計画の上に成立し、今日においても世界中の人々を魅了し続けるパリ。リシュリューやルイ十四世の時代にその淵源を求め、建築に関する数々のエピソードを紹介しながら、グランド・デザインの背景を探っていく作品です。著者は、フランス政府から学術交流の業績に対して学術教育功労勲章を受章している三宅理一。


    都市計画に関する技術的側面のみならず、その背骨を形成した思想や価値観まで掘り下げて解説してくれているところが白眉かと。どのような歴史的推移を経てパリという街が成立したかが図面とともにわかりやすく解説されており、パリやフランスに興味を持つ人にとどまらず、広く建築に興味のある方にオススメしたい一冊です。


    建築家が当時の宮廷グループの一員をなしていることが多かったこともあり、パリをめぐる「人間臭い」エピソードが魅力的なの点も本書の魅力の一つ。ただ建築的な才のみならず、コンペや役職を獲得するために政治的手腕を必要としたことや、土地取得のための利権絡む手続など、今日に置き換えても「ありそう」と思える話の数々が、本書を無味乾燥な解説書とは一味異なったものに仕上げていると思います。

    〜ルーヴルから始まった一連の君主のための宮殿計画の行き着いたところが、世界の絶対中心としてのヴェルサイユなのであり、その後の時代はその絶対的秩序を緩やかに崩し、ロココ的な分散空間へと移っていくのである。〜

    普段自分があんまり読むことのないタイプの本でしたが☆5つ

  • フランス建築の歴史。
    パリは(ナポレオンⅢの都市大改造)綿密な都市計画のもとに、今の姿があるが、それはそのころ唐突に始まったのではなく、ルイⅩⅢひいては、その父親アンリⅣあたりから、国家が都市と田園のあるべき姿を模索し、その公共性の思想のもとにいろいろな建造物が建てられていった軌跡を追ったもの(コンペに参加した建築家、当時の権力闘争etc....背景が非常に詳しく、興味深い)。
    フランスの旅のお供に、これを読みながら、建築探訪すると、より楽しめるに違いない。

  • 面白いっすわ。

  • パリの都市計画というよりも、主たる宮殿や広場の建築、設計に関わる話です。舞台としては太陽王ルイ14世の時代前後です。個人的には、都市開発的なものを予想かつ期待していましたが、そうではなかったので、ちょっと残念です。

  • 都市というよりも宮殿建築のデザイン紹介の本であり、グランドデザインというタイトルが?であった。

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著者プロフィール

1948年、東京に生まれる。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程を経てパリ・エコール・デ・ボザール卒業。工学博士。芝浦工業大学、リエージュ大学、慶應義塾大学、パリ国立工芸院で教鞭をとり、藤女子大学副学長を経て現在、東京理科大学客員教授。建築史、デザイン理論、遺産学を専攻。ポンピドーセンター、ヴィトラ・デザインミュージアムなどで多くの国際展の企画をおこなう。瀋陽市ユネスコ世界遺産登録の業績に対して瀋陽市栄誉市民、日仏学術交流の業績に対してフランス政府より学術教育功労勲章(オフィシエ等級)を授かる。

「2019年 『安藤忠雄 建築を生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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