漢字再入門 - 楽しく学ぶために (中公新書 2213)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022134

作品紹介・あらすじ

漢字学の第一人者が、漢字の意外な成り立ちや読み方の歴史、部首のふしぎなど、学生時代に知っておけばよかった知識を伝授し、真に必要な知識を解説、さらに望ましい漢字教育を提言。

感想・レビュー・書評

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  • 偏ははねるのか?
    などわかりやすい。
    ズバリ漢字はいくつあるのか?
    日本の諸橋轍次「大漢和辞典」5万305
    世界最大 中華字海(中国)8万5568

    世界の言語を書くのに使われる文字は大抵50種以下。

    明朝体というのは、中国で長い時間をかけて洗練されてきた書体。印刷文字。デザインで、木偏をはねない。楷書で最も美しいと言われる顔真卿の字形は木偏をはねる。
    木偏をはねて、バツをつけられたら、顔真卿の楷書は間違いなのか?と聞いてみる。

  • 文章も平易ですらすら読める上、何より分かりやすいのが良い。最近のクイズ番組とかで漢字の正しい書き順の問題が出ていたりするが、本書を読むとそういった問題の意味のなさが非常によく分かる。小学校の先生方は指導要項があって仕方がないのかもしれないが、小学生の子どもを持つ親を含め、本書には一度目を通しておくと、子どもたちの漢字嫌いが多少なりとも減るのではないだろうか。これまでの教育指導の原点がどこにあったのか、も含めて漢字教育や漢字自体の考え方など、まさしく漢字再入門書として必携とも言える。

  • 良書。漢字について少し考えたことがある人なら、一度は疑問に思ったことについて、一通り説明をしてくれる。
    漢字は何種類あるのか? 漢字の字形に正しい字形はあるのか? 漢字にはどうして様々な読み方があるのか? 筆順はどうして生まれたのか? 部首とは何なのか? 常用漢字とは何か?
    このあたりの6つの話題が取り上げられる。

    個人的には、とめ・はね・はらいの字形と、筆順の教育に対する筆者のスタンスが好きだった。
    歴史的に遡ると、「正しい字形」「正しい筆順」なるものは存在しないという結論になる。「木」という文字一つとっても、有名な書家でも縦画をはねて書いた人は多くいるし、書道字典によっては、むしろはねている方が多かったりするもののもある。
    筆順についても、「右」と「左」の書き順がお隣の中国では、どちらも横画から書く例を挙げて、必ずしも正しい筆順などないことが示される。私たちがよく学校で習い、この部分何画目でしょうというクイズが出される筆順は、1958年(昭和33年)刊行『筆順指導の手びき』によるものであるそうだ。終戦直後の漢字改革にあって、教育現場の混乱を避けるために文部省が作った指針のようである。それがいつしか「正しい筆順」として権威をもつようになったのだそうだ。

    いずれにせよ、字形と筆順に、こうでなくてはいけないという決まりはない。ただ、筆者は、文字が他人に何かを伝えるために生まれたものである。だからこそ、「土」と「士」、「末」と「未」のように、点画の長さや位置で意味の変わってしまうものは、しっかりと書き分ける必要があるし、歴史的に能率的だと考えられた筆順の知恵については敬意を払う。そのうえで、ただ一つの正しい字形と筆順に拘らずに、読みやすく、伝わりやすい字を書くことが大切だと言う。

    筆者は、最後に、創作漢字コンクールと、「萫」と書いて「ハーブティ」とふりがなを振っていたカフェを例に出して、これからも新しい漢字が生まれるかもしれないということまで言っている。漢字について、その成り立ちの歴史をしっかりと理解したうえで、どこまでが許容されるべきで、どこは違っていてはいけないのか。そうしう漢字に対する心構えを身につけれる一冊だった。
    学校現場等で、子どもの漢字指導に関わる人には、特に、ぜひとも読んでほしい本である。

  • 確かに再入門である。齢五十年有余年を重ねてなお漢字についてこれ程知らないことがあったとは衝撃である。
    文と字の違い、会意と形声、意符の成立ちなど、この本を手に取らなければこんな大事な事を知らずに生を終えるところだった。

  • 図書館で借りた。
    部首とはどのように決められているのか、子供の頃解決しなかった話に興味を持ち開いたが、イマイチ納得できる説明はなかった感触。
    ただ、小学生で学ぶ漢字がまとまってたのは、収穫。復習した。

  • 漢字再入門
    楽しく学ぶために

    著者:阿辻哲次
    2013年4月25日発行
    中公新書

    漢字の数
    日本で出版されている最大辞書「大漢和辞典」は5万305字。中国では「漢語大字典」全8冊に6万370字。「中華字海」には8万5568字。

    中国は元素周期表も漢字

    日本人が作った和製漢字は「国字」という。鯛、鰤、鰯、鮪、畑、榊、峠など

    論語に使われている漢字は1355種類。詩人では李白が3560種、杜甫は4350種。日本の携帯電話で使えるのは6355種。

    とめ、はね、は区別すべき?
    例えば、「干」と「于」などは区別すべき。これは別字。しかし、木へんははねてもよく、手へんははねなくてもいい。これで×をつける先生は、漢字に自信がなく、印刷文字だけを頼りにしているからだろう。

    木版を使った印刷文字の「明朝体」を作るときのデザイン上の問題で木へんはなねない、手へんははねるとなっただけであり、正しい形から逸脱しているものがある。印刷より正式とされた手書きの「楷書」を見れば、中国の有名書家の文字でも木へんをはねているものが多くある。

