- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021991
作品紹介・あらすじ
アフリカを「援助」する時代は終わった。新興国をはじめ、世界中が凄まじい勢いで食糧、石油やレアアースといった鉱物資源を呑み込んでいく現代。これらの需要に対する供給源として、アフリカの重要性は突出している。いまアフリカとの経済連携は、中国が一頭地を抜く。世界各国がそれを追うなか、さらに大きく遅れている日本に挽回の余地はあるのか-。広大なアフリカ大陸を舞台に、世界の未来と命運とを描き出す。
感想・レビュー・書評
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中国すごい。
先進国でも貧困国でもない、世界の中での独自の立ち位置を正確に把握し、かつ自国の利益や打算も現実的に加味した、建前や理想論に振り回されない対アフリカ政策。
「北京コンセンサス」、読む。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<総評>
本書は、アフリカの「リアリティ」を客観的なマクロデータにもとづいて浮かび上がらせている。開発経済の専門的リテラシー(高度な計量経済・統計分析を用いなくても)を用いずにここまでアフリカ(そして世界の)開発問題の全体像を、えぐりだした筆者の力量は素晴らしい。アフリカの開発が低調だった時期から一貫して現地に駐在してきた平野氏だからこそ書けた内容かもしれない。
マルサスの人口論や、(単にそう労働人口や労働単価だけでなく)人的資本の観点における東アジア・南アジア・アフリカの比較、(ただでさえアフリカの土地は肥沃度が低いのみ)気候変動によってアフリカが被る被害などについても、触れてあるとより多面的な議論になったかもしれない。一方で、これまでの国際開発のアプローチがほとんど効果を上げられなかったアフリカにおいて、資源高を背景にした中国のビジネス=援助ミックスの展開によって地殻変動を従来では考えられないスピードで起こしている、という本筋がブレずに簡潔にまとまっていると思う。
<各論>
◆第1章 中国のアフリカ攻勢
・将来の資源需要を見込んで、アフリカにビジネス=援助ミックスを早くから展開していった中国のブレーンの慧眼は見を見張るものがある。
・現地雇用が少ないのは、アフリカの「高賃金体質」という指摘は鋭い。
◆第2章 資源開発がアフリカを変える
・資源価格が高止まりするようになったことが、中国のアフリカ進出を進め、アフリカの開発に変化をもたらしたのであれば、それは先進国の成熟と(民主化を契機とする)中国の消費増大によって、原油および鉄・レアメタル等の資源の需要増大することが必要条件だったのかもしれない。
◆第3章 食料安全保障をおびやかす震源地
・ジンバブエからザンビアに移った白人農家達がもたらしたアフリカにおける緑の革命が、全体として肥沃度の低い他のアフリカ全体に広まるのかは疑問。
・アメリカのシェールガス産出によって、バイオエタノール用のメイズの需要が下がったことで、しばらくは穀物価格は下がるはずであり、自給率やや高まる余裕のある間にサブサハラ各国が資源で得た外貨をいかに自国の農業生産性向上に活かせるかがカギ。
◆第4章 試行錯誤をくりかえしてきた国際開発
・欧米ドナーにとって、ODAの目的は「国益の追求」であるから、ODA大国でなくなった今日本も国益を追求するのは当たり前だ、という意見は近年よく見られる。その意味で、英、仏、米の援助の起源や国際機関が自己の存在意義の証明のために理念を後から理論武装のために発明したとの記述は、は目から鱗。また、日本の経済協力も今考えれば、現在の中国的な発想を当時の官僚が持ち合わせていたことに驚いた。(単に戦後賠償として認識していなかった。)
・ドイツGTZと日本JICAは、ODAの中で技術協力(人づくり)に相対的にかなりの予算を割いて来た。それは、民間ベースの技術移転だけでなく、法制度・現場のノウハウのようなものもOJTベースで様々なプロジェクトで伝えられてきた。(キャパシティ・ディベロップメントという言葉は欧米で発明される前から日独は実践してきた)この定量的な効果を学術的に論じることは難しいが、その東アジアの開発への貢献は大きかったのではないか。
※第5章、第6章追記予定。 -
いまアフリカとの経済連携は、中国が一頭地を抜く。世界各国がそれを追うなか、さらに大きく遅れている日本に挽回の余地はあるのか。広大なアフリカ大陸を舞台に、世界の未来と命運とを描き出す。【「TRC MARC」の商品解説】
関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40178001 -
アフリカの現状(といっても刊行当時の2013年頃だが)を「開発論」という観点から語る一冊。
