日本統治下の朝鮮 - 統計と実証研究は何を語るか (中公新書 2482)
- 中央公論新社 (2018年4月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121024824
作品紹介・あらすじ
1910年から1945年まで、帝国日本の植民地となった朝鮮。その統治は、政治的には弾圧、経済的には搾取・貧困化という言葉で語られてきた。日本による統治に多くの問題があったことは確かである。だがそれは果たして「収奪」一色だったのか。その後の韓国の発展、北朝鮮の社会主義による国家建設と繋がりはないのか――。本書は、論点を経済に絞り、実証主義に徹し、日本統治時代の朝鮮の実態と変容を描く。
感想・レビュー・書評
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もちろんある側面からみたら、という前提があってこその理解なのだけれども。かなり朝鮮半島に投資をしていたのだなと感じる。あながち、今日の半島の基礎を作ったというのは大袈裟ではないように感じる。それが、果たして幸福をもたらしたかは何とも言えない。ただ事実として、工業化のために大きな投資をして、その遺産は残ったという事実があるということがわかった。
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自分も山辺健太郎の岩波新書を読んで感銘を受けた一人なのだが、今振り返ってみると、内容など二の次で、山辺が小卒ながら、史料を蒐集し研究者となったことに瞠目したのかもしれない。労働運動で戦時中徳田球一や金天海などと共に獄中にあり、山辺は金の介抱役で、金が痔か何かで尻を拭いてやったが、徳球はどんな食い物でも腹を壊すことがなく、「徳田天皇はクソまで違う」というフレーズが妙に記憶に残っている。山辺と金天海で検索したら統一教会のページが出てきたが、今となってみれば、何てこたない日本共産党の伝説である。岩波が中公に対する再反論本を出すことはなかろうが、日本統治下朝鮮の伝説も日本共産党を始めとした日本の左翼が創り出したものあるのだが、統一教会がそれを利用していることからも分かる通り、歴代反共政権も今の従北政権も根っこの民族主義は同じもの。こうした反証を行う研究者は「極右」とされるが、「良心的日本人」の党派性が問題にされることはない。
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日本統治下の朝鮮がどのように経済がなっていったかよくわかった
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統計データの分析を手法とするが、本当にそれだけの本だった。
朝鮮人の言葉、姿がほとんど見えてこないこの本を、「近代朝鮮史の書物」(あとがき)と言えるのだろうか。
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KM3a
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一般に、政治的には弾圧、経済的には搾取・貧困化という言葉で語られてきた日本の朝鮮統治について、本当に「収奪」一色だったのかという問題意識から、経済の観点に絞り、統計データ等に基づく実証主義に徹し、日本統治時代の朝鮮の実態と変容を描いている。
結論として著者は、「総合的にみれば、日本は朝鮮を、比較的低コストで巧みに統治したといえよう。巧みに、というのは、治安の維持に成功するとともに経済成長(近代化と言い換えてもよい)を促進したからである」と述べるとともに、「1940年代に入ると、米国との戦争が状況を一変させた。日本は絶望的な総力戦に突入し、朝鮮を巻き込んだ。現代につながる日韓の歴史問題は(略)、多く、この時期に根源がある」と述べる。実証研究から浮かび上がるきわめて妥当な結論だと感じた。ただ、経済的に「巧みに」統治していたとしても、だから朝鮮に対する日本統治は「良かった」と結びつけるのは短絡であろう。その判断には、統治下の人々の意識も含めた政治的な観点からの分析も不可欠である。
巨大な産業遺産だけでなく、戦時期の全体主義や統制経済といったイデオロギー面も含め、帝国日本の遺産をより多く継承したのは北朝鮮であるという指摘もとても興味深かった。 -
本館開架(新書) [朝鮮 -- 経済 -- 歴史] [朝鮮 -- 歴史 -- 日韓併合時代(1910〜1945)]
http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB25891295 -
朝鮮半島に対する日本による統治の実態を具体的数字を追うことによって解明しようとする試み。
特に北に埋蔵される鉱物資源を求めて、膨大な投資が民間からされていることがわかる。
教育の充実なども含めて、当時の大日本帝国の国力増強を意図したものだろうが、目的はともかく、日本統治時代のこうした事柄が解放独立以降の(特に南における)半島の発展に寄与していることに間違いはなかろう。
我が国のかかる投下資本や内地人の財産はすべて没収された上に、莫大な慰謝料を払わされたのは、不幸な結果に終わった結婚のようなものと思えばわからなくはないが、その後何十年たってもあることないことを言われ、嫌がらせをされ、謝罪を求められ、金銭をせびられるのはどうしたことか。