    唐代の楷書の名手「顔真卿(がんしんけい)」が書いた「格」も木へんははねている。テストで×をつけられたら先生に「顔真卿(がんしんけい)」の文字を知らないのか、と言えばいい。

    小学校の教科書は教科書体、中高は明朝体で印刷されている
    フォントのデザイン上の違いにより、「令」「比」「衣」「氏」など、混乱が起きている。教科書体だと「令」の下の部分はカタカナの「マ」となる。「比」の左側は教科書体だとカタカナの「ヒ」に近く、全体で4画だが、明朝だと5画に見える。衣、氏も、明朝だと一画多く見えるが、教科書体で書かれた画数が正解。

    呉音、漢音、唐音
    日本に読みかたが入ってきた時期による違い。5~6世紀ごろ呉音が入ったが、その後、中国の体制が変わって唐となり漢音が入ってきた。8世紀、桓武天皇は混乱を避けるために漢音に統一することを推奨した。しかし、日本においては呉音の一部が残った。
    その後、平安中期に唐音が入る。唐代ではなく、宋、元、明、清代

    「和尚」をなんと読むか?
    鎌倉時代以後に伝わった曹洞宗、臨済宗、黄檗宗は「おしょう」、鎌倉以後に成立した浄土宗や浄土真宗も「おしょう」という唐音で読む。
    平安時代に成立した律宗や法相宗、真言宗では「わじょう」と呉音。
    天台宗や華厳宗は「かしょう」という漢音

    書き順
    時代や道具(筆、篆刻など)によって違う。日本と中国とも違う。
    日本では「右」は「ノ」から、「左」は「一」から書けと習うが、中国ではどちらも「一」が普通。また、歴史上の有名書家は、右はどちらもあり。
    学校では1958年に出た「筆順指導の手引き」を基準にしている。しかし、「本書のねらい」部分には、「ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また否定しようとするものでもない」と書かれているにもかかわらずそれを無視して学校で教えている。

    「魚」「燕」「点」の下の点々は、レッカ、レンガと考えるのは間違いだと思われる。全体が象形文字。

    常用漢字表の文字は、日本人が日常生活で実際に使っているものばかりでなく、官庁の都合で入れたものがある。例えば、「朕」「御名御璽(ぎょめいぎょじ)」、「謄本」「禁錮」など。これらは高校までに教えなければいけないことになるけど、これを入試に出してもいいということになり、それはおかしい。

    徳川光圀の「圀」は日本では使われているが、生まれた中国では使われていない。この漢字は、元々、則天武后が皇帝になって、「國」という字の中が惑につながるから不吉だとし、中を武后の「武」にした。すると。口の中に武が閉じこめられるのでダメとなり、世界全体を表す「八方」を入れた。

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2015年度第1回図書館企画展示
    「大学生に読んでほしい本」 第1弾!

    本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。

    木下ひさし教授(教育学科)からのおすすめ図書を展示しました。
        
    開催期間:2015年4月8日(水) ~ 2015年6月13日(土)
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

    ◎手軽に新書を読んでみよう
    1938年に岩波新書が創刊されたのが新書の始まりです。
    値段も分量も手ごろな新書は「軽く」見られがちなところもありますが、内容的に読み応えのあるものも多くあります。気に入った著者やテーマで探してみるとけっこう面白い本が見つかるものです。広い視野を持つために、興味や関心を広げるために新書の棚を眺めてみましょう。刊行中の新書を多様な角度から検索できるサイトもあります。(「新書マップ」)

    ◇新書で日本語を知ろう
    分かっているようで分からない日本語。まずは知ることですが、難しく考えず日本語の本を読んで親しんでみましょう。大切なのは気持ちですが、誤解を招かない表現もまた大切です。大学生として、社会人として知っておいて損がないのが日本語の知識です。

  • <目次>
    はじめに
    1時間目  漢字の数
    2時間目  とめ・はね・はらい、ってそんなに大事なの?
    3時間目  音読みと訓読みについて
    4時間目  筆順について
    5時間目  部首の不思議
    6時間目  学校教育と常用漢字について
    ホームルーム 新しい時代と漢字

    <内容>
    予想通りの本で喝采した。それは、とめ・はねなどの問題と筆順の問題だ。以前から文字は他人が見て読めるように(もちろん丁寧に)書けることが大事で、とめ・はねなどや筆順は(ある程度)いい加減でもいいと感じていたからだ。著者によると、超有名な中国の書家などの文字も筆順は違うらしい。結局は戦後すぐに文科省(のある人が)個人的な指針として作ったものが一人歩きしたらしい。
    また、以前から謎だった「法」「演」「漢」が「サンズイ」であることも解決した。結局は旧字体がとても大切である(「法」は本来「灋」。古代の裁判で羊がうそをついた人間を角で突き、川に流されることから)、ということだ。それによって本来の意味がわかるのだから。私は漢字の意味をとらえれば、さまざまな熟語(たとえば歴史用語なども)も間違えることなく書けるようになる、と考えているので、やっぱり我が意を得たりだった。  

  • 楽しく学ぶための第一歩として、学校漢字学習の矛盾点を突いていく本。漢字テストでとめ・はね・はらいが原因で減点された悔しい思い出がある方向け

    とてもわかりやすく、読めば少なくとも「漢字はつまらない」という固定観念は打破されると思う

  • 副題のとおりに楽しく読み終えた。
    書き順に対する疑問が解けたのが収穫。

  • 勉強になりました。

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著者プロフィール

京都大学名誉教授、公益財団法人日本漢字能力検定協会漢字文化研究所所長

「2017年 『角川新字源 改訂新版 特装版 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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