帯に胡錦濤の写真が載せてたりしているのでわかる(?)とおり、中国が資源外交の一環としてアフリカに急接近していることの解説からこの本は始まる。
てっきり中国脅威本なのか、と思いきや…「アフリカはそんな一筋縄に行く荒野ではない」と今までのアフリカで行われてきた「失敗した開発事例」から、開発とは何か、援助とは何かを解説していく。
なんというか…アメリカという国の底深さを知った印象はある。
金儲けはお金のため、援助は目の前の人を救うため。どちらも理屈じゃない行為。ただ…それに携わりつつ、そこに潜んでいる理屈を学問化していく人が少なくともアメリカではどこからともなく出てくるらしい。
その行動と理屈を、いちいち覆してくれるのがアフリカでもあるらしく。
例示されていたのが「赤道ギニア」の事例。海底油田が開発されたおかげで、一人あたりGDPは韓国(当時)とどっこいどっこい、なのに市民生活は相変わらずでODAも受けている、という変な国。
赤道ギニアは極端な例であるにせよ、資源不足が深刻化する21世紀において、必ずしもアフリカは「貧しい」地域ではないにもかかわらず「貧困者」は相変わらず多い、という非常に奇妙な状態が続いているのだとか。
うまく活かせばなんとでもなる要素はある地域らしいのです。
それこそ資源はあるし、それに対する世界的な投資も活発、人口に対する土地も多いのだから農業の開発余地も本来ある、多産の問題だってそれを労働力に変えられたら強いわけで(実際のところ東アジア諸国(日本含む)の盛衰はおおかた労働者人口の数と比率で説明がついてしまうらしい)。
それらがいちいちうまく回らない。
儲かりそうだから、と資源などに再投資するため、富がさらに集中する。農業や教育にも投資をしないため、相変わらず無肥料での不効率な農業しかしないため自給自足が精一杯で、たくさんできた子供は都会に出てしまって結局は穀物を輸入(この輸入先が主にロシア・ウクライナらしい)に頼ってしまい、「貧しいのに物価と人件費が高い国」ばかりになる。
いくつかの悪条件(といってもクリティカルなものかというとそうでもない)が重なって、どうしようもなくなっている。そこにヒトモノカネ(そして知恵)を投入してきた結果を丹念に書いている一冊だった。
なお…解説の過程で、そういう開発論を日本に当てはめると、的な話がちょいちょいでてきて。
条件的にはアフリカよりも条件がはるかにいい日本なんですが、結果的に「失われた○十年」のあいだ選んでいるのはアフリカと似た政策なのも興味深く。
理系はじっくり対象を観察する余裕を与えてくれるのですが…社会学はどちらかというと「走りながら全体をみて行動する」サッカー選手タイプが必要とされている学問分野なのかなぁ、とそんなことを考えていました。
アフリカと社会学、両方を教えてくれる一冊。 -
10年前で、中国のこのはいりこみよう。
じわじわと、あるいは突如と外交通商制約となる予感。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/688547 -
経済大陸アフリカ
アフリカが直面しているグローバルイシューを取り上げた本
アフリカのグローバルイシュー
*開発なき成長& 低開発農業→経済成長しても 貧困解消せず
*ジニ係数上昇〜所得格差が広がっている
*アジアのように安くて豊富な労働力が存在しない=工場など直接投資をしても投資側は回収できない
*中国のアフリカ援助→戦略物資の供給を世界的に独占
著者の提言のうち 実効性がありそうなのは、グローバル企業のBOP(低所得層)ビジネスの参入。日本では 味の素 が有名らしい。銀行や医療まで参入している。
グローバル企業のBOPビジネス
*末端消費市場に近い業種
*消費面から貧困層の厚生を引上げ
*低価格商品の開発と貧困層に届く流通網の構築が必要
日本(資源輸入国)の現状
*貿易依存度が低い、投資流入も少ない〜日本は内向きの閉鎖的な経済
*レアアースなど資源調達に不安
*世界の資源を安定的に調達する中国と資源を分け合いながら 共生していかなければならない
*日本が先端技術を国内に温存するには、中国に代わるレアアース供給先を開拓するしかない
国際機関によりODA運用ができたら
*生活水準格差の縮小〜貧困縮小
*ナショナルミニマムに代わるインターナショナルミニマムが設定
*政策執行の責任は民族国家の手から国際機関へ
*ODA予算が国家による以上、援助政策は ナショナリズムから逃れることができない
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東2法経図・6F開架:B1/5/2199/K
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大陸への中国の進出具合を描いた前半は興味深かったが、後半はいまいち。白書のような事実の羅列になり、興味が持続しなかった。
2019/11/7読了 -
アフリカ好き