小泉信三―天皇の師として、自由主義者として (中公新書 2515)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025159

作品紹介・あらすじ

戦前、自由主義経済学者、マルクス主義批判の知識人、慶應義塾長として知られた小泉信三(1888~1966)。戦中は好戦的発言を繰り返すなか、空襲で全身火傷を負う。戦後は皇太子教育の全権委任者として、敗戦とともに揺らぐ皇室を支え、美智子妃を迎えるなど象徴天皇制の基盤を作った。本書は、国家主義の台頭、戦争、敗戦という激動のなか、国家のあり方を問い続けながら、オールド・リベラリストの生き方を貫いた小泉の生涯を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 慶應義塾の塾長、戦後の皇太子教育の全県委任者として皇室を支えた小泉信三の生涯。

    「練習ハ不可能ヲ可能ニス」。確かラーメン二郎の三田本店に飾られていたように思う。自分も陸の王者の出身なので、有名な方。学者というより、皇太子の教育と戦死した息子さんのことを書いた著作「海軍主計大尉小泉信吉」の作者。

    経済学者としての活動、戦中の学徒動員など戦争に対する対応など。激動の生涯を描いた作品。

  • 反マルクス主義の慶應義塾長だった小泉は、皇太子教育の全権を託され象徴天皇制の基盤を作った。自由主義者の生き方を貫いた生涯とは

  • 「霊前にしばしの時をすわりおれば みみにうかびぬありし日の声」

    その死に際して未亡人に贈られた今上天皇の弔歌である。

    小泉信三。皇太子時代の今上天皇の東宮御教育常時参与であり、
    慶応義塾長であり、マルクス主義批判者であり、経済学者である。

    このうち、私が知っているのは東宮御教育常時参与であったこと
    と、慶応義塾長だったことくらい。特に今上天皇に多大なる影響
    を与えた人として興味を惹かれる人物である。

    その小泉信三が、先の大戦中は戦意高揚に一役買い、塾生たちの
    愛国心を煽っていたとは。平和を願ってやまない今上天皇の家庭
    教師のような存在だったので、彼が戦中に展開した戦争肯定論は
    いささか意外な気がした。

    ただ、戦後はこの点を自ら反省しており、GHQの公職追放からも
    辛くも逃れている。だからこそ、お妃選びにも係わり、戦後の
    「新しい皇室」像に一役買ったのかもしれない。

    「あとがき」も含め、200ページ足らずのページ数なので、かなり
    駆け足の評伝になっているが、小泉信三という人物の概略を掴むに
    はいいかもしれない。

    福沢諭吉や吉田茂との関係などもあって、面白いことは面白いのだが、
    個人的にはサブタイトルの「天皇の師として」の部分に期待して手に
    したので、食い足りなさが残った。

    平成も間もなく終わる。象徴天皇としてどうあるべきかを模索し続け
    た今上天皇の姿を、小泉氏はどのように見たのかに興味があるが
    即位さえも見届けず死去しているので私の叶わぬ思いだな。

  • 平成の終わりに、今上天皇の師として小泉信三がどの様な考え方を持った人だったのか知りたくて読んでみました。本書はとても読みやすく小泉信三の幼少時代から亡くなるまでを纏めています。政治学者としての顔だけではなく人としてどの様な人柄でどのような趣味を持っていたかなども記されており小泉信三を知るための入門書としては最適な一冊だと思います。

  • 東2法経図・6F開架 B1/5/2515/K

  • 平成天皇の若い日に家庭教師を務めたという小泉氏。慶応では福沢諭吉と並ぶ存在の人なのだ。戦中に塾長職にあり、軍国主義的な学生への鼓舞の挨拶をしていただめに一部では抵抗もあったというが…。反マルクス主義を主張し続けた信念は分かるが、関東大震災の社会主義者迫害の際には、「気の毒ながら全くの冤罪、誤解とは言い兼ねる」の言葉は受け入れ兼ねる!!オールドリベラリストとして丸山眞男などとは対極の存在だった。この人が晩年孫の死をきっかけにクリスチャンになっていたことは意外であった。

  • 289.1||Og

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著者プロフィール

小川原 正道(おがわら・まさみち):1976年生まれ。慶應義塾大学法学部教授、東京大学大学院法学政治学研究科客員研究員。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は日本政治思想史。著書に『福沢諭吉――「官」との闘い』(文藝春秋)、『福沢諭吉の政治思想』(慶應義塾大学出版会)、『小泉信三――天皇の師として、自由主義者として』(中公新書)、『日本政教関係史――宗教と政治の一五〇年』(筑摩選書)、編著に『独立のすすめ 福沢諭吉演説集』(講談社学術文庫)などがある。

「2023年 『福沢諭吉 変貌する肖像』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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